先週『映画祭TAMA CINEMA FORUM』に行ってきた。「行ってきた。」と当然のように言われてもなんのこっちゃかも知れない。僕も今年初めて知ったイベントだから気持ちはよくわかる。


ということで早速ホームページを開いて「映画祭について」という項目を見てみよう。以下の通りである。

『映画祭TAMA CINEMA FORUMは、東京都多摩市内で開催される、映画ファンを中心とした市民ボランティアによる映画祭です。毎年、国内・海外の話題作を中心とした映画上映や、監督・出演者をはじめとした様々なゲストをお招きしてのトークイベントなど幅広いプログラムを開催しております。

2000年からは、"日本映画界に新風を送り込む新しい才能の発見"を目的とする中・長編コンペティションTAMA NEW WAVEを開始。また、2009年には、"明日への元気を与えてくれる・夢をみせてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰"するTAMA映画賞を創設し、映画ファンと映画製作者とをつなぐ交流の場として注目を集めております。』


つまり町ぐるみで行う映画ファン主催の日本映画イベントということですね。なんて良いイベントなんでしょう。


多摩市の市民ホールなど3つの会場を使って映画上映会やイベントを行なっていて市民イベントとしてはなかなかに豪華。映画ラインナップも充実している。






それじゃあ僕はこれだけのラインナップの中から何を観に多摩市まで来たかというと。
 

『シャークネード  ラストチェーンソー』

邦画じゃねえじゃん。

もはや市民権を得ているといっても過言ではない『シャークネード』シリーズ。その最終作が上映され、かつ『サメらを止めるな!』という反骨精神溢れるトークが行われるなら行くしかないでしょう。

あ、する必要はないと思うけど一応『シャークネード 』の説明をしておくとしよう。


『シャークネード』は2013年に発売されたテレビ映画。平和なビーチに凶暴なシャークの大群が現れる!ビーチは血まみれ地獄で阿鼻叫喚!と普通のサメ映画のように始まる今作だがそのサメの群れに巨大なトルネードがぶつかるところから何かがおかしくなる。

トルネードは上陸ついでに海上の全てのサメを巻き上げてしまう。巻き上げられたサメはもちろんトルネードと共に宙を舞いながらいずれは地上へ落下する。そのサメの落下地点に都合よく人がいて(というか明らかに人を狙ったサメが飛んでくる)地上でもサメの脅威にさらされるという大パニック映画である。

よくあるジョーズにあやかったゲテモノサメ映画(例:メガシャークvsジャイアントオクトパスなど)なのだが発売とともに物凄い人気を得たため毎年続編が作られる有様に。そして6年目すなわち6作品目の最終作『シャークネード ラストチェーンソー』のTAMA CINEMA FORUMで行われることとなったのである。



会場はデパートの屋上の市民ホール。会場前のホワイトボードには必要最低限の情報と可愛いイラストが書かれていた。とても味がある。さすがチケット1200円。

会場の中に入ると大体2割ほど席が埋まっていた。僕が早く着きすぎた訳ではない。だって5分遅刻したんだもの。まさか自分の乗ってる電車が目的地に到着しない電車だとは思わなかったのだ。

それなのに座席に大変余裕があるどころかまだ何も始まっていない。町イベントここに極まれりだ。


結果オーライよかったよかったとゼーハーしながら思っているとヌルッと司会の「中野ダンキチ」さんが登場。サメイベントに多数出演し、「サメンテーター」というおそらく他に誰も持たないであろう肩書きを持つ凄い人らしい。


ちなみにもう1人の司会の中野将樹さん(芸術家や役者などいろいろやってる方。一般人枠。)は遅刻らしい。実に町イベント。
 
映画の前にダンキチさんが用意した「シャークネード」シリーズ6作品の予告編を鑑賞。6作品も続いたシリーズの予告編を観て、「こんなバカな映画をよく6年も続けたな」としみじみ思いました。

予告編を全部見た後は間髪入れずに「シャークネード ラストチェーンソー」上映開始。わくわくもんだ。


上映終了。主人公たちの時代に起きたサメ台風地獄をなかったことにするために、ジュラ紀やアーサー王の時代や西部開拓時代に発生したシャークネードを消滅させながら歴史を改編させていく物語だったとは。過去作で死んでいった仲間たちと力を合わせて戦っていく展開は非常に胸熱だった。未来で進化を遂げたメタルシャークが出てきた時はひっくり返った。

15分の休憩後、ゲストの「サメ映画ルーキー」さんによる「サメ映画の辿った歴史」についての講義が行われた。「サメ映画ルーキー」さんは1日1本、サメの出てくる映画を観ているらしい。この「サメの出てくる」という定義は変態的に広く、例えばフカヒレの出てくる映画はサメ映画らしい。さすがの猛者揃いの観客も若干引いてた。

1910年代に作られた白黒映画のワンシーンを見て「このサメっぽい生物はサメか否か、この映画はサメ映画か」と最も歴史の古いサメ映画を決めるために熱い議論を交わしている光景は非常に奇妙で楽しい。最終的にノンフィクション映画としては1914年の「30 leagues under the sea」、フィクション映画では「海底3万マイル」(海底2万里)が最も古いサメ映画として定義づけられ、この講義は終わった。

そして最後の大プログラム、「サメ映画クイズ大会」が始まった。説明するまでもないと思うけどサメ映画に関するクイズ大会である。

この世にはA級B級有象無象の「サメ映画」が存在する。それらのクソ映画を愛し、最も知識を保有しているチャンピオンを決めようというのがこのクイズ大会なのだ。

まずは予選。事前に配られた○×カードを使って、先程観た「シャークネード ラストチェーンソー」に関する○×問題をクリアしなければならない。

ちなみに僕は初っ端から間違えて終わった。2秒くらいだけ出てきたクレオパトラの役がマイケルジャクソンの姉か妹か、なんて分かるかい。(姉でした)

その後もセリフの問題や、挙げ句の果てに映倫番号を当てる問題まで出されて多くの解答者がサメに食べられていった。そんな中生き残った猛者3人は決勝戦へ勝ち進む。決勝戦は猛者3人+前回チャンピオン(前回があったのか)の4人でサメ映画全般に関する早押しクイズが行われた。

「サメ映画イントロ。今から流す映像が何の映画か当ててください。」

(海の映像) 

ピンポーン!  

「!?」

「ダブルヘッドジョーズ 。」

「正解です。」

なんだこの世界は。○×が運よく当たったら良いな〜なんて思ってたけどこれは参加しなくてよかった。これは素人が手を出したらサメに噛みちぎられる世界だ。

こうしてクイズ大会は熾烈を極め、前回チャンピオン「おーえん」さんが2年連続優勝を果たすこととなった。2位は「サメ映画ルーキー」さんだった。

こうしてイベントは全てが放送事故レベルとなった結果、一周回って平穏に終わることができたのであった。いやしかしサメ映画クイズ大会の人達はとても目が真剣だった。司会者のサメンテーター「中野ダンキチ」さんもエクセルで作ったサメ映画データを紹介するときの目はとても生き生きしていた。サメ映画であれなんであれ自分の好きなものを真剣に、そして楽しそうに語る姿はとてもカッコいいと思う。ぼくも好きなことを突き詰められる人間になりたいなあと思いました。ちなみに世間ではこれをオタクと呼ぶ。