たまねギの簀巻きss -3ページ目

たまねギの簀巻きss

小説、ss、つぶやき、エッセイその他もろもろ
気分でのほほんと投稿します
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魔女母「?」

魔女母「魔女?どうしたの?」

魔女母「私とあの人の出会いについて知りたい?」

魔女母「くすっ、貴女もそんな年になったのね」

魔女母「いいわ、教えてあげる、さぁ、こっちにおいで」

魔女母「もう、膝の上だなんて甘えん坊ね」

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魔女母「そう、何年前のことかしら」

魔女母「私は人間に追われていたの」

魔女母「一人二人の人間なら相手じゃないわ、それでも大勢の人間に囲まれてしまえば話は別」

魔女母「追われる内に魔力はどんどん減っていき」

魔女母「....そして最後には捕らわれてしまった」

魔女母「魔女、捕らわれた魔女がどうなるのか知ってる?」

魔女「火炙り!」

魔女母「うーん、30点ってところかしらね」

魔女母「捕まった魔女はね、ありとあらゆる刑を受けるの」

魔女母「水で熱で武器で人で痛みで苦しさで」

魔女母「ギリギリ死なないように」

魔女母「そして、心も身体もボロボロになったとき最期に火炙りにされるの」

魔女「.....うう、恐いよぅ」ガクブル

魔女母「そうね、でも人間は魔女よりももっと恐がりなのよ?」

魔女母「自分より強い力が恐い、違う生き物が怖い、解らないことが恐い」

魔女母「だから、それを壊そうとするの」

魔女母「.....そして、捕らわれた私も同じように刑を受けた」

魔女母「苦しくて痛くて早く死にたいとばかり考える毎日だった」

魔女母「そこで、あの人と出会ったーー」 


『ねぇ君、これ食べるかい?』

『火傷に効く薬草だ、早く!他の人に見られないように!』

『僕の故郷はねこんな大きな魚がいてね!』

『.....君を出してあげれたらいいのに』


魔女母「変わった人間だったわ」

魔女母「見張りの癖に毎日内緒でご飯をくれたり痛み止めを持ってきたり」

魔女母「壊れかけた心の片隅であの人はいつも笑っていた」


『魔女母!今日は故郷の魚を持ってきたんだ!......見つかるといけないからほんの少しだけど』

『ねぇ、君の話も聞かせてよ』

『いつか、必ず助けてあげるから!』


魔女母「だけど、それも長くは続かなかったの」


『おい!貴様っ!なにをしている!』
 
『最近、どうも魔女の回復が早いと思ったら.....!』

『この魔女の手先めっ!処刑してくれる!』

魔女母「あの人は、人間に見つかり連れて行かれたわ」


『おい、魔女!今日は貴様を痛めつけない』

魔女母『え...』

『そのかわりをこいつにやってもらう』ジャラ

『う.......』

魔女母『うそ......』

『この裏切り者めが、魔女の前で死ぬがいい』ビシッッッ!

『がぁぁぁあ!』

魔女母『止めてっ!!』

『ふ、やはり直接魔女を打つよりも反応がいい、なっ』ビシッッッ!

『ぐぁぁあ!!』
 
魔女母『お願い.....私ならなにしてもいいから...その人には、その人だけにはなにもしないで......』

『ふむ......そうだな、ではそこに這いつくばって私の靴を舐めてみろ』

魔女母『っ........わかったわ』ペロ

『はははっ!これは傑作だ!何をしても絶対に屈しなかった魔女がこんな簡単に折れるとはなっ!』

魔女母『舐めたわ.....だからもうその人を解放して』

『誰が魔女の約束など守るものかっ!』ビシッッッ!

『ぁぁぁっ!』

魔女母『やめてぇっ!』

魔女母『どうしてこんなっ!なんで...』

『ま、魔女母.....』

魔女母『!』

『君は、と、とてもきれいだ』

『黙れ裏切り者っ』ビシッッ!
 
『ぐっ!...始めてみたときからずっと想っていた』

『君の事が好きなんだ!』

『な、なんという』

『穢わらしい.......っ!』ビシッッ!

『ぐぁぁあ!.....だから』コロ...

『......おい、なんだそれは』

『....君は生きて』ガリ

ズドン


魔女母「あの人が口の中に隠し持っていたのは膨大な魔力を持ったドラゴンの目玉だった」

魔女母「破裂した灼熱の業火は私の拘束具を壊し、そして自分の肉体も焼いてしまっまった」


魔女母『すぐに魔法を.....うっ!』ズキ

魔女母『回復魔法!』

魔女母『お願い直って』ポウ

『..........』

魔女母『回復魔法!回復魔法!』ポウポウ

『...........』

魔女母『そん、な......』

魔女母『嫌よっ!嫌!お願いだから』

魔女母『.........お願いだからまた笑ってよ...』ポロポロ

『........ま、じょ』

魔女母『っ!』

『だ、じょ....ぶ?』

魔女母『ううっ!......うわーーん!』ダキ


魔女母「そして、2人で逃げ続けて最後にはあの小屋で貴女が生まれたの........あら?」

魔女「........すぅ」スヤスヤ

魔女母「ふふふ、ちょっと魔女には難しかったわね」

魔女母「......あなたもいつかあの人のような人間と出会うのかしら?」ナデナデ

魔女母「人間は、醜く汚く自分のことばかり考えている生き物」

魔女母「だけど......」


魔女父「おーい!帰ったぞ」

魔女母「.....あなた、しぃー」

魔女父「?」

魔女父「ああ、魔女、寝てるのか....」

魔女「う.....んん.....」スヤスヤ

魔女母「今、お話をしていたところなのよ」

魔女父「そうか、どんな話だい?」

魔女母「それは....」



魔女母「人間の中にも素敵な人がいるって話よ」クス






以上番外編でした