吸収分割が行われると、分割契約で定めた権利義務は、承継会社に「一括して(包括的に)」引き継がれます。これは個別の譲渡手続きを簡略化するための法律上の大原則です。
特許法でも、通常実施権は「その実施の事業とともにする場合」には、相手方の承諾がなくても承継できるとされています。
しかし、現実のライセンス契約にはほぼ確実に「第三者への譲渡禁止(No Assignment)」や「Change of Control(支配権の変更)」に関する条項が入っています。
例えば、
メーカーA社は、ベンチャーB社から「AI画像解析エンジン」の通常実施権を得て、自社のデジカメ事業で使用していました。
A社はデジカメ事業を、新設した子会社C社に吸収分割で承継させました。
A社は、これは会社分割(包括承継)だから、契約上の『譲渡』には当たらない。B社の承諾なしにC社でもAIエンジンを使い続ける権利がある、と主張し、B社は、契約書には『いかなる形式でも第三者に承継させてはならない』とある。C社は別法人(第三者)だ。使い続けたいなら、ライセンス料を再交渉しろ、と反論します。
裁判例では、合併や会社分割による承継は「譲渡」には含まれない、と解釈される傾向が伝統的にありました。しかし、最近の実務では「契約書の文言」が優先されるケースが非常に多いです。