『佐山暴走編:ムッツリ、ついに漏れる』
十二月上旬――師走の足音が近づく中、社外Bチームの空気には微妙な緊張が漂っていた。
サカッチの再処分により、営業力は一時的に縮小。
その分、ミーヤと佐川、そして――佐山義人の技術サポートがより重視されるようになった。
だが、この“ムッツリスケベ”こそ、最も扱いづらい男だった。
『新規案件の同行』
その日、ミーヤと佐山は、取引先の新規要件ヒアリングに出向いていた。
クライアントは若手の女性課長が中心で、ミーヤと年齢が近いこともあり、和やかな空気が流れていた。
「では、業務フローについては御堂さんからのご説明でお願いします」
「はい♡ こちらのシステムを活用すれば、現状のフローがこう変わりまして……」
にこやかに説明を進めるミーヤ。
その隣で、佐山はノートPCに目を落としながら、時折チラ……チラ……とミーヤの太ももを見る。
(……うお。今日のスカート、短っ。てか見えそ……うわ……黒……レース……)
表面は一切動じず、目線も逸らす素振りをしている。
だが、彼の内心は完全に“崩壊”寸前だった。
(やべえ。最近ミーヤさんの“攻撃”がマジで過激になってる気が……これは試されてるのか?)
『Slackにて』
帰社後、プロジェクトチャンネルに投稿された佐山のメッセージ。
「御堂さん、本日も完璧でしたね。ミニスカ×白シャツコンボ、まさに勝ちパターンでした」
……数秒後、全員が固まった。
「……ん?」「え?」「これは……誤爆か?」
即座に早乙女がDMを飛ばす。
「佐山さん、先ほどの発言、削除をお勧めします」
「あ゛ーーーーーーーーっ!!!!!違います!!!すみません!!!メモの誤送信です!!!!」
『女子社員チャンネル炎上』
#女性のつぶやき チャンネルがざわつく。
「佐山さん、あれマジだったの……?」
「誤爆ってレベルじゃなくない?」
「しかも“勝ちパターン”って何」
ミーヤは何も発言しなかった。
ただ、沈黙のまま全メッセージに目を通していた。
その夜、Slackにて。
「本日、誤って不適切な内容をチームチャンネルに投稿しました。深く反省しております」
「御堂さんを含む関係各位にお詫び申し上げます」
佐山義人
『ミーヤの対応』
翌朝、ミーヤがSlackに投稿。
「佐山さん、昨日は驚きましたが、謝罪を受け止めます。ただ、業務中は“役”と“本音”を分けてくださいね♡」
「勝ちパターンは、案件成立のことを指すと信じています♡」
:smiling_imp: :warning: :sparkles:
一見冗談めいたその返信は、冷えた刃のような鋭さを孕んでいた。
『早乙女、動く』
昼休み、早乙女が佐山を呼び出した。
「佐山さん。あなたの“問題”は、言葉そのものではない」
「……はい」
「あなたの“我慢してる”ムッツリが、どんどん漏れてきてる」
「……ぐっ」
「御堂さんは、あなたのような人間に一番敏感です。彼女を試すような態度は、あなた自身を損なう」
佐山は顔を真っ赤にしながら、黙ってうなずいた。
『技術的には有能』
だが、皮肉なことに――
佐山の手がけたデータ連携ツールは、クライアント側で“完璧”に動作していた。
早乙女も、部長も認めざるを得ない成果だった。
「……仕事は出来るのよな、あいつ」
「でも、心のフィルタがスカスカすぎて、抑えが効いてない」
ミーヤは、プロジェクトチャネルに静かに記した。
「佐山さんのツール、本当に助かってます。……それだけに、言動がもったいないです」
その文に、佐川が続いた。
「俺も同感。自爆しなきゃ普通に評価される人材」
『喫煙所での独白』
佐山が一人、喫煙所で煙草を吸いながら呟いた。
「俺、ミーヤさんに、見透かされてたのかもな……」
サカッチがそっと隣に現れた。
「おう、久しぶりだな、バカやった仲間」
「サカッチさん……」
「俺もな、昔“役に負けた”んよ。自分で作ったキャラにハマって、自爆した」
「……」
「でもな、あいつ(ミーヤ)は、こっちの“生身”見抜いてるぞ」
佐山は黙って煙を吐いた。
(……だから、怖いんだよ)
『プロジェクト再評価』
週末、早乙女がSlackに再び投稿した。
【報告】
佐山義人の本プロジェクト残留を決定。
ただし、社外イベント・同席案件については別メンバーを優先配置とする。
静かな“評価”と“処分”。
佐山は、静かにうなずき、Slackで短く返信した。
「了解しました。引き続き技術面で貢献します」
そこに、ミーヤが一言。
「ありがとうございます♡ 今度こそ、“勝ちパターン”を更新しましょ♡」
:skull: :clap: :sparkles:
佐山は、それを見て初めて笑った。
『静かな嵐の前』
社外Bチームには、再び均衡が戻ったように見えた。
だが、その裏で――
社内の別部門では、新たな“爆弾”が静かに火を灯していた。
(御堂美夜……俺の前では、そうはいかないぞ)
ミーヤがまだ知らない“本当の敵”が、静かに動き始めていた。
