　先日、関東甲信地方に大雪警報が発令された。積雪や路面の凍結による交通への影響が大きかった。車の立ち往生など毎度のことである。不要不急の外出を控えるようニュースでは伝えていたが、なかなかそうはいかないのが現実ではないだろうか。

　積雪のニュースを見ていて、雪道を歩くことに困惑している大人たちを尻目に、公園や学校の校庭で走り回っている子どもたちの姿が印象的だった。めったに降らない雪に大喜びだったのだろう。ふと、自分の子どもの頃を思い出した。

　私は県北の生まれである。毎年、冬になると何度も雪が降って積もっていた。２０センチ以上積もることも多かった。そうなると長靴を履いて小学校に行くことになる。まだ足跡のついていない校庭を歩くのが好きだった。「ギュッ」という雪を踏む音が心地よい。

　あれは５年生の時だった。何かの授業の時、担任のM先生が「みんなで雪合戦をしよう」と言った。１クラス２２人しかいなかったが、まだ雪が降り続いている中で雪玉を投げ合った。M先生は全員から集中砲火を浴びていた。しかし、私はM先生が一番楽しそうにしている気がした。成績が悪く、いつも先生を困らせているN君から、M先生は何度も雪玉をぶつけられていた。それでもM先生は笑顔だった。そんなM先生をクラス全員が大好きだった。その年の３月、M先生は隣町の学校に転任になった。

　私の実家の周りは水田が広がっている。雪が降ると、その水田は真っ白な景色に変貌する。小学生の頃、隣に住む１歳年下のY君と水田に積もった雪を丸めて雪だるまを作った。今思い出しても、かなり大きな雪だるまだった。また、Y君とはかまくらも作った。雪を集めて固め、スコップで中をくり抜いた。それほど大きなものではなく、何とか二人が入ることができる程度だった。

　雪だるまもかまくらも、上級生に見つかると壊されてしまった。せっかくY君と力を合わせて作ったものが、知らない間に無残な姿になった。しかし、上級生に文句を言うこともできず、Y君と二人で呆然と立ちつくすしかなかった。また、天気が回復して気温が高くなると、雪だるまもかまくらも溶けていった。日に日に小さくなり、色もどす黒くなっていく様は、悲しいような寂しいような気持ちだった。

　中学生になると自転車通学となった。どんな天候の日も学校に行かなくてはならない。中学１年生の時、大雪だった日がある。道路にはかなりの積雪があり、車はノロノロ運転だった。細かな雪が降り続いている中を、私は合羽を着て学校に向かっていた。学校までは６キロ程度の道のりである。ゆっくりと３キロほど進み、国道を横切らないといけない地点に来た。前方から車が来たのでブレーキをかけた瞬間、あっという間に滑って、自転車ごと転倒してしまった。雪の下は凍っていたのだろう。私は痛さを我慢する間もなく立ち上がった。前方から来た車は止まったままだった。ふと見ると、車を運転していたのは、小学３年生の時、担任だったO先生である。O先生も私だと分かったようで、「あ～っ！」といった感じの気の毒そうな顔をして私を見ていた。私はペコリと頭を下げ、自転車を押してO先生の車の前を通った。

　１年前、雪の残っている山道を歩いていた。雪の上には小動物の足跡以外、何も付いていない。子どもの頃を思い出して、ザクザクと音を立てながら歩いた。すると、受け身をとる余裕も、手をつく時間もないくらいあっという間に足を滑らせて転倒した。山の中なので誰もいなくて幸いだった。「痛テテテテ！」と思いながら立ち上がった。その時、何だか懐かしい気持ちになった。こんなに見事に雪道で滑ったことが過去にもあった気がした。すぐに思い出した。それが前述の雪の日の自転車の転倒である。

　昔に比べて雪が降らなくなったとつくづく思う。故郷を離れて久しい。地元の人に聞くと、雪だるまやかまくらを作るくらいの積雪はもうないという。スキー場も今シーズン、ほとんど営業できていない。これも地球温暖化の影響なのか。歳ととともに寒さが苦手になり、暖かい冬もいいじゃないかと思っている自分を情けなく感じている。

　雪には色々な思い出が詰まっている。子どもの頃、あんなに好きだった雪。積雪のニュースを見るたびに、雪の中で遊んでいた頃を思い出している。

雪の日の思い出！