人生に望みを失った男がいた。中古屋に売ったら一万円も行かないような車に乗り、地図にも載って無さそうな山道を走った先のお堂に着いた。 中に入ると蜘蛛の巣だらけで窓は割れ埃だらけ。粗末なお堂に観音様の像が座っていた。月夜に照らされ神々しさで輝いていた。

 男は手を合わせ、

「俺に運が有れば生かしてくれ。無ければ安らかに死なせてくれ」

 車に戻りシートを倒して眠りについた。夢の中で観音様は、

「死ぬ気で生きれば安らかに生きられる。生きたいと思えば安らかに死ねない。安生と安死は…」

 そこで男は目が覚めた。朝日に照らされたお堂の中に入り掃き清めた。

「ガソリンはまだ残っている」ハンドルを握る力は昨夜より強く柔らかかった。