このコーヒー、最大の特徴はその製造方法だ。ルアクが最も熟した上質のコーヒーの実を好んで食べる習性を利用。エサとして実を与え、糞に未消化で残る種子を洗浄、乾燥して作る。
ルアクの腸内細菌や消化酵素の働きで生まれるとされる独特の香りも人気の理由だ。地元紙の特集記事には「滑らかな舌触り」「バターのような濃厚な味」「繊細な甘み」とあった。
年間生産量200キロと少なく、販売価格は1キロ500ドル前後。95年には「排泄(はいせつ)物から取れた世界一高いコーヒー」としてユーモアのある科学研究に贈られるイグ・ノーベル賞を受賞した。
今年3月、オーストラリアを訪問したユドヨノ大統領がラッド首相(当時)へのおみやげに選んだ。しかし検疫での事前許可を得なかったとして、現地で「うんこ外交」とひんしゅくを買う結果に。7月にはインドネシアのイスラム教最高権威「イスラム導師評議会」が糞から取れることを理由に「不浄」とし、イスラム教徒が口にすべきではない「ハラム」にするか協議。結局「飲んでもよいハラル」と認定されたが、決定の行方に注目が集まった。開催中の上海万博で紹介され、「ネコの糞」コーヒーとして話題になった。
そもそもなぜ糞に残った実を使ったのか。コーヒー豆専門店を営むカストミさんによると以下の通りだ。17世紀、インドネシアを植民地支配していたオランダはプランテーションでコーヒー栽培を始めた。農園労働者たちはオランダ人がおいしそうに飲むコーヒーを飲んでみたいが、手に入らない。コーヒーの実を食い荒らす「害獣」だったルアクの糞に目をつけ、自分たちのコーヒーを生み出したという。
実際に味を楽しむため専門店へ。コピ・ルアクは1杯8万2500ルピア(約780円)で他のコーヒーの約4倍。屋台のナシゴレン(焼き飯)1杯100円のこの国では破格の値段だ。
「世界一高価なコーヒー」と書かれた品質保証書が同封された袋を開け、店員が目の前でいれてくれる。口に含むと滑らかな舌触り。程良い苦みが口の中に広がる。「最初に飲んだ人はどんな人だったのだろう」。おそるおそるコーヒーを口に運ぶ姿を思い浮かべ、300年前の農場の風景にしばし思いをはせた。【ジャカルタ佐藤賢二郎】
バリに旅行に行ってきた際、スーパーで、このコーヒーが猫の糞から種をとりだした、などということは知らず試飲しました。が、濃厚な味でおいしかったです。もう少し安かったら買っていたかも。でもインドネシアは物価が安いはずなのに、日本と同じくらいの値段だったから買わなかった。