京都のラーメン概況

京都のラーメン文化の特徴

古都・京都と聞くと京料理のような上品で淡泊な味を想像しがちですが、ラーメンに関してはそのイメージとは裏腹に“こってり”が主流です​

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。京都のラーメンは一つの定型スタイルに収まらず、多様な系統がありますが、大きく分けると以下の3系統に分類されるとされています​

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  • 濃厚醤油系:豚骨や豚肉の出汁をベースにした濃い色の醤油ラーメン。スープの色が真っ黒に近いものもあり、京都駅周辺の老舗「新福菜館」や「本家 第一旭」などが代表格です​

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    。特に新福菜館のスープは見た目こってりですが、飲むと意外にあっさりしていると評され、見た目と味のギャップも京都ラーメンの特徴の一つとなっています​

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  • 背脂醤油系:鶏ガラ主体のスープに背脂をたっぷり浮かせたラーメン。京都発祥の「ますたに」を源流とするスタイルで、背脂のコクと醤油のキレが調和した一杯です​

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    。背脂醤油は全国展開している「来来亭」や「魁力屋」などのチェーンにも受け継がれ、京都から全国に広まった味と言えます。
  • 鶏白湯系:濃厚な鶏白湯(とりぱいたん)スープのラーメン。とろりとした粘度の高いスープが特徴で、京都発祥の有名チェーン「天下一品」がこの系統です​

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    。天下一品の総本店(北白川)は“こってりスープの聖地”とも称され、京都ラーメンを語る上で外せない存在です​

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以上の3系統すべてに共通するのは、スープが総じて濃厚であることです​

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。エッセイストの入江敦彦氏は「京都のラーメンは日本一こってりしている」と評しており​

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、京都は意外にも“こってりラーメンの街”と言えます。

もっとも、例外的に京都らしい試みもありました。京風の和出汁を使い薄味に仕立てた「京風ラーメン」と呼ばれる淡白な醤油ラーメンが一時考案されたものの、薄味は京都ラーメン界では少数派で定着せず、地元の京都人もそれを京都ラーメンとは認めていないという指摘もあります​

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。やはり京都で支持を集めてきたのは濃い味のラーメン文化で、その歴史は昭和初期から脈々と続いています。

人気のジャンルと最近の動向

京都のラーメンシーンでは長らく“こってり”系が幅を利かせてきましたが、一方で近年は“あっさり系”や創作系のラーメンも台頭しています。京都を代表するこってりラーメンとして、鶏白湯の天下一品や、背脂醤油の第一旭・ますたにが有名ですが、最近は透き通ったスープの淡麗系ラーメンの新店が続々とオープンしています​

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。たとえば旨味凝縮の清湯スープにこだわる「麺屋 優光」や、ミシュランガイドにも載った「らぁ麺 とうひち」など、素材の出汁を活かした繊細な一杯を提供する店が増えています​

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また、つけ麺も人気ジャンルの一つです。魚介豚骨系の濃厚つけ麺を看板とする店や、貝出汁や柚子を効かせた創作つけ麺までバリエーションは豊富です。​

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京都発祥のつけ麺専門店「麺匠たけ井」は行列必至の人気で、京都市内のほか大阪方面にも展開しています。さらに町家を改装したお洒落空間で和牛入りつけ麺を供する「和醸良麺 すがり」など、つけ麺でも京都らしい工夫を凝らした店が登場しています​

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このように、京都では濃厚こってり系から淡麗あっさり系、さらにはつけ麺や変わり種まで多彩なジャンルのラーメンが共存し、ラーメン好きの舌を飽きさせません。その背景には、京都が実はラーメン店の多い土地柄であることが挙げられます。観光都市のイメージの陰で、京都市内には昔から学生や地元客向けのラーメン店が数多くあり、老舗から新進気鋭までしのぎを削っています​

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エリア別に見る京都のラーメン事情

京都市内のラーメン店は特定のエリアに集中している傾向があり、それぞれの地域で特色や人気店があります。主なエリアごとの傾向と代表的な店、穴場店の情報を以下にまとめます。

河原町・木屋町周辺(繁華街エリア)

四条河原町から木屋町・先斗町にかけての繁華街エリアは、観光客も地元客も集まるグルメ激戦区です。ラーメンも例外ではなく、深夜営業の博多系ラーメンからお洒落な新風系まで多種多様です。近年特に注目なのが高級路線のラーメン店で、代表が「麺屋 猪一」です。麺屋猪一(いのいち)は河原町に店を構え、和牛や削りたて鰹節など贅沢素材を惜しみなく使った出汁そばが看板の超人気店です​

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。外観・内装も高級和食店のような趣で、クレジットカード決済にも対応するなど、京都のラーメン店では珍しい洗練ぶりを見せています​

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。同じく木屋町には看板を出さない「名前のないラーメン屋」という隠れ家的な店も存在します。ビル地下にひっそりと営業し、淡麗・重厚・濃厚の3種のラーメンを提供するこの店は、そのミステリアスさゆえに噂が絶えない穴場です​

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一方、祇園エリアには京都らしさを活かしたユニークな一杯を出す店があります。例えば「Gion Duck Noodles」は祇園の路地裏にある人気店で、店名通り鴨出汁のラーメン・つけ麺が名物です​

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。紀州産の鴨を使ったスープは芳醇で、ぶどう山椒の爽やかな香りをあしらうなど盛り付けも洒落ています​

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。祇園という土地柄、ラーメン自体も上品でお洒落な仕上がりで、観光客にも評判です。

繁華街エリアは飲みのシメにラーメンをすする人も多く、深夜まで営業する店も充実しています。先斗町の「拉麺へんてこ」や木屋町三条の「みよし」など、夜遅くでも行列ができる店があるほどです。総じて河原町周辺は、古典的な京都ラーメンから最新トレンドまで幅広く網羅したエリアと言えます。

西院エリア(西京極含む西部市街)

阪急西院駅周辺は近年ラーメン好きの間で熱い注目を浴びるエリアです。もともと京都では濃厚系が多い中でも、トップクラスの濃度を誇る店が西院に集まっています。その筆頭が「麺屋 さん田」です。鶏と水だけで炊き出した超濃厚鶏白湯スープは唯一無二で、京都市内でも屈指のこってり度と評判です​

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。看板メニューのつけ麺はスープと麺の味を存分に楽しんでもらうため薬味のネギすら入れないという徹底ぶりで、濃密な鶏の旨味を堪能できます​

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一方、同じ西院でも違った魅力を持つのが「らーめん 鶴武者」。こちらは鶏白湯ベースに野菜なども合わせたスープで、濃すぎず薄すぎず絶妙の塩梅と評価されています​

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。チャーシュー麺に定評があり、彩り美しいチャーシューがたっぷり載った一杯は老若男女誰にでもオススメできる安定の美味しさです​

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。鶴武者は接客も丁寧で、キャッシュレス決済対応などサービス面も現代的です。

西院エリアには他にも「麺処 鶏谷(とりたに)」や「らーめん おおの」など個性派が点在します。行列必至の超濃厚魚介鶏白湯「麺屋 極鶏」に影響を受けた店主が独自進化させたスープを出す店や、京野菜を取り入れた創作系など、新旧入り混じるエリアです。京都の中心部からやや西に外れる立地ゆえ観光客は少なめで、比較的穴場的に京都ラーメン巡りを楽しめるでしょう。

北白川・一乗寺エリア(左京区ラーメン街道)

京都左京区、北白川〜一乗寺にかけてのエリアは知る人ぞ知る「ラーメン激戦区」です​

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。別名「ラーメン街道」「ラーメンストリート」とも呼ばれ、学生街でもあることから多くの有名店が軒を連ねています​

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。京都を全国に知らしめたこってりラーメンの総本山「天下一品 総本店」も北白川に位置し、聖地巡礼に訪れるファンが後を絶ちません​

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。天下一品発祥のドロリと濃厚な鶏白湯スープはここから全国へ広がり、「こってり」という言葉をラーメンのジャンルとして定着させた立役者と言えます​

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一乗寺エリアにはその他にも個性的な店が多数あります。中でも行列が絶えず、“一乗寺No.1人気”とも称されるのが「麺屋 極鶏」です​

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。極鶏のスープは「まるで鶏肉を液体にしたかの如く」と形容されるほど濃密で、その唯一無二の鶏白湯は他に真似できないインパクトがあります​

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。あまりの人気に整理券対応になることもあるほどで、京都に来たならラーメン抜きにしても訪れる価値がある名物店との声もあります​

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一乗寺はまた、昭和から続く老舗「中華そば 高安」も外せません。豚骨と鶏ガラベースの程よく白濁したスープはコク深く、九条ネギとの相性も抜群で思わずネギ増ししたくなる美味しさです​

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。高安でもう一つ有名なのがジャンボ唐揚げで、ラーメンに唐揚げ3個とご飯が付くセットは学生御用達のボリューム。食べ盛りでも大満足のガッツリセットです​

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このエリアには他にも、創業昭和27年で背脂醤油の元祖「ますたに 本店」(銀閣寺エリア寄りですが近い)、醤油味の王道を行く「珍遊 本店」、つけ麺人気店の「つけめん恵那く」など枚挙に暇がありません​

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。一乗寺の隠れた存在としては「ラーメンや 亜喜英(あきひで)」が有名です。営業日や時間が不定で「行ってみないと開いているかわからない」という幻の名店ですが、それを承知でファンが通う根強い人気店です​

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。一乗寺界隈にはこのようにディープな店も潜んでおり、ラーメン好きにはたまらない探究しがいのあるエリアとなっています。

その他エリアと全体傾向

上記以外にも、京都駅周辺は京都ラーメン発祥の地だけあり老舗が集中しています。京都駅東側、塩小路高倉界隈(通称たかばし)には「本家 第一旭 たかばし本店」と「新福菜館 本店」という二大老舗が隣り合い、共に常に長蛇の列をなしています​

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。第一旭は醤油豚骨スープにたっぷりの九条ネギが特徴で、朝早くから深夜まで通し営業しているため観光客にも利用しやすい名店です​

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。新福菜館は真っ黒なスープのビジュアルがインパクト大ですが、見た目ほど塩辛くなく奥深い旨味で人気を博しています​

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南部の伏見区も実は激戦区で、地元民なら誰もが知る「ラーメン大中」のような名店があります​

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。大中は桃山の高架下にあり、並ラーメンがワンコイン500円からという驚きの安さと充実の無料トッピングで学生や飲み帰りの客に愛されています​

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。最近は天下一品も驚く特濃スープの「特濃大中ラーメン」が話題で、粘度の高いスープにゴマ香る巨大唐揚げなど中毒性抜群と評判です​

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このように京都市内各所に魅力的なラーメン店が点在し、それぞれの地域で独自の文化を形成しています。観光で訪れる方も、エリアごとの特色を意識して巡ることで、京都のラーメン文化の奥深さを実感できるでしょう。