「ただいま」と玄関を開けたけどお母さんの返事がない。
鍵が開いているんだから遠くへ出かけたわけではないはずだ。
靴を脱がないままランドセルを置いて公園へ行くことにした。
「上の公園」はバス通りを渡った向こうの、市営団地の中にあって大きい。
普段なら放課後の公園は子供だらけで賑やかだ。
なのに今日は誰もいない。
砂場にも、シーソーにも、ブランコにも誰もいない。
動物の形をした乗り物にも誰も乗っていない。
シーンと静まり返っている。どうしたんだろう。
来た道を帰って家の横を過ぎ「下の公園」に行ってみる。
階段を下りる前から全体が見渡せる小さな公園だ。
ここにもだれもいない。
体が震えて心臓がどきどきした。
家に戻ると玄関のドアは開く。
大きな声で呼ぶ。
「お母さーん。お母さーん。」
返事はない。泣きそうだった。
