今回は眼内レンズ交換は実際、どのような方法で行うか述べたいと思います。

 

麻酔は点眼麻酔と前房内麻酔(眼の中に注入する麻酔)の局所麻酔で行います。

 

まず角膜(黒目)の縁に1mm程の切開創(サイドポート)を2ヶ所作ります。

ここから小さな器具の出し入れや薬剤の注入を行います。

 

粘弾性物質(OVD)というゼリー状の薬剤を使い、レンズと水晶体嚢の癒着を外します。

通常はこのOVDを鈍針といって先の尖っていない針で注入しますが、癒着が強くレンズと水晶体嚢の隙間がない場合は鋭針を使って隙間を作りOVDを注入します。

 

通常はこの方法で癒着は剥がれますが、もし癒着が剥がれない場合、どうしてもレンズを変える必要があれば、水晶体嚢ごとのレンズ摘出+強膜内固定という術式に移行することもありますし、今のレンズ度数を変えることや単焦点から多焦点化が目的であれば、ここで無理することなく、一度撤退し、他の治療(アドオンレンズやLASIK)を検討すればよいかと思っています。

 

また実際の手術の話に戻りますが、レンズと水晶体嚢の癒着がうまく外せれば、レンズを前房(角膜と虹彩の間のスペース)側に引き上げ、虹彩(茶目)の上に挙上させます。

光学部は癒着が外せても、支持部の癒着が外せないことがあり、この場合は支持部の付け根で切断し光学部だけを前房に挙上させます。

 

今度は角膜の縁に約2.5mmの切開創(キズ口)を作り、ここからレンズを取り出します。今、一般的に使われているレンズはアクリル製もしくはシリコン製の柔らかいプラスティックでできていますが、レンズの光学部(度数の入った光が通る部分)の直径は通常6mmで、このままでは取り出せないので、眼の中で専用のハサミを使って半分に切って取り出すか、白内障手術の時にレンズを折りたたんで眼の中に入れるカートリッジ(筒)を使い、ここから専用のセッシを使って引き出す方法でレンズを取り出します。

 

20年くらい前に白内障手術を受けた方ではPMMAという硬いプラスティックでできたレンズを使っている方もいますが、このPMMA製のレンズは切ったり折り畳んだりできないので、切開創を大きく、といっても3mm程度開けてそのままレンズを取り出します。

 

あとは新たに目的のレンズを眼の中に入れ、眼の中を洗い、創口を閉じて(といっても縫うことは稀です)手術は終了です。

 

まとめると、レンズを水晶体から剥がして、レンズを切るか折り畳んで取り出し、新しいレンズを入れる手術になります。

 

レンズと水晶体嚢の癒着が強いかどうかがこの手術の一番のポイントになりますので、癒着が少ないと10分程度で終わることもありますし、癒着がなかなか剥がせないと、30分程度かかることもあります。

 

↑眼内レンズ交換翌日の写真。きれいに手術できていると思います。