▽凍てつく義侠軍編
………結局は無駄だった。陽の光はラーを照らしているが、陰っていた。
わかっていたことなのに、それでも期待していた。心の何処かで、願えば叶う、信じれば報われる、そんな幻想を抱いていた。小説や物語の中では、きっと、そうなのだろう。しかし、現実はそう上手くはいかない。あの時、何故、考えを改める事が出来なかったのか。私に言って聞かせる人は居ないのか。お前は馬鹿だと、間違えてると、考え直せと、その言葉が、あれば、今とは、違う道を歩んでいるに違いない。私の中にまだ、あの頃の気持ちが残っているのだろうか……いや、そんな、筈は……ない。なのに私は、震えている。自分が、もう分からない。見えない感じない。駄目だ。もう……だから神様どうか、お願いします私に、私にひとときをお与えて下さい。
会議が始まった。目の前には、やる気のない御老体が複数人。大きな円卓を囲んでいる。席次の差別が起こらないようにとの配慮だろう。しかし、服装は社会のきまりにかなった交際上の作法を全く無視した楽で、着崩れたものだった。中には目を瞑ったまま動かない者もいる。寝ているのか、はたまた死んでいるのか。見るに耐えない。私は、そのふざけた光景を1時間と5分、窓の外から見ていた。丁度よく外壁に足掛かりがあり、そこで、息を潜めることが出来た。こんな御仁達が作り出す条例は当然、市民の為にならない私利私欲で、人々を苦しめるものであった。私は、私は、その事実を許しはしない。
「以上でインパルス委員会を終了します。」
私は革命家。コイツらの思うようにはさせない。もう、二度と私のような人間を生み出してはいけない。私が阻む。それが私の意思。私の行動原理は、たった、それだけなのだ……
カチャ、パン!!パリーン!!
「な、何事じゃ!?」
窓ガラスをピストルで壊し、へりに跳び乗る。
「まぁ、とりあえず、死んで下さい。」
いったい何が起こったのか把握しきれない委員達。
パパパンパンパンパンパン!!
素早く的確に頭を狙い撃ち抜く。
「やめろー!!ぐぁ!!」
「おのれー!…ぬ!」
「なに、者……だぁ?…」
瀕死の老人が最後に問う。
「私は凍てつく義侠」
「……まさか、こんな、」
そう言い残すと老人は永遠の眠りについた。
「これは、報いです。仕方ありませんよね?」
問いに答える者はいなかった。
義侠軍の基地では、こんな会話が繰り広げられていた。
「総帥、お一人で!?」
「うん。」
少年は指で頭を掻きながら、愛想笑いを浮かべている。
「なんと言うことだ!総帥を危険に晒させてしまうとは、」
「なんか(要らないモノを処分するのは得意なんです私。なので、一人で十二分です)とか言って出て行ったよ」
「またしても、総帥は、お一人で……」
「ラーは、そうゆう男だもん♪」
「何故、共に行かなかった?総帥に何かあったらどうするんのだ?」
フツフツと怒るオンリョウ。
「いや……ラーが、来るなって言ったんだよ」
笑顔の裏で困りきっているのが読み取れる。
「たとえ、そう言ったとしても無理にでもついて行くものだ」
「だから、ついて行こうとしたよ。そうしたら、ラーがマジな顔してエンボディを使い出したんだよ!」
オンリョウの表情に翳りをみせる。
「そして、(死にますか?)だよ!身の毛がよだったよ」
オンリョウは重ぐるしく言う。
「……そうだったか。苦労したな。」
さすがに労わりの言葉かける。
「凍てつく義侠軍?何それ?」
街道を進むタンクスとミステリオ。
「いくらド田舎だからって義侠軍くらいは知っているだろ普通」
「僕、子どもだからかな?そうゆう情報、入ってこないなぁ」
「凍てつく義侠軍はレジスタンスだ。」
「レジスタンス?」
「主に権力などに対する抵抗を行っている。しかし、凍てつく義侠軍は普通のレジスタンスと一味違う。抵抗どころか権力を打ち消そうとしている。よは革命だ。」
「革命家」
「インパルス委員会をこんなにしといて、ただで帰れると思ってねぇだろうなぁ」
ドゴンッ!!
廊下に繋がる扉が蹴破られる。会議室にゴツイ男が入ってくる。門番か。
「現れるのが遅かったですね」
「死人がでねぇと殺せねぇのよ」
ラーの表情が明らかに変わった。
「だが、まぁ、まさか、全員、殺すとは、思わなかったぜ」
「波動エンボディ。」
「スキルマンか。」
「当然です。スキルを使えない者は、相手になりません。」
「だよな、波動のパワー!」
「ハングリーカーペット」
ラーが両手を床につける。
「なっ!!」
すると、床から赤いカーペットが浮き上がる。身の危険を感じた門番は、そのカーペットから跳び降りようとするが、
シャ。バクッ!!
カーペットの向かい合う両辺から牙か生えて一気に男を噛む。跳ねた男は腹から喰いつかれる。
「ぎぁあああ!!」
カーペットは口を開く。男は口内に落ちる。
「う、うわぁ!!」
ゴクリ。ひとのみ。
カーペットは元の赤いカーペットに戻ると床へ染み込む。もう少しは腕の立つ方がいると思ったのですが、見込み違いのようですね。
「あまり、遅くなるとオンリョウの、お説教が長くなりますね。今回の一件で評議会の目を引いたなら結構ですが……!!」
ラーはとてつもないオーラを感じる。この殺気は、まさか…
「丁度、良かったの。お主に会いたかったのじゃ」
軍の最高位を与えられた。生ける化石。国士無双シャウエユウ。
今の今まで気配を消していたというのか。老人はおとぼけた態度で
話す。
「最近、巷で話題になっているの。小童の革命家が悪さを行っている上流階級を殺し回っているとな。」
見た目では、もう、ゆうに百歳を超えているように見える。眼差しは、常人のものではなかった。
「のぅ?凍てつく義侠軍。」
空気が凍った。呼吸するのが辛い。殺気に殺される。
「お主が、義侠軍のボスか?」
「ええ。ラー・デュローレと申します。」
「ラーか。神の名を授かったのじゃな。良い名前じゃ、それが、革命家とは、皮肉じゃの。」
今日はついていない。…けど、仲間を連れて来なくて正解だった。
「こガキが、よく、まぁ、ここまで、やりよったの」
部屋の惨状を見ている。
「ご用件は何でしょう?」
「お主は自分を正義と思っているか?」
「いいえ。思っていません。正義と真逆。不義です。」
「不義と分かっておるのに、それを、行い続けるか。開き直ってる分、余計に厄介だな。」
「光栄です。」
「じゃあ、殺されても文句は言えぬの」
「つまり死刑ですね」
シャウエユウの殺気が、さらに高まったようだ。
「私なんかに、かまっていて、いいんですか?バジリコルブッチの討伐を控えている筈です。」
「……お主、それを、どこで知った?」
鋭い眼光がラーに突き刺さる。
「貴方から知りました。」
「?」
ラーが真上を指差す。その先には巨大な目玉が浮遊していた。巨大な目玉(デビルアイ)の視線はシャウエユウを捉えている。
「いつのまに、」
あれは、エンボディか。大きな瞳の具現化。察するに相手の情報を透視するものじゃろ。
「牢に入れるのも考えていたのじゃが、……これは、生かしておけんの。」
老人が懐に手を入れる。これも、読まれているか。
シャ!!
懐がピカッと光る。数本のナイフがラーに向けて飛ばされた。時速150は、超えている。老兵と見て侮ってはいけない。
パパパン!!
ピストルでナイフを撃ち落とすが、一本のみが、 別の方向へ。
ザク!
エンボディした目玉に突き刺さる。
「これで、行動は、もう、読めれんじゃろ。」
デビルアイが消滅する。ラーはピストルをしまう。
「その型はサベルの作品じゃな。どうりで儂の投げナイフを弾く訳じゃ。」
ラーは、微動だにしない。
「しかけては来ないか。儂を倒す気はないのじゃな。飽くまで自衛か。儂が、諦めるのを待っていするか?」
「いえ。単なる様子見です。ベッティングルーレット。」
ドン!
巨大なルーレットが出現。またしても、エンボディか。門衛を倒した赤いカーペット、相手のプロフィールを透視する目玉、そして、このルーレット。この時点で、スキルは3つ。常人は2つが限界。しかし、儂と同じくエリートスキルマンなら、あと1つ持っていたとしても、おかしくないじゃろう。戦闘で重要な力、素早さ、防御力のどれかと推測するに、もはや奴の種切れ確実じゃろ。この程度のスキルマンが、どうして、ここまでの、殺戮が出来たのか。謎じゃ。それとも、まだ、奥の手を隠しているのか。第三奇才能力やゴットスキルを持っているのか。ルーレットがひとりでに回り始める。ルーレットか運の技だとしたら、止めるに越したことはないの。
「おりゃ!!」
ルーレットに飛び蹴りを入れるシャウエユウ。
バキン!!
盤は真っ二つ、もちろん動きは止まった。
「運を競う暇はないぞ。」
「ありがとうございます。」
爽やかにそう答えるラー。国士無双の反論の前に答える。
「勝負を蹴りましたね。貴方は賭けを降りた。ベットしない者に得るモノは何も、ありません。普通のギャンブルでは失うモノもありません。でも、これはスキル。貴方は勝つ可能を捨てた。言い換えれば幸運を落とした。」
「何が言いたい?」
「幸運を落とした貴方と幸運を落としてない私と差が生まれる。それは、勝敗の差。盤を壊した貴方は私に負ける可能性が上がった。ということになります。したがって私の運が上がりました。故に貴方を殺す可能性が増えました。」
「ふむ。運、如きでは儂を倒すことなぞ叶わんぞ。」