今日は平成26年度 第21問です。農地法について、です。
農地法(以下この問において「法」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1.農地について法第3条第1項の許可があったときは所有権が移転する旨の停止条件付売買契約を締結し、それを登記原因とする所有権移転の仮登記を申請する場合には、その買受人は農業委員会に届出をしなければならない。
2.市街化区域内の農地について、耕作の目的に供するために競売により所有権を取得しようとする場合には、その買受人は法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
3.農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるために、自己所有の農地に抵当権を設定する場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
4.山林を開墾し現に農地として耕作している土地であっても、土地登記簿上の地目が山林であれば、法の適用を受ける農地とはならない。
■■全体解説
農地法ついては、農地の取引や、農地を農地以外のものにする場合に、
許可や届出がいるのかいらないのか、というのが宅建試験で問題になります。
→農地法第3条、第4条、第5条が問題に出ます。
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[農地法の目的](農地法第1条)
国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、
【農地を農地以外のものにすることを規制するとともに】
農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、
及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、
耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、
もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。
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以下、宅建試験に必要な部分の要約、抜粋
【第3条関連】
[農地又は採草放牧地の権利移動の制限]
農地又は採草放牧地について
所有権を移転し、
又は
地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、
【当事者】が【農業委員会の許可】を受けなければならない。
※この許可を受けずにした行為は、効力を生じない!
→例外がありましたね?
時効による農地の取得は、農業委員会の許可は不要です。
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[例外→許可不要の場合]
・権利を取得する者が、国や都道府県の場合。
・相続、遺産分割、離婚による財産分与により権利を取得する場合。
※他もあるが、まず出題されない。他の法律や政令に基づいて権利を取得する場合。
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【第4条関連】
[農地の転用の制限]
農地を農地以外のものにする者は、
政令で定めるところにより、
都道府県知事の許可
※(その者が同一の事業の目的に供するため
4ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする場合、
農林水産大臣の許可)
を受けなければならない。
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[例外]
・市街化区域内にある農地を、
(政令で定めるところにより)
あらかじめ農業委員会に届け出て、農地以外のものにする場合
→許可ではなく、事前に届出。
※他はまず出題されないが、
・農地法第5条の許可をもらっている場合
・国や都道府県が、公益的な施設のために農地以外にする場合
公益的な施設のため以外に転用するときは、
国又は都道府県と都道府県知事との協議
(その者が同一の事業の目的に供するため四ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする場合には、農林水産大臣との協議)
が成立することをもつて
許可があつたものとみなす。
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【第5条関連】
[農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限]
【当事者】が【都道府県知事の許可】
(これらの権利を取得する者が同一の事業の目的に供するため四ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について権利を取得する場合には、農林水産大臣の許可)
を受けなければならない。
[例外]
・市街化区域内で、あらかじめ農業委員会へ届出をした場合。
→よく出る
・国や都道府県が、公益的な施設のために農地以外にする場合
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農地をちゃんと農地して維持する目的、がある。
なので、農地を農地として取引する場合は、ちゃんと農地として維持するのか審査するため、許可がいる。
農地を農地以外のものに転用する場合も、農地として維持しないことになるため、原則として許可が必要。
ただし、「市街化区域」においては、もともと市街化していくところなので、農地を農地以外のものに転用するとしても、許可は不要で、届出だけでよい。
■■選択肢解説
【1】農地について法第3条第1項の許可があったときは所有権が移転する旨の停止条件付売買契約を締結し、それを登記原因とする所有権移転の仮登記を申請する場合には、その買受人は農業委員会に届出をしなければならない。
→誤り
むむむ。これ、書き方がおかしいですね。
・農地法の許可があったときは、
→既に許可がある
・「農地法の許可があったときは所有権が移転する旨」の停止条件付売買契約
→許可はまだない。
勘違いしてる参考書も多いですが、
農地法の許可が既にある、とすると届出する必要がないし、誤り。当たり前過ぎる。
出題者は、後者の
「農地法の許可を停止条件とする売買契約」
という意図で書いたと思われます。
でないと、なんの停止条件?とか、既に許可あるじゃん、とかなるので。
覚えるべきところは、
「農地法の許可を停止条件とした売買契約に基づいて、買主を保全するために仮登記ができる。」
という点。この選択肢ではあたり前のように書いてありますが。
まずここをおさえること。
その次に、農業委員会へ届出するのは、農地法第4条、第5条の市街化区域内での農地を農地以外のものに転用する場合です。
今回はそういう内容は書いてありませんが、農地法第3条の許可を停止条件としている限り、実際に所有権が移転するには、農地法第3条の許可が必要になるわけです。
よって、農地法第4条と第5条の規定による届出は不要です。
また、それ以外でこの選択肢のケースで別の規定で届出がいるのか?というと、そのような規定はないので、これまた不要です。
よって、この選択肢は誤り。
とまぁ、勘違いしてても、ちゃんと理解しても、誤りの選択肢には変わりないんですけどね…
//////////
【2】市街化区域内の農地について、耕作の目的に供するために競売により所有権を取得しようとする場合には、その買受人は法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
→誤り
「農地を農地として利用する目的」で、所有者が変わる場合は、
農地法第3条第1項の許可が必要となる。これは、競売であっても必要。
※市街化区域での許可不要、代わりに届出が必要、という例外は、
農地を農地以外のものにする目的で取引がされる場合である。
この場合は、農地法第5条の届出が必要となる。
/////////
【3】農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるために、自己所有の農地に抵当権を設定する場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
→正しい
農地法第3条の許可が必要となるのは、所有権の移転の他、その農地を利用することとなる権利を設定するときである。
(地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利)
これは、農地法が農地としてちゃんと耕作するのかを管理するため。
抵当権は、その設定された対象物について使用収益するわけではないので、農地法第3条の許可は受ける必要がない。
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【4】山林を開墾し現に農地として耕作している土地であっても、土地登記簿上の地目が山林であれば、法の適用を受ける農地とはならない。
→誤り
農地法の許可や届出の対象となるのは、登記記録上の地目だけでなく、現況でも判断する。
■■あとがき
農地法も毎年出題されます。
農地法は、
届出、許可の要不要をしっかりおさえておきたいとこです。
が、少なくとも
『農地としてちゃんと管理するための法律』
・国や都道府県が、公益的な施設のために農地以外にする場合
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農地をちゃんと農地して維持する目的、がある。
なので、農地を農地として取引する場合は、ちゃんと農地として維持するのか審査するため、許可がいる。
農地を農地以外のものに転用する場合も、農地として維持しないことになるため、原則として許可が必要。
ただし、「市街化区域」においては、もともと市街化していくところなので、農地を農地以外のものに転用するとしても、許可は不要で、届出だけでよい。
■■選択肢解説
【1】農地について法第3条第1項の許可があったときは所有権が移転する旨の停止条件付売買契約を締結し、それを登記原因とする所有権移転の仮登記を申請する場合には、その買受人は農業委員会に届出をしなければならない。
→誤り
むむむ。これ、書き方がおかしいですね。
・農地法の許可があったときは、
→既に許可がある
・「農地法の許可があったときは所有権が移転する旨」の停止条件付売買契約
→許可はまだない。
勘違いしてる参考書も多いですが、
農地法の許可が既にある、とすると届出する必要がないし、誤り。当たり前過ぎる。
出題者は、後者の
「農地法の許可を停止条件とする売買契約」
という意図で書いたと思われます。
でないと、なんの停止条件?とか、既に許可あるじゃん、とかなるので。
覚えるべきところは、
「農地法の許可を停止条件とした売買契約に基づいて、買主を保全するために仮登記ができる。」
という点。この選択肢ではあたり前のように書いてありますが。
まずここをおさえること。
その次に、農業委員会へ届出するのは、農地法第4条、第5条の市街化区域内での農地を農地以外のものに転用する場合です。
今回はそういう内容は書いてありませんが、農地法第3条の許可を停止条件としている限り、実際に所有権が移転するには、農地法第3条の許可が必要になるわけです。
よって、農地法第4条と第5条の規定による届出は不要です。
また、それ以外でこの選択肢のケースで別の規定で届出がいるのか?というと、そのような規定はないので、これまた不要です。
よって、この選択肢は誤り。
とまぁ、勘違いしてても、ちゃんと理解しても、誤りの選択肢には変わりないんですけどね…
//////////
【2】市街化区域内の農地について、耕作の目的に供するために競売により所有権を取得しようとする場合には、その買受人は法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
→誤り
「農地を農地として利用する目的」で、所有者が変わる場合は、
農地法第3条第1項の許可が必要となる。これは、競売であっても必要。
※市街化区域での許可不要、代わりに届出が必要、という例外は、
農地を農地以外のものにする目的で取引がされる場合である。
この場合は、農地法第5条の届出が必要となる。
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【3】農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるために、自己所有の農地に抵当権を設定する場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
→正しい
農地法第3条の許可が必要となるのは、所有権の移転の他、その農地を利用することとなる権利を設定するときである。
(地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利)
これは、農地法が農地としてちゃんと耕作するのかを管理するため。
抵当権は、その設定された対象物について使用収益するわけではないので、農地法第3条の許可は受ける必要がない。
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【4】山林を開墾し現に農地として耕作している土地であっても、土地登記簿上の地目が山林であれば、法の適用を受ける農地とはならない。
→誤り
農地法の許可や届出の対象となるのは、登記記録上の地目だけでなく、現況でも判断する。
■■あとがき
農地法も毎年出題されます。
農地法は、
届出、許可の要不要をしっかりおさえておきたいとこです。
が、少なくとも
『農地としてちゃんと管理するための法律』
というのを意識すると、典型的な出題じゃない問題が出ても、解きやすいと思います。