きみの部屋のソファ
心地よくて立ち上がる気を削いでしまう
長居して
ブランケットの感触を楽しむうち
睡魔が襲う
居座るための言い訳じゃないよ
昔きみの家にあった重厚な黒革のソファも良かった
何度も座り
ときに寝てしまい
最後の日も座った
もう会わないと誓わされた
涙あふれ震える肩に手を置く
こんなのは絶対じゃない
口約束など
頷くだけ頷いて破ればいいと鼻で笑ったが
言葉は不思議だ
発してしまうと妙に力を持つ
上っ面の誓いに縛られ呪われて
ふたりの距離は次第に遠く
ぼくは手近な岸辺に流れ
いまきみの部屋のソファで微睡みながら
そんなことを思い出していた
時折吹くちょうどいい窓風と
ハイバックの座り心地にやられて
また眠ってしまいそう
だいじょうぶ
きみはここにいる
遠回りして辿り着いた 二人の場所で
きみは微笑う