執筆年月】2011年1月

1991年以降の出来事


前回からさらに突っ込んだ話を、収集の記録と記憶の限り綴る。


そもそも録音源の大阪では、関西ローカルのネタは豊富で「全国共通版」との区別も容易だった。

特にラジオは顕著で、民放だけでも神戸、京都、和歌山を含めて6つの中波ラジオ局があるが、それぞれのカラーがはっきりしている。

平日の昼間などは、3〜40年ぐらい昔に作られたであろう年期の入った作品がバンバン流れる。
関西ローカルはだいたい想像もつくだろうが、コテコテのノリのものが多く、逆にそうでなければ受け入れられない土壌が根付いている。
宿命なのだ。


前回も触れたがその当時、テレビの特番などで、全国のローカルCMを紹介する企画があり、「東京目線」でそのゆるさを笑うものがあった。
予算のしがらみとかでチープな仕上がりになっているが、味わい深い作品群が琴線に触れるのだ。

興味は地元関西より地方に向いた
脂っこい食事に飽きて、和食嗜好に変えたように。
そのために録音機材を揃えたようなものだった。
AIWAの携帯オーディオは宝物だった。


帰省でよく訪れた岡山は格好のターゲットだった。ここは向かいの香川県も受信エリアで、二度おいしい場所だ。
テレビCMは、関西ではサンテレビ以外あまりお目にかかれない、静止画CMが少なくなく、2カット、下手すりゃ1カットで終わる。
これを求めてたんです!というゆるいCMのオンパレードに興奮したものだった。


実は岡山県のテレビ局は後に大阪の自宅からも音声のみなら受信可能であることを発見し、ニュースステーションを映像はABC、音声をKSBで楽しみ、ローカル枠に入った時の画と音の「ズレ」を楽しんだ事もあった。

同じ車のCMでも、最後に「お求めは岡山スバルで」なんてナレーションが入ると一気にドーパミンが放出される。
これで思い出したが、車のディーラーの各地方のサウンドロゴ(行ってみようよ、名古屋トヨペット♪みたいなやつ)だけを集めたこともあった。


収集方法は年々エスカレートし、8ミリムービー(外部入力端子付き)にポータブルテレビ(外部出力端子付き)を携え、旅に出たこともあった。
あの18切符の旅にも持ち込んだ程である。
今では携帯電話一つで可能な時代になった。

あまりCM概論的な話は出来ていないが、日本各地の地理や地名、文化的事情などはほとんどCM収集で学習したと言っても過言ではない。

結局の所、コマーシャルは時代や風俗を映す鏡だったのである。


あとがき(2024年10月のコメント)


執筆当時、これだけ力説してもなかなか地方CMの素晴らしさを人に伝えるのは難しかった。興味がなければまったく関わりのない世界だからだ。今もそうかも知れないが、youtubeなどのおかげで多少、敷居は下がったような気はしている。

中には「狙って」作られたものもあるが、意図せずちょっと「ずれた」作品や、古さゆえにギャップを感じさせてくれるものが地方には数多く残っていた、平成初期の日常であった。

何でもデジタル化された現代ではほぼ絶滅危惧種となっているが、逆に令和の世相を昭和末期~平成初期風にエフェクトしてそのギャップを楽しむコンテンツも最近は人気を得ている。


さて、aiwaの携帯オーディオや岡山・香川ネタなど前回と重複している記述もあるが、前回の続き話としてはテレビ音声長距離受信ネタを語ってみよう。

我が家のお茶の間のテレビはもちろん、マンションの共同アンテナ。しっかりと生駒山を向いている(後にケーブルテレビ化される)。当たり前だ。

しかしKENWOODのフルバンドデジタルチューナーに繋いだ外部アンテナは西、すなわち大阪湾を向いている(部屋が西向きだったため)。

ある夜、部屋のテレビを見ながらチューナーを適当にパチパチいじくっていた時のこと。

アナログ25chから、今ABCで視聴しているニュースステーションと同じ音声が聞こえてきた。

アナログ時代は中継局ごとにチャンネルも異なっていたため、どこかの中継局の電波拾ったな程度に思っていた。

このニュースステーションはスポーツコーナー辺りを境にCMがネットタイム(全国一律)からローカルタイム(地方別)に切り替わる。

分かりやすくいうと番組の途中で「ここまではキヤノン、サントリー……の提供でお送りしました」に続くCMタイムである。

ここで事件は起きた。

それまで自然にシンクロしていたテレビの画とKENWOODから流れる音が明らかに違うのだ。

映像はやぐら茶屋とかたよしなど関西お馴染みのものが流れているが、音声は聞きなれないようなゴールドタワー鷲羽山ハイランドといった娯楽施設(レオマワールドは関西でも流れてたっけ?)、丸亀高松児島倉敷といった地名。調べると(当時は気軽にGoogle検索やらWikipediaなんて手段は使えず、休日の図書館や百科事典か何かを使ったんじゃないかな…)アナログ25chは瀬戸内海放送(KSB)金甲山送信所(岡山県)からの電波であることを確認。

これを皮切りにアナログ35chのOHK岡山放送も確認。さらに気象条件がよいとVHFでも9ch西日本放送(RNC)や11ch山陽放送(RSK)、また徳島県の四国放送(JRT:1ch)の音声をキャッチする。

ただ岡山・香川のテレ東ネット局である、テレビせとうち(TSC)は23chが同じくテレ東ネットの地元局テレビ大阪(19ch)に近いせいか、混信して苦戦した。

またテレビ和歌山(30ch)やFM香川(78.6Mhz)も聞こえるときがある。

話戻すと、まぁこれが本文のNステ視聴中のズレを楽しむ、ってヤツだ。


8ミリムービーとポータブルテレビについても触れておこう。

8ミリムービーは家用としてあったもの。結局使いこなせるのが筆者だけというだけあってほぼ自分専用機になっていた。

ポータブルテレビは近所のディスカウントショップで見つけて、筆者の小遣いで買ったと思われる。時は大学入学直後のこと。

ともに外部入出力端子がついていたのはラッキーとしか言いようがない。

音声に加えて映像も収め始めた。

その代わり旅行となれば大荷物となる。

部の合宿やらゼミ旅行やらで人一倍デカイかばんを担いで必死の形相で移動していた。奇妙に映っただろうよ。


ここで禁断の裏技をご紹介。

当時の旅館などでは硬貨を投入すれば、エッチなビデオが視聴できる装置があることが定番であった。高校の修学旅行や合宿なんかで、誰が見ただの見なかっただの噂が陰で飛び交うなんて学園あるあるを我々世代は経験してきた。

ここはマッドアマチュアハッカー、筆者の腕の見せ所。

ポータブルテレビのアンテナ入力に3.5Φモノラルを差し、片側は被覆を剥がした銅線を壁のTVアンテナ端子にくくりつける。そしてポータブルテレビを1chか2chに合わせると、タダでAVが視聴できてしまう。おまけに8ミリムービーに繋いで録画までできてしまう。こうした悪知恵だけは天才的だったのだ。

ね、念のため言っておきますがこれでビジネスしようとはこれっぽっちもございません。

あくまでも個人利用のためです!


………

あ、このブログのテーマはローカルCM概論だった。全然CMの話してねぇや。

本文でもそんなこと書いてたな。

つい下ネタに走り出すとヒートアップする筆者のリビドーは数十年経っても変わんねぇ。

つまりだな。筆者的ローカルCMの魅力を箇条書きにすると、

◆その土地の地理が学べる

 固有名詞最強!地名はだいたいCMで覚えた。何市が何県に属するなどはここで記憶するので、時々他人の役に立つこともあったりする(駅名、路線名から覚えるパターンもあるが)。

◆旅行してる感

大阪市内に居てるのに遠くに旅をしている感覚になれる。交通情報で環八通りの瀬田を先頭に…なんて聞こえてくるともう逝きそうになる。

◆程よいゆるさ

 凝ってない演出、奇をてらってるようで外しているセンス、無理に背伸びした(褒めてます!)微妙な感覚が琴線に触れる。

(大半は真面目なんですよ)

◆時代錯誤感

 明らかに6~70年代に作られたものから、結果的に周回遅れ的なものまで、大手広告代理店なら作れねぇだろなというチープニッチなものが地方にはある(もちろんベタ褒めです)。


とにかく、記録されたものを聞き返してみるとその土地土地、その時代の記憶が蘇るってもんだから残しておいてよかったってなる(伝われ!)が、なんせサンプルが多すぎてわけわかんなくなっている水色テープ二百数作品の数々…

一つ一つに愛着がありベストを決めかねる。

各地方を旅して集めた地方ネタたち。

これら作品の中で印象的だったのは何だろう。

好みは当然ゆるゆるしか勝たん…なのだが。

なおかつもう一つの魅力、時代感あるモノ…

あれは、確か高校の修学旅行の帰り、函館からの日本海4号で福井県を通過したときに拾った大野市の製菓店のコマーシャルかなぁ。

東京キッドの頃の美空ひばりっぽい歌声で20秒まるっとCMソングだった昭和中期感満載な作品。茶碗のマーク。勿論今も地元で人気!

こうしたものは京都でも和歌山でも、或いは岡山でも聞くことができたが、中でもこの福井で聞いたものが今でも最も印象に残っている。

ゆるさ加減もプラスポイントであります。

何となく伝わっていますか?いませんか?

…てなわけで筆者が選ぶ印象的な地方CM第一位吉村甘露堂(福井県)でした。

先に第一位から発表しましたが、ここからカウントダウン方式で二位まで選んでみました。

あくまで筆者が自力で収録したもの(ネットの拾い物やテレビの特番で流れていたものを除く)です。


第十位カメラのたかた ハートプラザ(長崎県)

NBCラジオから1993年に捕捉。ここはかのジャパネットたかたの原点。当時は長崎ローカルのカメラショップで翌年、高田明社長が独特の甲高いトーンでテレビデビューを果たす。

ラジオ通販はすでに一部で始まっていたようだ(Wikipediaより)


実店舗はこうして現在も「ジャパネットたかた特約店」として健在である。
余談であるが、ジャパネットたかたのテレビ業界への台頭によって、それまで天下であった「日本文化センター」「日本直販」などといった老舗通販が隅に追いやられてしまった(なくなってはない)。
最近は「やすい、やすぅ~い」でお馴染みの夢グループってもっとすご~ぃのも出てきましたが。
日本文化センターといえば最後の電話番号案内。のちに全国一律のフリーダイヤル化されてしまったが、これも車のディーラーと同じく地方毎に差し替えられ「岡山0862ぃ、78の2222~にほーんぶんかセンター」を聞くのが楽しみになっている。1992年頃に岡山市域の市外局番が3桁化され、しっかりと「岡山086ぅ~」に変更されていたというのもビフォーアフターで記録に残っている。

第九位京楽会館(愛知県)

ここからはいわゆるコマソン込みでチョイスしました。愛知県民なら「青柳ういろう」並みに誰もが歌えるゴーゴーゴー、胸を張って…

ちな、パチ屋さんです。



第八位那智黒(和歌山県)

那智黒といえばヘイヘーイおばあちゃんのテレビCMが有名だが、ラジオ版はさらに年季の入った(おそらく1960年代に制作?)作品。WBS限定。歌詞は那智黒のみ連呼



第七位RNCランド(香川県)

西日本放送の総合住宅展示場で、現在はセトラと名乗っている。こちらも香川県民ソングの一つで、ご家族連れでいらっしゃい。



第六位喜久水酒造(長野県)

酒どころ信州は飯田の地酒。ずっと菊水だと思い込んでいた。「きくすい」という地酒は割と日本各地にあるようで、今回このブログを書くにあたりまた知識を得たり。地方CMは雑学の宝庫である。喜久水飲む人好きだなぁ…



第五位タムラのピーナツ(大阪府)

筆者の地元大阪からはこの逸品。ベッタベタコッテコテが溢れ返る大阪の中でシンプルかつ年季の入った時代物な5秒CM。ABCラジオでよく流れていた。



第四位サトームセン(東京都)

もはや説明不要の素敵なサムシング

東京にローカルという言葉は似つかわしくないと思いがちだが、このCMは首都圏にいないと視聴できない。

なお筆者は栃木県内からポータブルテレビで日本テレビより捕捉した。



第三位琉球新報(沖縄県)

一回目の大学卒業旅行で捕捉。沖縄ほどオリジナリティー豊かな地はなく選定に迷ったが、歌付きのモノで選んでみた。



第二位マルケー自動車整備(岡山県)

このCMをはじめ、複数のRSKラジオから流れるものに当時の局アナであった井上いつのり氏が起用されていた。概ねメッセージにはダジャレが含まれており「…なんてなコトをですな」と

言うのが定番であった。ひょっとしてアドリブ?と思わせるようなインパクトの強さで第二位にランクインさせていただいた。



次点トヨタカリーナ/静岡トヨタ(静岡県)
本文でも触れた、地方ディーラーのサウンドロゴを集めようと思ったキッカケ。
前半は全国共通の素材で、小田和正氏の歌が使われていた。ラスト数秒に「静岡(チャチャ)トーヨータ」がインサートされる。
トヨタ系が特に多く、大阪トヨペットも長年男声コーラス調のオリジナルサウンドロゴを使用していた。

番外国際興業レストランなど(ホノルル)
1991年の正月、ハワイへ家族旅行に行った際に捕捉。aiwaのポータブルレコーダーは必需品だった。
ハワイもトランジットで立ち寄った韓国ソウルもほとんどが現地語であったが(当たり前や)、ハワイには日本語放送もあり、そこで幾つかのCM等を捕捉した。元旦に訪れたためほぼ、日系企業の現地法人からの新年の挨拶だった。

地方CMの話から、大阪市内で受信できた中四国地方のテレビ音声の話、旅館でペーパービューのエロビをタダで録画する方法に至るまで色々述べて参りました。

鉄道オタクにして電波オタクな筆者。

もはや一般人とは異なる世界を生きている。


次回はもっとコア理解不能な話を控えておりますが、本日の放送はこれで終了致します。

JOY4-FM、JOY4-FM

こちらはエフエムヨハネ445です。

周波数44.5Mhz、出力50kwでお送りしました。

どちら様も火の元、戸締まりには十分お気を付けて、おやすみなさい………

みたいな世界の話です。