【佐藤佐太郎】

木々古りし三輪山の天寒くしてゆく山のべの道あたたかし

紅葉の山のしづくに潤ひて岩はゆくてにしばしば光る

あらがねの土にしたたる汗ありて生れし歌をわれは尊ぶ

【秋葉四郎】
秋葉四郎氏は斎藤茂吉記念館館長
短歌雑誌で作品やインタビュー記事には良く接するが、今回は歌集を購入。茂吉に向ける暖かい眼差しもひしひしと伝わってくる作品群。装丁も清々しい。

遠くより冬木のこずゑ染まりつつ第一日の赤き日およぶ

照る月のおぼろに見えて雪の降る駅に向ひき酒房「佐野」より

十六夜の月中空に光りつつ雪降りをれば人をしのばす

庭木々にやはらかく積む春の雪淡き光をひすがらかへす

万葉のころより絶えぬかたくりか茂吉の森のうちに群れ咲く

咲き盛りゐる山桜孤高にて蔵王のふもと若葉に混じる

抒情詩を友とし一日(ひとひ)は二日分ゆたかにてはや百年の生