昨日は毎週定例の営業社員の現場ミーティングがありました。

一週間の売上の変動、営業活動の報告、攻めあぐねているクライアントに対する営業戦略を話し合う場として設けられているのですが、一週間という限られた日数の中では、やはり動き(進捗)のあるクライアントとないクライアントが出てきます。

当社には8月に入社した新入社員がいます。Aくん、30代、営業経験、業界経験なしというまさに未経験者歓迎という求人広告を見て応募してきた感じです。

当社では見込みのあるクライアントを見込=受注率80%以上、仕掛かり=受注率60%〜80%、白地=受注率60%未満と分けて、報告書上管理しています。

仕事は当然見込みの高い見込、仕掛かりに時間を割かれがちなのですが、ノルマに対して売上が足りていない場合や三ヶ月〜半年後を見越して営業活動をする場合に白地の案件にどうアプローチをするかが重要です。

先ほど紹介したAくんは、私と新規クライアントの開拓をしながら、昨年辞めた後輩社員のクライアントを引き継いで担当しつつ、先輩と主要クライアントを担当しています。

その彼が昨年辞めた後輩社員から引き継いだクライアントに訪問し、「特に具体的な話は出ませんでした。」と報告しました。

ここからが私とAくんの会話です。

私「え?何も喋ってないの?」
Aくん「いえ、そうゆうわけじゃないんですが…」
私「その報告だと、本当に行ったの?って感じるんだけど、Aくんが何を話して、お客さんが何を話したのか話してよ。」
Aくん「ほとんど雑談なので…」
私「なんで?良いじゃん!」
Aくん「年賀のノベルティのノートを渡したら食いついてくれて、喜んでもらえました。」
私「それで?」
Aくん「ノベルティにノートって良いですね、って話になったので、制作秘話を話したら会話が盛り上がりました。」
私「何だ、ネタあるじゃん。」

となりました。彼は「なぜ雑談なので…」と報告内容から切り捨ててしまったのでしょうか?それは雑談と商談を線引きしているからです。

逆に、私は雑談と商談の線引きがあまりありません。私の中では雑談も商談も含めて打ち合わせやミーティングという感覚です。

ここで、タイトルの「アンテナの張り方」に戻ると、お客さんと距離を詰めて親密な関係になるためのヒント、仕事に繋がるヒント、悩みや愚痴を引き出すヒントがどこにあるのか?何がキーワードなのか?常にアンテナを張っています。

昨日、Aくんがノートの話でお客さんと盛り上がったと報告したケース、私なら…

【雑談】
私「Bさん(=お客さん)は普段どんなノート使ってるんですか?私は無印のノートをずっと使ってるんです。使いやすくて、馴染んじゃったんで変えるに変えられないんですよね。」
Bさん「私も無印なんです。分かります!無印良いですよね!」
私「そうですよね!ペンや他のステーショナリーも無印なんですよ〜!やっぱ、良い物は良いですね!」

などと盛り上がってから…

【商談】
私「実は今日お持ちしたこのノート、良い紙使っているんです。表紙は某旅行ガイドブックの表紙と同じ紙で、中面のノートの部分は書店で本を買う時にレジで抜き取るしおりみたいな紙あるじゃないですか?あの紙を使ってるんですよ!」
Bさん「へぇ?でも、それじゃあ、お高いんじゃないですか?」
私「それがそうでもなくて、印刷する時って絶対紙を使い切れずに余らせてしまうんです。機械の性能上必ず余ってしまうんですが、それを今までは捨てていました。それをノートに使えば勿体無くないし、コストも抑えられると…」
Bさん「へぇ〜、そのクオリティでそのお値段なら良いですね!」
私「よくお分かりで!やっぱり、無印など良い物を使ってる方は分かってらっしゃる!」

なんて感じで雑談と商談を繰り返していきます。

すると、気付いたらお客さんのほうから「ノベルティで他にどんなのがあるの?」とか、「いついつ展示会に出るからノベルティどうするか上司に相談しなきゃ」とか、「今、どんなノベルティが流行ってるの?」と言ったこちらが欲している情報が自然と口をついて出てきます。

そこで、「当社で何かお力になれる事はありませんか?」と切り出して、宿題をもらい、次回訪問の口実を作るわけです。

これは別に特別な話でもなく、世の中に星の数ほどある営業マニュアル的な本でも紹介されている手法です。

ですが、実践するにはポイントがあって、自然な流れで雑談と商談を切り替えないといけない事と、トークのリズムやペースを乱してはいけない事です。自然な流れで雑談と商談を繰り返していけば、お客さんは気付かないうちに商談や打ち合わせになっていたと感じるのです。

もう一つは、自分の話ばかりしないという事です。ごく自然なキャッチボールを心掛けないとコミュニケーションが崩壊してしまいます。

そして、今日のタイトルにある「アンテナの張り方」が重要です。

Aくんは「無印とノベルティ提案が結びつくとは思いませんでした」と言っていました。

彼は雑談にアンテナを張っていなかったのですね。

私はそこにヒントがあると考えているからアンテナを張っています。

広告代理店時代に、私と同様に東京から縁もゆかりもない大阪に転勤させられた担当者さんがいらっしゃいました。

そのクライアントは一部上場企業で、業界でもトップランカーの大企業の広報部長でした。

似た境遇という事もあってか、その担当者さんは私を大変可愛がってくれました。

ある日、「休みの日は何をしてるんですか?」と聞いてみたら、「単身赴任だし、1人でJリークを見に行ってるよ。」とおっしゃいました。私は小学校から高校までサッカーをやっており、やるのも見るのも好きだったので、「是非連れていって下さい!大阪来てからまだ見に行けてないんです!」とお願いし、何度かご一緒させていただきました。

すると、こんな事を言われて仕事がいただけたのです。

「ここまでしてくれる営業マンはいないから、君と仕事がしたい。」

と。

不思議な感覚でしたね。

その会社は長年、業界トップの今話題のあの会社にしか広告を出していなかったのですから。

その後、私が退職するまで不定期にお仕事をいただけるようになりました。

この時はまだ経験も少なく、この経験を自分の営業スタイルに落とし込むところまでいけませんでしたが、今、この経験を活かした営業スタイルを構築しているところです。

無駄と思えるアンテナも活きる事がある。

そんな思い出話でした。