先日、毛筆の練習を兼ねて駒字の案を書いてみたのですが、中にいくつか、「これは使えそう」と思ったものがありました。根付用に新しい「龍」が欲しいと思っていたので字母紙用に編集作業をしたのですが、気がついたことなどを少し記録に残しておこうと思った次第です。

 

(左:から完成した文字、中:スキャナで取り込んだ元字、右:レタリング文字)

 

最初に右側の字についてですが、これは最初からレタリングで作ったものです。確か三年前の10月頃、山形将棋駒協同組合で新書体募集という企画がありましたが、そのときに書いた龍王の龍です。

書いたときは、「けっこう格好良く書けた」などと思っていましたが、今見ると、「これはなかなか酷い(呆)」なと思います。行書として書いた筈なのに筆の流れが感じられず、楷書と大差ありません。「立」の部分など彫りやすくするために高さを取っているのが頭でっかちな感じで、線の拙さと相まって「龍の子供?」みたいな雰囲気になってしまっているのは笑えるところです。

 

中央は、半紙に書いたものをスキャンしたもので、自分はこれが一番好きです。専門家からみれば、"まだまだ青いのう"レベルでしょうし、100均の半紙なので変な滲みが出たりしていますが、それなりに"味"があると思います(自社基準です)。

 

左が完成したものになります。字幅を少し広くしたり点画の間隔を取るなど、部分毎に注目していただくと、どのように変えたかが分かりやすいと思います。

 

以下、調整の具体例です。

これは月の部分を拡大したものですが、左は線や形を滑らかにしたほか、彫りの工程や完成後の手入れ時に木地が欠けないように"島"を大きくしました。毛筆の作品であればこんな修正はしませんが、元字のままだと彫るときにどこに刃を入れたら良いのか迷う元になりまので、やむを得ないと考えています。

 

この龍は、「吾道書」にも使う予定です。これに合わせて他の字も大きな見直しが入ることになりそうですが、少しでも良いものにしたいなと思います。

 

ということで、彫りかけの駒の作業に戻ります。二~三本の線を彫っただけでギブアップという日もありますが、あと11枚まで来ました。

 

相変わらず眼の状態が悪いです。

画像は、四日前に彫った根付ですが自分でもなかなかの惨状だと思います。

 

左馬の方は、転折から先の部分の木地に濃淡があるのですが、これが迷彩のように働いてしまい縁の部分が波打っているように見えます。周囲を鉛筆で黒く塗ってみましたがあまり効果が無く、中断を余儀なくされています。

 

この一年くらい、彫駒は諦めて彫埋駒専門でやってみたらどうかなどと考えることが増えてきました。

ある程度満足のいく彫りができるようになっていること。彫りで駒字に表情を与えることに強い魅力を感じていることを思うと残念ですが、いつまでも今の状態でいる訳にはいきません。翠鳳書が完成したら、具体的にどうするか考えようと思います。

 

自分が一番大切に考えているのは、「自分オリジナルの魅力的な駒書体で将棋駒を作ること」ですから、そのことだけに集中するべきだと自分を説得中です。自身との折り合いがつけば良いのですが......。

(株)トウシン様に依頼した蒼鶴一字のオークションが昨日終わり、画像のような結果になりました。自己評価では、落札価格33,000円±1,000円程度だったのでかなり驚きました。返品の可能性もあるので、まだ手放しでは喜べませんが、結果には満足しています。



前回(清安)も今回の蒼鶴も、正直、売りに出すには未熟な出来でしたが、漆やサンドペーパーなどの消耗品代を稼ぎたかったのと、「自分の駒書体がどの程度受け入れてもらえるか」を試す意味がありました。
今回、本気ではないであろうものも含めてですが、14人の方から入札いただけたこと。ウオッチリストの登録が70件に達したことを考えると、自分の駒字がこの世界で市民権を得られる可能性は充分にあると思えます。
 

駒字がどの程度、注目されるかを見たかったので、敢えて良い木地は使わずに作ったのですが、それなりに自信を持つことができました。次回は、斑入り柾などの良い木地で作って、高い評価が得られるのかどうかに挑戦したいと思います。

先月の中旬に、一字彫りの駒(蒼鶴)が完成しました。個人でオークションに出すことなども検討していましたが、(株)トウシン様に依頼することにしました。
自分オリジナル書体の駒が好意的に受け止めてもらえるか知りたかったことが一つ。それと出品手続きや画像撮影の手間、トラブル対応のことなどを考えた為です。
 

【出品した駒(蒼鶴一字)】


今回は日頃、Xやこのブログを読んでくださっている方たちへ、ささやかではありますが感謝の気持ちとして根付プレゼントを行おうと思います。

【根付プレゼントの内容】
出品した駒の落札価格を予想していただき、もっとも近い金額の方1名様に駒根付を一枚プレゼントします。X(吾道の駒)またはこのブログからお申込みください。尚、応募はお一人さま1回限りとし価格の訂正は不可とします。また、該当者が複数になった場合は、先着優先とします。

応募受付 2026年5月6日~2026年5月9日(土) 23:59

根付仕様:木地の大きさは金駒サイズになります。お好みの文字で作りますが、片面につき漢字(平仮名も可)3文字までとさせていただきます。

ピタリ賞:落札価格を的中させた方には、追加でもう一枚プレゼントします。但し、こちらは龍と左馬になります。

以下は、今回出品した駒の仕様などです。入札を考えて下さっている方は、内容をよくご確認ください。

【駒の説明】
書体名の「蒼鶴」は、この駒書体を作るに当たって、日下部鳴鶴(明治の三筆の一人)の千字文を参考にしたことから鶴の字を頂戴してつけたものです。
歩や成香など一部の文字の形、起筆での筆使い、直線的な線を多くするといった工夫をしていますが、ほとんど私の素の字です。

木 地:島黄楊 やや色白で柾目と追柾の混合です。柾目と追柾の区分は人により基準に差があると思いますが、自分の基準では半分以上が追柾になります。

仕上げ:磨きは800番のサンドペーパーまでで止めてあります。以前、彫埋駒を買ったとき、滑り過ぎて非常に使い辛かったことがあったのでそうしました。とはいえ、手触りは滑らかで実用品としては充分だと思います。

面取り:天以外のすべての角に約1mmの面取りをしています。以前、駒研に試作品を持っていったとき、「肩と裾の部分を削ると形がダレるから止めた方が良い」と言われたことがあるのですが、私はそう思わなかったので敢えて削りました。私は、削るのもそうしないのもどちらもありという考えです。

その他:歩の一枚の天に漆か筆ペンのインクをつけてしまい根付にしました。そのため余り歩は1枚だけです。また、成桂の金ですが、しばらく前に「ひとやねの下に主を書いた字は使わない」旨を投稿しています。この駒は考えが定まらないうちに制作に入ったので、次回制作分から修正します。

今回は、「同じ字母紙を違う人間が彫ったとき」にどのような違いが出るかなどについて書きます。例として赤黎さんと私が彫ったものの画像を掲げますが、これはどちらが上手いかを比べるのが目的ではなく、彫り方の違いを見る為のものであることをあらかじめお断りしておきます(とはいえ、赤黎さんの方が彫りも画像の撮り方もずっと上手いのですが、その辺りは読者の皆様の優しさに期待したいと思います(^_^;))。

(「翠鳳書の桂馬」左側が赤黎さん、右側が私の彫ったものです)


他にも違いはありますが、今回は「桂」のきへんで縦画と横画の交差している部分に注目してみます。
翠鳳書体は、点画の強弱(太/細)の差がかなり大きく、太い点画を上手く配置することにより字の重心(バランス)を取っていることが大きな特徴です。
このことを重視するのであれば左側(赤黎さん)の画像の彫り方が適切だと言えるでしょう。横画が非常に深く彫られている為、縦画が切断された形になっていますが、研ぎ出しや研磨の工程での「字のヤセ」を防ぎ、特定の点画を強調するという意味で理にかなった彫り方だと思います。

一方、右側(吾道)は横画の彫りが浅めで、縦画は完全に繋がっている訳ではありませんが線が概ね残っています。
以前、桂馬の彫りの画像を載せたとき、桂馬の左右の縦画を外に向かって膨らませている(向勢)が大きな特徴であると書きました。これにより文字の中心から外に向かって力が放たれている感じが出るので、その線を途中で切りたくないと考えた結果が自分の彫り方です。
 

自分は、線の深さができるだけ同じになるように彫るのが好みで、縦画・横画が交差する部分に×の形が浮かぶようになっているのが理想です。繋がっている筈の線が途中で切れていることに違和感を覚えてしまうのが、良くも悪くも自分の感性だと思います。

最初にも書きましたが、これはどちらの彫り方が正しいとか良いとかいうことではありません。漆を入れてしまえば、線の繋がり方はあまり気にならなくなりますし、赤黎さんの彫り方でも、脳内補正がかかって元の線が認識されるからです。
細かいことではありましたが、上に書いたようなことまで見ていただければ、駒師の個性などが想像できて面白いのではないかという話でした。

もう一つ、赤黎さんの彫り方の特徴について一つ紹介したいと思います。




上の画像は、赤黎さんが現在制作中の「翠鳳書」の角行です。いつもながら見事な彫りですが、特に注目していただきたいのが角の左側の縦画です。
通常の線(彫り)では、谷線を境に一方が明るく、反対側が影になる他に陰影はつかないものですが、画像を見ると谷線の左側にも陰影が出ています。
翠鳳書体は、かなり個性的で、今までの駒書体には見られない線があるので、それを活かそうとするなら画像のような彫りになるのは必然なのかも知れません。

 

見て分かる通り、縦画の中に彫りの深い部分と浅い部分があり、これにより線に複雑な表情を持たせていることは非常に良いと思います。ただ、どうしてこうなるか理屈はすぐに分かっても、実際彫るとなるとかなり難易度は高く、赤黎さんの技術力の高さがよく出ているところだと言えるでしょう。
駒を鑑賞するとき、「ここはどのように印刀を動かしたのだろう?」といったことにも注意してみると面白いのではないかと思います。

さて、前回の投稿で「錦旗」の画像を載せ、「これはマナーやモラルの欠如の表れではないか」と書きました。このことに対し、「文字に適度なアレンジを加えることで駒師の個性を出すことは、そんなにいけないことなのか? 作者が違ってもまったく同じ字の駒になっていてはつまらないではないか」と考えた方も多いかも知れません。

しかし、上に示した通り、彫り方には端的にその人の個性や技量が現れます。彫り以外でも面取りの仕方、表面仕上げなどいろいろな要素がある訳で、個性を出したいのならば変に駒字をいじるより、こういったことで自分の色を出していくのが本筋なのではないかと思い文章にしてみました。
 

長い文章になりましたが、駒の鑑賞あるいは買うとき作るときに参考になることがあれば幸いです。