私たちは縁側に座ってコーヒーを飲んだ。
私が何時間も前にコンビニで買った、その派手なパッケージの缶コーヒーは、私が彼女の家を探しながらさまよっている間にすっかり温くなってしまっていた。
彼女の住む古い家の縁側からは、家の周りをぐるりと囲む白樺が見え、街からやさしく隔てられているように感じる。
均一に刈り込まれた芝生が低く揺れ、縁側に沿って、立派に育った朝顔の鉢がいくつも並べられていた。
「さっき、」
彼女がため息をつくように呟いた。
「さっきあなたが、コーヒー飲もうって言ったとき、すごく不思議だったの。」
なにが、と私は彼女を見つめる。
「あたし、ここ何週間か、違う世界に居たのかもしれない。
その世界は、あたしにとって、すごく暗くて寒くて、苦しい世界だったの。
でもさっき、あなたが当たり前みたいに、いつものことみたい、コーヒー飲もうって言ったとき、コンビニの袋とか温くなったコーヒーとか、そういうもの一つ一つから平和なにおいがしたの。
世界のにおいがした。
大げさだと思うかもしれないけど、救われた気がしたんだ。」
縁側から入り込む風に、彼女の前髪が揺れる。
その下には目を細めて、心底ほっとしたという感じの彼女の顔が見えて、私も胸が軽くなったような気がした。
私が何時間も前にコンビニで買った、その派手なパッケージの缶コーヒーは、私が彼女の家を探しながらさまよっている間にすっかり温くなってしまっていた。
彼女の住む古い家の縁側からは、家の周りをぐるりと囲む白樺が見え、街からやさしく隔てられているように感じる。
均一に刈り込まれた芝生が低く揺れ、縁側に沿って、立派に育った朝顔の鉢がいくつも並べられていた。
「さっき、」
彼女がため息をつくように呟いた。
「さっきあなたが、コーヒー飲もうって言ったとき、すごく不思議だったの。」
なにが、と私は彼女を見つめる。
「あたし、ここ何週間か、違う世界に居たのかもしれない。
その世界は、あたしにとって、すごく暗くて寒くて、苦しい世界だったの。
でもさっき、あなたが当たり前みたいに、いつものことみたい、コーヒー飲もうって言ったとき、コンビニの袋とか温くなったコーヒーとか、そういうもの一つ一つから平和なにおいがしたの。
世界のにおいがした。
大げさだと思うかもしれないけど、救われた気がしたんだ。」
縁側から入り込む風に、彼女の前髪が揺れる。
その下には目を細めて、心底ほっとしたという感じの彼女の顔が見えて、私も胸が軽くなったような気がした。