ただいま、と言ったら
おかえり、が聴こえるものだと思っていた

鬱陶しいほどあたたかく
ドロドロになるほど甘く
あいしてくれていたことも知っていた


最後に話したのは電話越しで
がんばれよ、とあなたの濡れた声を聴いた
顔が見えないのをいいことに
いつもは言えないありがとうが
するりと口をついて出てしまった



思い返せば後悔ばかりなのはなぜだろう

またね、を簡単に言えてしまうのはなぜだろう


もう会えないのに

もう会えないのに




言葉は言葉だけで
ちゃんと伝わっているのだろうか

大切に思ったときも
幸せだったときも
この気持ちは言葉になっているのだろうか


触れた手の方が正直なのかな
あたたかくても  冷たくても
あなたにまっすぐ伝えられている気がする

大切なら握ってしまうし
それで安心してしまうもんな

なんて、

そうやってわたしはいつまでも
自分勝手な人間でいるのだろうか




誰にもわかってもらわなくても別にいいや、と思っていたのに
あの子が目の前で笑っているのが腹立たしくて悲しくて
わたしの気持ちがわからないのかよ、と思ってしまった

駅前で座り込む弾き語りの男の子みたいだな
がらんどうの瞳で、伝えたいことなんて何もないふりをして
でも本当にないならこんなところで歌わなくたっていいのにね



お願いだから消え去ってほしいけど
やっぱりそれよりわたしを握り潰してほしいや

あの子を中心に回っている世界なんて
追いやられるくらいなら粉々になってやりたい


なんて、物騒だね
どうせ勝てないんだから今日もわたしは笑っている

でも、もし粉々になれたとしたら来世は砂時計の砂になりたいなとか、
思えば思うほどそんなのってすごく素敵な人生だよなとか、

何を考えているんだろうな


今日もわたしは笑っている