Hashihaka-kofun zenkei-2

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箸墓古墳(はしはかこふん)は、奈良県桜井市にある全長278メートルの前方後円墳です。第7代孝霊天皇皇女の倭迹迹日百襲姫命(やまとととびももそひめ)の墓に治定されています。

 

邪馬台国畿内説論者は倭迹迹日百襲姫命を邪馬台国の女王卑弥呼と考え、箸墓古墳を卑弥呼の墓と考えています。

 

当初、邪馬台国畿内説論者は箸墓古墳の築造年代を西暦250~300年頃と考えていました。卑弥呼の死亡年が西暦247年~248年なので、それに合わせたのではないかと思われます。

 

しかしその後の研究で、箸墓古墳の築造年代は西暦300~350年頃ではないかと考えられるようになりました。古墳の築造年代の算定には、いくつかの測定方法があります。

 

1、古墳の形。

2、大きさ。

3、埴輪、土器の種類。

4、棺の形式、材質。

5、石室の有無、形式。

6、副葬品の内容。

7、放射性炭素14年代測定法。

8、年輪年代測定法。

 

以上の1~6までの測定法で箸墓古墳の築造年代を算定した結果、箸墓古墳の築造年代は西暦300~350年頃と考えられるようになりました。この測定結果は長らく常識と考えられていました。

 

しかし少し前から、邪馬台国畿内説論者の間で、やはり箸墓古墳の築造年代は西暦250年頃ではないかと主張する者がでてきました。その理由は2つあります。

 

放射性炭素14年代測定法と、年輪年代測定法によって新たに出された次の測定結果が根拠になっています。

 

放射性炭素14年代測定法で箸墓古墳の墳丘に飾られていた埴輪、土器を調べた結果、西暦250年頃のものと判明した。

 

また年輪年代法で、大阪府の池上曽根遺跡の大型高床式建物跡から出土した柱を調べた結果、紀元前50年頃に建てられたという結果が出た。

 

池上曽根遺跡の大型高床式建物は、出土した土器の年代測定から西暦50年頃の築造と考えられていたので、それより100年も前に作られたものだと判明した。

 

この池上曽根遺跡の測定結果をもとに、土器の年代を100年古く設定し直す事になった。それに伴い、それまで発見されている多くの遺跡を100年古く設定し直す事になった。箸墓古墳の築造年代は300~350年頃とされていたので、250年頃に変更された、という訳です。

 

しかしこの放射性炭素14年代測定法と、年輪年代測定法による年代測定結果、それに伴う土器年代の変更には大きな問題点があります。

 

放射性炭素14年代測定法は古い時代の遺物の測定においては、50~100年の誤差が出ることがあるので、あまり信頼できません。土器による年代測定も研究者によって50~100年の誤差が出る事が知られています。

 

年輪年代測定法は割と精度が高いので信用できますが、それにしても池上曽根遺跡の大型高床式建物の測定結果を根拠に、それまで発見された遺跡の年代をほとんど、一律100年古く設定し直すというのは、あまりに大雑把すぎる計算です。

 

古墳(墳丘墓も含む)を大別すると1世紀、2世紀、3世紀、4世紀、5世紀に作られたものがありますが、

 

このうち5世紀に作られた古墳に関しては、100年古く設定し直すことは行われません。5世紀の古墳の年代測定に関しては、充分な考古学的資料があるため信用できるので、年代測定結果に誤りが少ないとされているからです。

 

それに対して1~4世紀に作られたと考えられている古墳は、考古学的資料が不十分なため、年代測定結果が確実とは言えません。

 

そこで1~4世紀の古墳に関してだけ、一律100年古く設定し直す事になります。ところがそうすると、4世紀に作られた古墳が一つも存在しないと言う変な結果になります。

 

これは大きな矛盾であり、一律100年古く設定し直すという行為は大雑把すぎて無理があると言わざる得ません。

 

また現在4世紀と推定されている古墳の多くは竪穴式石室を持っています。箸墓古墳も墳丘の裾から玄武岩の板石が見つかっているので、竪穴式石室が作られていた可能性が高いと考えられます。

 

魏志倭人伝には卑弥呼の時代の倭国の墓は石室(槨)がないと記されています。竪穴式石室を持つ4世紀の墓を100年古く設定し直し3世紀の古墳とすると、魏志倭人伝の「倭国の墓には石室がない」という記述と矛盾する事になります。

 

結論を言えば、箸墓古墳の築造年代を放射性炭素14年代測定法と、年輪年代測定法の結果から、西暦300~350年から西暦250年に引き下げるのには無理があると思います。

 

箸墓古墳の正確な築造年代は今後の研究成果を待つしかないと考えます。箸墓古墳の被葬者は卑弥呼なのかそうでないのか、今だに謎という事です。