著者情報 (ヴァジム・ゼランド)
経歴: 『タフティ・ザ・プリーステス』の著者ヴァジム・ゼランドはロシア出身の神秘思想家・作家です。詳細な経歴は公にはほとんど明かされていませんが、本人によればソビエト連邦崩壊前は量子物理学の研究に携わり、その後コンピュータ技術の分野で働いていたとされています
。IT業界でシステム管理者を務めていた2000年代初頭に一連の「洞察」を得て執筆活動を開始し、2004年頃から現実操作の理論「トランサーフィン (Transurfing)」を提唱する著作を発表しました
。ゼランドは表舞台に立つことを好まず、公の場にほとんど姿を現さない神秘的な人物でもあります
。科学者出身らしく分析的思考の持ち主で、名声よりも人々の意識変容を助ける実用的なツール提供を使命として執筆していると述べられています
。
思想的背景・影響: 著者の思想は量子物理学と形而上学を融合させた独自のモデルに基づいています
。彼の提示する「現実(リアリティ)のトランサーフィン」理論は、多世界解釈などパラレルワールド(平行世界)の概念や四次元的な時間観に着想を得ており
、現実を自分で選択・移行できるという斬新な発想が特徴です。また、そのメソッドには東洋哲学や仏教思想からの影響も指摘されています。たとえば執着を手放すことや観照的な気づきといった要素はZenや仏教の影響が見られると分析されています
。ゼランド自身、チベット仏教のタルタン・トゥルク(Tarthang Tulku)やゾクチェンの教えと共通する点があると指摘されており
、現実を「幻想(マーヤ)」や「夢」とみなす東洋スピリチュアルの伝統とも通じる部分があります。一方で、その理論はニューソート系の自己啓発やポジティブ思考からの影響も色濃く、「引き寄せの法則」に通じる発想を科学風に包装し直したものだという見方もあります
。実際、ゼランドの著作に触れた読者の中には「内容はエイブラハムやバシャールとだいたい同じ」と指摘する声もあり
、米国のニューエイジ思想(例えばネヴィル・ゴダードの教え
や『ザ・シークレット』
)との共通性がたびたび論じられています。また、著者が提唱する「意図の三つ編み」などエネルギー操作の概念には、カルロス・カスタネダが語ったトルテカのシャーマニズム(人間の背中の「アッセンブリ・ポイント(配列点)」の操作による意識変容)からの影響が見て取れるとの指摘もあります
。総じてゼランドの思想的バックボーンには、量子力学的世界観、東洋の悟りの哲学、ニューソートの現実創造論、シャーマニズム的な意識論といった多彩な要素が融合されていると言えるでしょう。
関連著作と『Reality Transurfing』との関係: ゼランドの代表的な業績は、現実創造理論を体系化した**『リアリティ・トランサーフィン (Reality Transurfing)』シリーズです。2004年から2006年にかけてロシアで刊行されたオリジナルの『トランサーフィン』全5巻は、日常生活で願望を実現するための具体的テクニックを多数紹介し、ロシア国内で200万部を超えるベストセラーとなりました
。トランサーフィンでは、「空間(スペース)・オブ・ヴァリアンション」と呼ばれる可能性の場から望む現実のライフラインを選択し、振り子(ペンデュラム)と呼ばれる集団意識の揺らぎに振り回されないよう重要性を下げることで、現実を意図的にコントロールする手法が説かれています
。ゼランドはこのシリーズで内的意図と外的意図の概念、スライド(意識で作る理想の映像)や協調の波(ライフラインに乗る)**など独自用語を用いて現実操作の理論を展開しました。
『タフティ・ザ・プリーステス』は、そのReality Transurfing理論の新展開として位置づけられる作品です。著者自身、「もしトランサーフィンが中等教育レベルだとすれば、タフティのテクニックは高等教育レベルに相当する」と述べており、従来の手法よりさらに強力で直接的な現実創造メソッドが示されています
。実際、英語圏の読者からも「トランサーフィンを遥かに超える内容で、新たな段階の教え」と評価されており
、トランサーフィンで提示された概念を下地にしつつ**「目覚め」や「意図の三つ編み」といった新コンセプトによって一段進んだ現実操作法**が説かれています。その他の関連著作には、トランサーフィンの実践ワークブックである『78日間で現実を創造するトランサーフィン』(実践マニュアル)
や、タフティの物語版ともいえる続編小説『Priestess Itfut(プリーステス・イトファット)』などがあります。このようにゼランドの一連の著作は、一貫して「意識の使い方を変えれば現実を変えられる」というテーマを追求しており、『タフティ・ザ・プリーステス』はその集大成的かつ革新的な一冊となっています。
書籍の詳細な要約
『タフティ・ザ・プリーステス ―世界が変わる現実創造のメソッド―』は、映画の登場人物として生きている私たちが“夢から目覚め”、自ら脚本を書き換える方法を具体的に説いた実践的ガイドです。全40の「レッスン」から構成されており、各章で現実を意図的に創造するための概念と手法が順を追って解説されています。以下、本書の主要な章立てと内容を順にまとめます。
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序章・導入: 著者はまず、「なぜ望むように物事が進まないのか?」という問いを投げかけます
。その答えとして、本当は自分の自由意思で行動しているつもりでも**「人生の台本」に操られているからだと指摘します 。私たちの現実は既に起こってしまった過去の産物であり、いま目の前の現状と闘っても何も変えられない、と本書は説きます 。変化を起こすには「映画の中で目覚め、生き生きと意識を持って行動する」**必要があるのです 。導入部ではこうした問題提起と、本書全体のメタファーとなる「人生は映画(シネマ)」という考え方が提示されます。 -
Lesson1「2つのスクリーン」: 第1章では、人間の意識が向けられる二種類のスクリーンについて説明されます
。一つは内側のスクリーンで、自分の頭の中のおしゃべりや思考に注意が向いている状態、もう一つは外側のスクリーンで、周囲の出来事や環境に意識が向きっぱなしの状態です 。私たちは普段、内的独白か外界の事象に心を奪われ、常にどちらかのスクリーンに意識を囚われています 。その結果、自分自身を客観視できず「眠ったまま」日常を過ごしがちだと指摘します。まずこの章では、自分の注意がどちらのスクリーンに向いているか意識的に観察することが提案されます 。これが本書のキーワードである「目覚めた意識」を得る第一歩となるからです。 -
Lesson2「夢の中を自由に歩く」: 第2章では、人生を夢(映画)のようなものと捉え、その中で目覚めることについて述べられます
。映画『マトリックス』に例えられるように、まず自分が台本に沿って演じる登場人物であることに気づき、「これは夢なのだ」と認識することでルシッド(明晰)な意識を持つよう促します。自分の人生のシーンを客観視し、「これは自分が作り出している映画なのだ」というスタンスに立つことで、初めて脚本を書き換える土台に立てるのです。著者タフティ(作中では巫女であるタフティというキャラクターが語り手となっています)は読者に対し少々高圧的な語り口で「さあ目を覚ましなさい」と繰り返し促し、意識をはっきり保つための実習を行わせます 。 -
Lesson3「『現実』へようこそ」: 第3章では、いよいよ目覚めた状態で現実に働きかける準備が語られます
。ここまでで「人生は映画である」「自分は夢見心地でシナリオに従って動いていた」という衝撃的な事実を認識した読者に対し、「ようこそ現実へ」と呼びかけ、今この瞬間に現実に存在すること(プレゼンス)の大切さを説きます。つまり、内外どちらのスクリーンにも没入せず「いま・ここ」に注意を置くことで、初めて現実に対する主体性を取り戻せるということです。この章では、読者が目覚めた状態でいるために意識のセンター(中心点)に留まる練習が示されます 。それは内と外のスクリーンのちょうど中間に意識を置くイメージであり、自分を俯瞰する感覚でもあります。これによって「自分が現実を体験している」というより高い視点に立つのです。 -
Lesson4「意識の向き先を観察する」: 第4章は、前章に引き続き注意のコントロールがテーマです
。日常生活の中で自分の意識の向き先がコロコロ変わる様子をモニタリングし、無意識に台本に巻き込まれていないか逐一チェックする方法が解説されます。具体的には、ぼんやり考え事にふけっている時(内側スクリーン)や、目の前の出来事に夢中になっている時(外側スクリーン)に「ハッ」と我に返るトリガーを作る練習です。これにより、「気づきの筋力」を鍛え、長く目覚めた意識を保てるよう訓練します。読者はしばしば意識を失って台本通りに振る舞ってしまうため、タフティは少々手厳しい態度で何度も「起きて!また眠っているわよ」と注意を喚起します 。この繰り返しが本書の特徴で、読者は読み進める中で実際に何度も意識を現在に引き戻される仕掛けになっています。 -
Lesson5「現実を構築する」: 第5章から、本格的に現実を意図的に組み立てる方法に話が移ります
。まず強調されるのは、「現在のフレーム(現状)」と戦うのをやめ、代わりに「これから来るフレーム(未来の映像)」を描きなさいという点です 。多くの人は目の前の問題を何とかしようとエネルギーを注ぎますが、それは既に固定化した過去と格闘するようなもので無益だ、と著者は指摘します 。そうではなく、自分の望む未来の映像=「次の映画のコマ」を先に思い描き、その映像(フィルム)を現実に投影するように行動せよというのです 。この章ではそのための基本として、現実を構成するフレーム概念や、今自分がどのフレームに注意を向けているかを識別するコツが述べられます。読者は現在の状況に一喜一憂するのではなく、意識的に「次」のコマを選び取る姿勢を学び始めます。 -
Lesson6「意図の三つ編み」: 本書の中核となる概念が登場する第6章では、「意図の三つ編み」(英語原文では intention plait)が紹介されます
。三つ編みとは見えないエネルギーの編み込みのことで、著者は人間のエネルギーボディにおけるある特定のポイントを指しています。それは後頭部から背中に垂れる霊的な“辮髪”の先端に位置するとされ、意識をそこに集中させると特別な力が発動するといいます 。ゼランドはこの三つ編みを**「外部意図」を司るスイッチのようなものだと説明しています 。「外部意図」とはトランサーフィン理論の用語で、自力で何とかしようとする内的意図に対し、宇宙や環境の側から現実を実現させる働きのことです 。意図の三つ編みはまさにその外部意図を起動するための装置であり、これを自覚的に“オン”にする**ことで自分の望む未来のフレームをぐっと手繰り寄せることができるとされます 。 -
Lesson7「三つ編みの使い方」: 第7章では、前章で概念紹介された意図の三つ編みの具体的な使い方(実践法)が解説されます
。読者は実際に目を閉じて自分の肩甲骨あたりから一本の見えない辮髪が伸びているのをイメージし、その先端に意識を集中させるよう指示されます。続いて、その三つ編み(プライト)を通じて自分の望む未来の映像を感じ取るワークが行われます 。著者は「その辮髪にスイッチがあると思ってクリックしなさい」といったユニークな表現で読者のイメージを喚起し、スイッチが入ったら自分が欲しい現実のシーンをありありと心に描くよう促します。その際ポイントとなるのは、今ではなく「次の瞬間」に焦点を当てることです。つまり「将来こうなっている自分」の映画を頭の中で再生し、そのフレームを明るく照らす(スポットライトを当てる)イメージを持つように指導されます 。これによって、現実のスクリーンにこれから写し出されるフレームを自分の意図で指定することになるのです。本章ではこの三つ編みを感じ取り、活用する感覚を掴むための練習問題がいくつか提示され、読者は超常的とも言える新しい感覚に慣れていきます 。 -
Lesson8「『自分で行動している』という幻想」: 第8章のタイトルは直訳すると「自分の意思で行動しているという幻想」です
。ここでは序章で触れられた台本の存在が改めて論じられます。著者は、目覚めていない人間にとっての自由意志は幻想に過ぎず、実際には無意識の台本(過去の習慣や環境要因によるプログラム)に沿って動いているだけだと断じます 。意識が内側・外側のスクリーンに没入している間は、自分では何かを選択しているつもりでも既定路線をなぞっているだけであり、それを**「行動の幻影」と表現しています 。しかし裏を返せば、目覚めた意識さえ取り戻せばこの幻影を破り、本当に自分が望む行動を選べるということでもあります 。本章では、改めて自覚ある選択**の重要性を説き、「あなたは今自分で選んでいるか、それとも自動操縦か?」と読者に自己点検させます。さらに、台本に巻き込まれたままでは台本を書き換えられないというパラドックス(罠)についても触れられ、そこから抜け出す心構えが語られます 。 -
Lesson9「罠から逃れる方法」 & Lesson10「再プログラミング」: 第9章と第10章はセットで、前章までに認識した無意識の罠から抜け出し、自己を書き換えるプロセスが扱われます
。まず「罠から逃れる方法」では、つい元の眠った状態に引き戻そうとする環境の力(トランサーフィンでいう振り子の力)があることを警告し、それに気づいて振り回されないコツを教えます。例えばネガティブな出来事や感情は再び意識を失わせる罠となるため、そう感じたら即座に自分自身(意識のセンター)に戻る習慣を持つようアドバイスします 。続く「再プログラミング」では、これまで台本によって形作られていた自己イメージや思考パターンを書き換える作業が解説されます。自分に掛かっている自己制限的な思い込みのプログラムに気づき、それを意図的に塗り替えることで新たな現実を招きやすくするのです。具体的な手法として、否定的な内的対話を止める、一人称で肯定的な新ストーリーを語り直す、といった方法論が提示されます。読者はこれにより、外界だけでなく自分自身(内面)も意図的に作り変えられることを学びます。 -
Lesson11「変容」: 第11章は自己変容のプロセス全般についてまとめた章です
。ここまでで目覚めから現実操作までの基本を学んだ読者に対し、今度は自らの在り方を変える重要性が説かれます。ゼランドは、望む現実を得るにはそれに見合った存在(ビーイング)に自分を変えていかなければならないと指摘します。つまり、古い台本で生きていた以前の自分から、望む未来を生きる新しい自分へと**「マネキンを作り替える」ように変身せよということです 。具体的には、外見や振る舞いだけでなく思考・感情のクセまで、望む現実にふさわしい方向へ徐々にシフトさせていくイメージです 。これは自己啓発で言うところのセルフイメージの刷新に近く、本章ではそれを現実創造の文脈で説明しています。著者はこの変容を単なる努力目標ではなく、「あなたはもともと創造主の火花(創造主の輝き)を宿しており、それを呼び覚ますことだ」と鼓舞します 。ここで出てくる「創造主の輝き」とは内なる神性のようなもので、自分の中に無限の創造力が本来あることを認めるよう促しています。第11章は、一連のテクニックの土台として自己への信頼と変容の意志**を固める内容になっています。 -
Lesson12「メタパワー」: 第12章で紹介されるメタパワーは、本書における追加のエネルギー源の概念です
。通常の努力や意図とは別次元の「隠れた力」であり、物質世界を越えた微細な次元で作用するエネルギーと説明されています 。ゼランドはこれを**「高次のレベルから自分と現実を一気に推し進める推進力」**と表現しており 、内的意図や外的意図をさらに強力に後押しするものと位置付けています。この章ではメタパワーを引き出すための心構え(例えば直観への信頼や、状況を超然と見渡す視点など)が述べられます。読者は、単に頭で考えて行動するだけでなく、このメタパワー=宇宙的な追い風を得ることで物事が驚くほどスムーズに進む、と教えられます。具体例として、よいアイデアやシンクロニシティ(偶然の一致)が舞い込む状態になることなどが挙げられ、これも目覚めた意識を維持した先に得られる恩恵だと説きます。 -
Lesson13「フリをする」: 第13章では**「フリをする(Pretending)」という、一見風変わりなテクニックが紹介されます
。これは簡単に言えば「先に与え、先に振る舞う」という鏡の法則の実践です。現実は鏡のように自分の内面を反映するという考え方に基づき、欲しいものがあるなら先にそれを与える側に回りなさいとタフティは言います 。たとえば「人から受け入れられたいなら、まずあなたが人を受け入れなさい」「何かが欲しいと思ったら、代わりに誰かに与えなさい」という具合です 。欠乏感(~がない)に基づいて行動すると現実も「ない」状態を映し出すので、自分から満たす行動をとれば現実も満たされた結果を返してくる、というのがこの法則です 。ゼランドはこれを現実の「鏡原理」として説明し、鏡にはこちらの姿勢がそのまま映るのだから望む姿を先に演じよ**と説くのです 。Chapter13では主に心構えとして語られますが、後の章で具体的な応用テクニックも紹介されます(Lesson32も同様のタイトルで、フリをする技術を再度詳述しています )。 -
Lesson14「プレゼンスを得る」: 第14章はプレゼンス(存在の臨場感)についてです
。プレゼンスとは、簡単にいえば「今ここに自分が存在している」という感覚のことです。これまでの章でも繰り返し示唆されてきた概念ですが、本章ではそれを明確に定義し、意図的に高める方法を扱います。意識が完全に現在に集中しているとき、人は強いプレゼンスを放ちます。それは周囲にも影響を与える力となり、まるで主人公のように現実世界での存在感が高まるのです。著者は読者に対し、「自分の存在を感じなさい。それ以外の思考をすべて手放し、ただ今この瞬間にいる自分を感じるのです」と指導します。その状態では雑念も消え、内外のスクリーンから解放された純粋な覚醒状態となります。ゼランドはこのプレゼンスこそが現実に働きかける土台のエネルギーになると説明します。特に、感情的に乱れている時こそ意識を今に引き戻してプレゼンスを得ることで、ネガティブな渦に巻き込まれずに済むと強調しています 。本章は瞑想的な要素も含み、読者に静かな自己感覚を取り戻させるパートとなっています。 -
Lesson15「アドバンテージ」: 第15章の「アドバンテージ」は直訳すると「利点、優位性」といった意味ですが、本書では特定の文脈で使われています
。おそらくここでは、目覚めた者が得られる隠れたアドバンテージについて語られていると思われます。意識的に生き始めると、今まで気付かなかったチャンスや選択肢が見えるようになる、現実の流れを有利に乗りこなせる、といった目に見えない利点があるという主旨です。トランサーフィン理論では「調和波に乗る」と表現されていた内容とも関連し、現実と協調して生きることで、争わずとも物事が自分にとって有利に展開していく様子が述べられます。この章では具体例として、周囲の対人関係や仕事などで目覚めた意識を保つことで得られる恩恵(衝突が減る、好機が訪れる等)が紹介されている可能性があります。要するに、覚醒した意識状態それ自体が人生のアドバンテージになる、というメッセージです。