以前,微生物が有機物を分解し,その副産物で無機態窒素が作られるということを学びましたよね。
有機態の窒素が無機態の窒素に変わることを無機化と呼ばれるんですが,
実は,有機態の窒素,すなわち,有機物というのはたくさんの種類があるんですよ。
そして,有機物種の違いは,分解のスピードや程度にも,深く関与していることが分かっているんです。
そこでまず覚えてほしいことがありまして,「炭素率(C/N比)」という言葉です。これは,有機物を構成するもののうち,炭素と地磯の比率のことでして,植物の体は,たくさんの炭素が連なってできているんです。
イメージするなら,
ーCーC-CーCーC-CーCーC-CーCーC-CーCーC-Cー
上の図のように,炭素がたくさん結合して,植物の骨格を形成しています。そして窒素は,この炭素の所々で,結合しているとイメージしてください。
なので,植物が異なれば,当然炭素の数も違うし,窒素の数も異なるんですよ。
その炭素や窒素の数が異なれば,当然,微生物の分解,すなわち,無機化にも影響が出てくるという話です。
例えば,
こむぎやおがくずなどの有機物の炭素比は,100を上回るようなものを訴状に施与する場合,それが分解され,無機態窒素ができるまでに何年もかかることが分かっています。
一方で,
鶏ふんや豚ふんなど,家畜の分は,炭素比が10前後であり,土壌中に鋤き込んであげること,10日程度で分解が完了することが分かっています。
では,ベストなC/N比はあるんでしょうかね。
この教科書では,有機物を土壌に施与したとき,
有機物の分解に伴う無機化には,三つの方に分類できると述べられています。
①短期分解型:C/N比20程度の有機物パターン
有機物の無機化は短期間で終了,およそ10日程度のみ
②基本型:C/N比20~30程度の有機物パターン
無機かはゆっくりと進行し,時間と無機化の関係はほぼ直線
③長期分解型:C/N比30以上の有機物パターン
少なくとも施与後30日間くらいは分解されない。
この場合では,土壌中の無機態窒素を微生物が食べてしまい(有機化),窒素が失われてしまうこともあるそうです。
長期型のようなC/N比が30を超えるような有機物を施与するときに,
化学肥料の無機態Nも同時に施与してしまうと,肥料の無機態Nが有機化されるため,
肥料由来のNの効果がみられなくなり,窒素の欠乏が生じるそうです。
この現象を,「窒素飢餓」というんです。
ここで,有機化という言葉が何度か出てきましたが,これは,微生物の無機化と逆の反応です。
これは何をしているかというと,簡単な話,微生物は生きるためには,栄養とるということ。
その栄養に無機態窒素があるんですね。
無機態窒素を栄養すると,体にはたんぱく質が形成され,それがつまり有機物であるため,
窒素の有機化と呼ばれるわけです。
まとめると,
無機化,有機化のお話をしてきましたが,
これらの反応は,微生物がいる限り,常に行われているということです。
そして,その反応は,土壌中の有機物の種類によって,また無機態窒素の量によって,常に変化していると言えるんですね。
むやみやたらに,有機物を土壌に鋤き込むのは無駄だということが分かりましたね。しかし,農家の方々はこういう点をどうやって対策しているんでしょうかね。
昔,調査でお世話になったショウガ栽培のある農家さんは,有機栽培をされていましたが,
毎年,いろんな種類の有機物を鋤き込んでは,土壌とショウガの生育を観察してるとおっしゃっていましたね。
そうやって,挑戦して,経験して,技術を高めていくものなんでしょうかね,農業というものは。