2013年7月、パナソニックが倒産回避の経営戦略のひとつとして
主要な資材取引先を集めて
購入代金の支払い条件変更を求めました。
それは、取引代金の締め日から支払日までの猶予期間を
1か月延長してほしいというものでした。
依頼内容は以下の通りです。
従来の支払い期間: 105日間(90日間+翌月15日入金)
従後の支払い期間: 135日間 約1カ月間の延長
取引先への支払い猶予期間を延長することで
何のメリットがあるかというと、
それだけ、手元の資金繰り(キャッシュフロー)が
改善されるという点です。
これがなぜキャッシュフロー改善になるかというと、
例えば、現在月末締めの翌月15日払の購買条件で
取引していたとします。
この支払いが毎月2,000万円あるとします。
もしこれを翌々月15日払に1ヶ月遅らせることができたとしたら、
事業が続く限り、2,000万円が毎月手元にあるのと同じことです。
しかも借入ではないので利息はゼロです。
新たな借入をすることなく、毎月、
それだけ資金の余裕をつくることができるのです。
民間企業では、このように、キャッシュフロー改善の手法として
取引先に対して支払条件の見直し交渉したり
業者選定時の選定基準のひとつに支払条件を含めたりしています。
これも、高度な購買管理活動のひとつなのです。
ところが国や地方公共団体では
政府契約の支払遅延防止等に関する法律
(通称:支払遅延防止法)によって、
工事代金については請求書を受けてから40日、
それ以外の代金については同30日、と決まっています。
この支払条件では、なかなか借金を減らすことはできません。
支払遅延防止法ができたのは終戦直後です。
終戦前には官公庁が取引先に対して圧倒的優位で
支払遅延もやむなしとの風習があったところ、
このままでは戦後の国民経済に影響があるため
制定された法律なのです。
現在は「自治体経営」という概念のもと
キャッシュフロー改善という、
財政再建をするために必要不可欠な活動を
しなければならない時代です。
政府や地方公共団体と業者との間で対等でフェアな立場をもち、
より最適な購買条件を獲得していくためには
法律の廃止または改正が何より急がれます。
そうすることにより、購買契約の多様化が実現し
業者間で適正な競争状態を維持することで
経済活性化にも寄与することが期待されます。