主要な再エネ活用戦略

  • 長期再生可能エネルギー購入契約(PPAs)の締結
    大規模な風力や太陽光発電施設との長期契約により、直接再生可能エネルギーを供給するプロジェクトを支援しています。たとえば、AWS や Microsoft は、数十件に及ぶ長期契約を締結し、これによって発電量を先取りする形で自社の電力需要をカバーしています。

  • 直接投資・自社開発による再エネインフラの構築
    Google は自社で再生可能エネルギー発電施設(風力や太陽光)を設計・建設するほか、地域的に豊富な再エネ資源がある場所(例:北欧、米国中西部)にデータセンターを立地させるなど、物理的な再エネインフラの構築に積極的です。

  • 再生可能エネルギー証書(REC)およびオフセットの活用
    自社運用で直に再エネを確保できない分については、再エネ証書を購入することで、理論上の電力供給を100%再エネに相当させる仕組みが導入されています。これにより、実際の契約電力量以上のクリーンエネルギー調達が実現されています。

  • エネルギー効率の高いデータセンター設計と運用
    最新の冷却技術や電力管理システム、AIによる需要予測と運用の最適化を取り入れることで、電力消費自体を削減し、必要な再エネ容量を抑えながらも効率的な運用が可能となっています。これにより、比較的低い消費電力量でも高い処理性能を維持できるため、再エネ供給側の負担も軽減されます。

  • 戦略的立地選定
    再生可能エネルギーの供給が豊富な地域や、地元の政策支援が受けられる地域にデータセンターを配置することで、再エネへのアクセスや調達コストの低減を実現しています。たとえば、Google のデータセンターはアイスランドや北欧、Microsoft は米国の特定地域に立地し、これらの地域の自然エネルギー資源を有効活用しています。


主要クラウド事業者の再エネ実現手法の概要

分析のポイント

  • PPAs の有効性
    長期契約により再エネ発電所の建設や運営が安定することで、電力供給の信頼性が向上。これにより、企業側は電力の変動リスクを回避しながら、大規模な再エネ導入を実現しています。

  • エネルギー効率の最適化
    冷却技術や電力管理システムの革新により、同一電力量でより高い処理性能を発揮できるため、結果的に必要な再エネ容量を削減し、再エネ調達が容易になる効果もあります。

  • グローバル戦略と地域特性の活用
    再エネ供給が豊富な地域でのデータセンター運用や、地域ごとに異なる再エネ調達戦略を組み合わせることで、全体として実質100%近い再エネ運用が実現されていると考えられます。

以上のような多角的な取り組みを通じて、主要クラウド事業者は、直接的な再エネ利用だけでなく、オフセットや効率化策を組み合わせることで、実質的にすべての電力需要を再生可能エネルギーで賄う状態に近づけています。