光のない世界から <第十一話 ある一日 その2>
その日、僕はことごとく餌の小エビに逃げられ、ご飯にありつけなかった。
時々こんな日がある。
そんな時は無駄に動かないようにするしかない。
うずくまっていると、シーラじいさんがやって来た。
「ルメ、どうした。」
「おじいさん、お腹が空いた、、。」
「そうか、そういうときはじっとしてプランクトンが口に入るまで待つしかあるまい。」
「うん、そうだね・・・。」
食べ物が獲れなければそのまま弱って息絶えるしかない。ここ深海はただでさえ食料が少ない環境だ。
「厳しいがこれも現実だ。わしにはどうすることも出来ん。」
「うん、解っているよ。僕、頑張るからだいじょうぶ。」
強がってみても、空の胃袋はぐうぐうと僕を強迫しているようだ。
いざとなったら僕には手足が8本もあるんだから、2、3本くらい。
ぎりぎりまでガマンして、いよいよとなったら・・・
そんなことまで考えるなんて、頭にも栄養がいっていない。そろそろ限界かなあーーー。
そう思っているうちに意識がぼうっと薄れてきた。
弱い者から先に死んでいく。。じいさんが言っていた言葉が朦朧とした頭をかすめていった。
「ルメどの!大丈夫でございますか?」
意識が戻った目の前には、見覚えのある顔があった。
「う・・ん。その声は、、リュウ君なの・・?」
「はい、どうぞこれをお召し上がり下さい。」
リュウ君は僕に何かを差し出した。
それが食べ物かどうかを確認もせず、僕はそれを夢中で呑み込んだ。
「お、おいしい。。」後にも先にもこんなにおいしい食べ物は生まれて初めてだった。
少し落ち着いたあと、僕は生きて居る事をしみじみと実感した。
「リュウ君、ありがとう。助かったよ。」
「間に合ってよろしゅうございました。」
「どうしてここに?」
「偶然通りかかったら、息も絶え絶えのアナタを見つけまして。」
「そうなんだ。おじいさんは、生も死も自分次第だって、、そう言って去って行った。」
「シーラどのを恨んでおられますか?」
「ううん、おじいさんはいつも僕の事を考えていてくれるんだ。だから今回だってきっと・・・。」
「それを聞いて安心致しました。」
リュウ君は僕が元気に動き回れるまで側にいてくれた。
「シーラどの、あなたが突然リュウグウに来られた時は驚きましたが、、これで良かったのでございますか?」
「ああ、これで良い。いつもわしが手助けをしていると、いつか依存してしまう。
だがわしもいずれ死んでいく。」
「たとえ恨まれようとも、相手の為になることを考えて行動する、、。なかなか出来る事ではございません。
無償の愛の更に上の、究極の愛を注がれているのでございますね。」
2人の会話は、僕の聞こえないところでかわされていた。


