中学生時代、思春期と呼ばれる頃は、
気持ちが言葉に追いついていかない時期があります。
感情は大人にだんだんと近づいていくのに、
それを整理して言葉にする力は
まだ育っているところです。
だから「大丈夫?」に「大丈夫」としか返ってこないのは、
何かを隠しているからではないのかもしれません。
言葉が、気持ちに追いついていないだけなのかもしれません。
ドアを閉めて、ようやく――
ある日の夕食の時間。
中学一年生の少年は、
いつもより口数が少ない様子でした。
箸は動かしていたけれど、
顔はうつむきかげんでした。
母親がそっと声をかけました。
「学校、大丈夫?」
少年は顔を上げて、短く答えました。
「……大丈夫」
でも、少年の中では、
いくつもの声がこだましていました。
――本当は悩んでいることがある。
でも、何からどう話せばいいのか分からない。
――お母さんをこれ以上心配させたくない。
気持ちはたくさんあるのに形にならない。
「大丈夫」という一言に、
全部を詰め込んでしまうしかありませんでした。
少年はごちそうさまを言って、
静かに部屋に戻りました。
ドアを閉めると、
ようやく肩の力が抜けました。
「大丈夫」と返ってきたとき
「大丈夫」という一言の中には、
たくさんの気持ちが抱え込まれていることがあります。
――心配をかけたくない。
――自分でもよくわからない。
――うまく説明できない。
それらをまとめて抱えた返事が、
「大丈夫」なのかもしれません。
その先を聞き出そうとしなくてもいいです。
もっと話してほしいと言わなくてもいいです。
そんな時は、「そう」と受け止めて、
いつもの時間を一緒に過ごす。
その姿が「ちゃんと見ているよ」という
何よりのメッセージになっていきます。
いつか言葉が気持ちに追いついてきた時、
お子さんはきっと自分から話してくれます。
その日まで、そばにいる。
それが、静かな支えになっていきます。

