今、福祉業界でも人手不足は深刻な問題の一つです。

 専門職としての知識や技術の教育だけでなく、人材定着の教育はもはや必須事項になっています。
 しかし、この問題を話していると、決まって出てくるワードが、お金が「ない」、時間が「ない」、やり方がわから「ない」です。

 私もかつてはバウムの定着率の低さに危機感を感じ、何とかしなければいけないともがきながら、やはり先述の3「ない」を嘆いていた経営者の一人でした。

 しかし、そんな時に出会った方(今の私の経営の師匠)に言われたある言葉が、後の私の経営者人生を180度変える事になります。

 その言葉とは、

 「あなた達は自分の子供には沢山の時間とお金を掛けますよね?では、なぜ自分の会社の社員や部下には同じように時間とお金を掛けようとしないのですか?」

 「我が子と我が社の社員(部下)では違いますか?」

 「でも、あなた達が我が子に沢山の時間とお金を掛ける事が出来るのは、今あなた達の社員(部下)が働いてくれているお陰ですよね?」という内容でした。


 もちろん、私はまだ人の親になった経験はありませんが、この話はとても衝撃的でした。

 考えてみれば、私が経営者として好きな事を出来るのは、現場で社員が頑張ってくれているお陰です。

 もし、社員が居なくなれば、経営者としての私の立場には何の意味もなくなります。
 この事は、幹部にもいつも伝えています。部下が居なくなれば、幹部も幹部ではいられません。

 だからこそ、私は多い時で週に6日、少なくとも週に4日は社員と懇親会やイベント等で時間を共有します。

 それだけではありません。

 毎年経常利益の七割を教育費に充てています。

 この話をすると、多くの人は「自分には無理だ」とか「そんなに懇親会がある会社は嫌だ」と言います。

 しかし、実際バウムは年間定着率九割を実現しています。

 社員のほとんどは「この会社で働く事が出来て良かった」と言ってくれます。

 社員の頑張りのお陰で、昨年度は中途採用の募集は一切しませんでした(正確に言えば一度だけ行いましたが、それは法人が大きくなって管理部門が忙しくなったので、事務員を補充しようとしました)。

 さらに毎年10名弱の新卒社員が入社し、定着してくれます。

 断言しますが、社員に時間とお金をかけて、掛け過ぎという事は一切ありません。
 かければかけるほど定着率は上がります。定着率が上がれば、自ずとサービスの質も向上します。当然です。社員全員が同じ価値観の下、経験を積んでいくのですから。社員が入れ代わり立ち代わりする会社より、実力が付くのは誰が見ても明らかです。
 
 では、経営者が陥る3「ない」はどのようクリアすればよいのでしょう?

 まず、時間がないに関して。

 答えは「IT化」です。

 バックヤード(お客様に見えない部分)を徹底的にIT化し、業務の効率化を図ります。

 バウムでは、スケジュールや稟議、情報共有の為の専用グループウェアを活用したり、スピードが要求される情報の横展開等にクラウド型のチャットシステムを取り入れています。

 さらに、これらの仕組みをいつでも、どこでも使いこなすために、全社員にiPhoneを支給しています。

 当然、これらを使いこなすためのIT研修も随時行っており、今では自分の携帯電話も持った事が無い七十代の職員も、iPhoneで情報を発信しています。

 これらの取り組みが評価され、昨年度「中部IT経営力大賞 奨励賞」を受賞しました。

 徹底したバックヤードの効率化のお陰で、従来より平均して一人当たり1時間/日以上の時短に成功しました。その時間を有効に使い、研修や勉強会等を行っています。
 
 では、お金がないに関して。

 答えは、「無借金経営からの脱却」です。

 多くの経営者だけではなく、社会人の皆さんも勘違いされています。個人の借金は悪ですが、会社の借金は進んで行うべきです。

 経営において、「現金」があるのとないのとでは、選択肢・可能性が全く違ってきます。借金をしてでも現金さえあれば、教育にもインフラにも投資が出来ます。

 投資が成功すれば、その何倍もの利益が返ってくるので、借金を返す事は出来ます。
 実際、バウムは教育とインフラに投資をして、売上げが5年で260%アップしました。

 最後に、やり方が分からないに関して。

 これは簡単です。

 成功しているところから学べばいい。

 私も他社で成功している事例を真似て、ここまで来ました。

 ここでは、とても簡潔に経営者や幹部がぶつかる3「ない」の解決策を提示しました。

 実際は、そんな簡単ではありません。

 私も実に7年越しに学びを重ね、それでもまだまだ学び足りないと感じています。

 ここで、私が経営の先生から言われたもう一つの言葉を書いておきます。

「部下の誕生日も好きな食べ物も、趣味も子供の名前も知らないくせに、『私についてこい』というのは、トップ(上司)の傲慢以外の何物でもない。部下についてきて欲しいと思うのならば、まずは部下の話をしっかり聴き、知ろうとする姿勢を部下に示しなさい。それが出来ないトップ(上司)の会社で永く働きたいと思う社員はいません」。