私はIT業界に約20年いました。
汎用機のPGから、最後はプロジェクトを仕切るまでになりました。
最後は、と書いたのはもう二度とIT業界に身を置く意志はないという意味です。
あんないい加減で適当な業界もそうないです、はい。
ITというのは、「いい加減」「適当」のイニシャルですからね、実際。
そもそも日本にはITなんてものはありません。
みーんな外国の後追い、二番煎じ。
その癖、手続きだけは旧態依然としたプロセスに則らなければならないから
IT従事者は、ITエンジニアなどと呼ばれていても、実際はIT土方です。
いや本物の土方の人の方が仕事の達成感は上でしょう。
日本のシステム開発会社の大部分は
自分達で何かを生み出して、シリコンバレーをぶっ潰す!なんて気概はありません。
官公庁から依頼されるお上の仕事や、金融機関の仕事が半分以上です。
要するに下請けです。
そこに自社社員を派遣して、経営者は1人数十万の上前跳ねるピンハネ商法がまかり通っています。
請負といいながら、派遣状態であったことが「偽装派遣」として問題になったのは今から数年前。
狡賢い奴はいるもので、偽装派遣契約を業務委託契約(SES)に切り替えています。
このSESがまた曲者でしてね。
見事に労働基本法などの方の網の目をかいくぐった法律スレスレの契約なわけです。
つまりは、IT従事者を派遣並みの低賃金で働かせ、責任は請負契約と同様にするというアコギなやり方。
システム開発会社にとっては、社員がより劣悪な環境に追い込まれて苦しんでいても何もしません。
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そうして心や身体を壊して現場から離れていった仲間や先輩、同僚がたくさんいます。
心臓を病んでしまった私(現在通院中)も、その一人と言っていいでしょう。
そんなシステム開発会社は、一丁前に社員には愛社精神を求めます。即ち忠誠心です。
社員を日雇い人夫以下の扱いをしておきながら、忠誠心を求めるという何とも図々しい神経の持ち主もいるものです。
そんなのIT業界だけじゃない、殆どの日本企業がそうだ!という声も聞きます。
人並みの報酬を受けられるIT業界の方がマシだという人もいます。
ただ片方では「エンジニア」などと持ち上げ、現実は「日雇い人足」扱いでは誇りを保つことは出来ません。
私の尊敬する会社の経営者がいます。
その業界では国内でもトップシェアの会社なのですが、その会社はテレビはおろか新聞や雑誌にも一切広告を出しません。その方曰く「無駄だから」だそうです。
その会社は社員一人一人にパソコンを与えません。課に一台ずつ置いているだけです。かなり旧式のオフコンでした。(もうメーカーのサポートも切れているような)
理由は「システム化しても別に仕事が早くなる訳じゃないし、投資に見合った利益が期待できないから」だそうです。
注文は主にFAXと郵便で受けるそうです。
そうすれば、注文内容が紙という現実の媒体として残るので間違いが減るのだそうです。
その経営者は言います。
「社員には人並み以上の生活をさせる」→「モチベーションが上がる」
「朝の始業は早めにして残業させない」→「電気代が節約できて、しかも社員は余暇を楽しめる」
「無駄なものに金を出すなら社員の福利厚生に金を使う」→「愛社精神はそこから生まれる」
トドメに
「最初にエネルギーを与えなければ機械だって人間だって動かないよ」
その時、私はITコンサルタントの立場で何とかしてその会社をIT化させようと苦心していましたが諦めました。
完全にその経営者の考え方に負けました。
最高の企業の社会的責任(CSR)は「社員にどれだけ還元したか」が目安であるというその経営者の確信を持った姿に、ある種感銘を受けました。IT業界の実態に疑問を持ち始めていた時期と丁度符合します。
その会社の離職率は、過去10年で片手に余るほどだそうです。
それもどうしても家業を継がなければならない人、交通事故で他界された人、定年退職を全うした人を入れてです。
私が拝見した限り、その会社で働く社員の姿は皆凛々しく、不貞腐れているような無駄な社員は一人もいませんでした。皆、自分の仕事に責任と誇りを持って働いていました。まさに匠です。
社員に払う報酬が、無駄なコストだと勘違いしている企業経営者で溢れる日本という国。
そんなことでは匠な精神など養えませんよ。
あ、そんな精神なんかいらないんでしたね。
目先の利益だけ追いかけてれば良いんだから楽で良いですね。
社員を大事にしない会社がつまらないイベントや催しにジャブジャブ金を使ってCSRだとかほざいているのを見てちゃんちゃら笑いが止まりません。
社員は経営者にとって「鵜飼いの鵜」かもしれませんが、社員の家族や親戚、友達は消費者なんだぜ!
そんな簡単なことも分からねぇ経営者なんかいらねぇよ。
というのが私の考えです。
忠誠心を得たいなら、それに見合った生活をさせることが必要なんだぜ!
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