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大房岬

海食の崖に多様な縞を見せ西日に輝く大房(たいぶさ)岬


黒船に備へ築きし砲台は土塁わづかに残しゐるのみ


軍縮に廃しし「鞍馬」の砲塔を据ゑて岬は要塞となりぬ


湾の口へ巨砲(おほづつ)向けてこの岬 首都防衛の一翼担ひき


カノン砲二門据ゑゐし基礎の上に花壇つくるもあら草茂る


弾薬庫の口を太き根抱へをり偽装の植樹の土は流れて


砲台の観測指揮所は爆破され瓦礫のままに密林のなか


湾の口を九キロ射せし探照灯いつもは地下に隠しゐたりき


ドイツ製の探照灯はアークにて炭素を燃やし光放ちき


要塞の実の姿を知らぬまま岬に遊びし少年の日よ
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震洋・桜花伝説

海も山も決戦の地としてゐたり昭和二十年の南房総


「震洋」とふ特攻艇を企てし堤の跡にウミネコ群るる 


木製の小さき艇に火薬積み少年兵は敵艦狙ひき


洲崎の陰より発たせ敵艦へ身もろともに当てむとしたり


発進基地の成るも「震洋」間に合はず兵は死なずに戦終りき


畑中に発射レールの基礎残るロケット式の特攻機「桜花」


爆薬を頭に込めて「桜花」発ち湾の敵艦を目指さむとしたり


射出軌条(カタパルト)のコンクリートは風化して崩れゆくなり「桜花」伝説


特攻は追ひ詰められし人間が何をも為すとの証しなるべし 


住む人は基地の在りしを知らぬなり艇「震洋」も特攻「桜花」も
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終戦記念日なので、以前作った短歌を推敲し、また新作と入れ替えて発表いたします。
多忙につきもうしばらくお休みします。