五日目の土曜日早朝からは少し遠出をしてみることにしました。


野良猫に追いかけられて闇雲に駆け出して

どんどん遠くまで行ってしまったのかもしれない・・
田圃道を通りぬけて隣町の路地裏、インターチェンジの周囲、アンダーパス、

少し大きな川と傍の藪の中も
ひたすら歩いて歩いて歩いて・・・

そして・・・

 

たまが戻らないまま5日間が過ぎてしまいました。
6日目、日曜日も雨が降ったり止んだりのはっきりしない梅雨空が広がって
夜には雷を伴う豪雨になりました。
光る稲妻と激しい雷鳴に不安はますます膨らみ絶望的な気持ちでいっぱいに・・
こんなにしても見つからない。帰って来ないのはやはりもうダメなのかと・・・

自然と涙が零れて

玉への思いは募るばかりで、その思いをどこにもって行きようもなく
パソのフォルダの写真ばかりを眺めていました。
写真を見るというのはとても辛い行為で、見れば余計に切なくて悲しくなります。

でもいつまでもこうしている訳には行きません。

【明日は月曜日、保健所にもう一度連絡してみよう】
【そして、もう一日仕事を休んで探そう。】
【それでも見つからなかったら生活を普通に戻そう】
【気持ちを切り替えてたまのことを静かに待とう】


そう無理やり決めました。

やがて轟いていた雷は鎮まり激しかった雨も上がった深夜のことです。
不思議なことに突然気持ちが明るくなったのです。
絶望的な気分は見事に払拭されて、

意味もなく玉が明日になれば戻ってくるような
そんな高揚感でいっぱいになったのです。

その気持ちは今になっても何だったのか理解できません。

不思議な感覚でした。


疲れていたのだろうと思います。
身体も心もくたくたでしたから・・・
ベッドの中でメールを1通打ちました。

一番心配してくれていた遠くの友人に。


「なんだかねえ、朝になったら戻ってる気がする~♪おやすみなさい☆彡」
送信した後、ぐっすり眠りました。

久し振りに夢も見ず深い眠りに落ちた翌朝・・・
目覚めたのは4時少し前、空はもう明るみ始めていました。
パジャマのまま外に出て深呼吸。
やっぱりたまは戻らなかったな・・・

夕べの明るい気分は忽ち消えて
落胆の深い溜息とともに、小さく「玉」と呟きました。


 

・・・・?

 

遠くで玉の鳴き声が聞こえたような・・・
空耳?

訝しく思いながらも、

もう一度今度は大きな声で「玉!たま」と呼んだのです。

応えるような鳴き声が今度こそ本当に聞こえました!
どこかに居る!玉が帰って来ている!
もう夢中で探しました。どこで鳴いてるの?どこに居るの?

やっとのことで見つけた玉の居場所は我が家の裏手北側
小道と溝川を1本挟んだところに立つ大きな農機具の倉庫。

その中から玉の声が聞こえたのです。


普段は無人の倉庫は義兄の持ち物で、そういえば居なくなった日の夜
倉庫2階に電気が点いていて話し声が聞こえていたことを思い出しました。
あの夜、家を飛び出して開いていたシャッターの隙間から
その中に潜り込みそのまま閉じ込められてしまったのですね。

五日も探し回っていたのに・・・
もちろん倉庫の周囲も探していたのに玉の声が一度も耳に届かなかったのは
西側を走る高速道路の騒音が禍していたのでしょう。
車の通りもほぼない早朝だったからこそ聞こえたのですね。
鍵を借りてドアを開けて無事保護したのは一時間後・・

やっと見つけたとき、玉は怪我もなく汚れてもいず、普段の侭で、

倉庫の中に雨水が入り込んでいましたからそれを飲んでいたのでしょうか。


抱き上げて家に戻り、お水をいっぱい飲み餌を食べてその後は

私の膝の上で丸くなりました。喉をごろごろ鳴らして。

落ち着いた頃、ご心配いただいていた方たちに「見つかりました」の連絡を入れました。
前夜「玉が戻ってくる気がする」とメールを入れた友人は

驚くよりもその事実が信じられなくて
私の頭が変になったのではと思ったのだそうです。

たまの行方不明顛末記はこれで完結です。

今は本当に戻れない場所に逝ってしまった玉ですが、

いつかまた逢えるよね♪

 

長い思い出話におしまいまでお付き合いくださって

ありがとうございました。