後半ロスタイムまでは完全にアトレティコの試合だった。
アトレティコは得意のセットプレーから再三チャンスを作り、リーガ優勝を決めた最終節のバルサ戦と同じように、36分にCKからゴディンが決め先制した。
そこからは、シメオネが築いた統制された守備組織でマドリーを封じ込めた。開始早々にジエゴ・コスタが負傷退場するマイナスはあったものの、プランは完璧に機能していた。
マドリーもベイルが何度もチャンスを手にしていた。終盤はマドリーの一方的な展開でもあった。しかしそんな中1点差で粘り勝つのも、今季のアトレティコの強みだ。リーガ優勝を引き寄せたのも、シーズンを通してみせたしぶとさにあった。
後半ロスタイム、セルヒオ・ラモスのヘディングが決まるまで、アトレティコのシーズンは絵に描いたように上手く進んでいた。
GKのクルトワは「あと1分だったのに」と今も悔やんでいる。
主将のガビはあの同点弾を「悲劇だ」と嘆いた。
セルヒオ・ラモスのヘディングは、試合の流れを完全に変えた。
マドリーは劇的な得点に士気を高め、アトレティコはどこか萎縮した。フィリペ・ルイスは交代せざるを得ず、フアンフランもほとんど走れなくなっていた。そんなアトレティコ守備陣の間を、延長後半5分、左からディマリアが切り裂くように突進していく。シュートはクルトワに当たり、反対側のベイルの頭上へ舞い上がった。
スコアは2-1、残り10分。
シーズンを120%の力で走り抜けたアトレティコにもう余力は残されていなかった。
ガビは言う。
「1年間、チームは獣のように戦い続けたんだ。僕らは走れるところまで走った」
シメオネのアトレティコは走り、ぶつかり、戦うチームだった。1試合1試合戦っていくという方針から、先発は固定。マドリーのように、ベンチに数十億円の選手が座っているわけでもない。「いつか切れる」と多くの人が考えたが、そんな懐疑的な声にも、選手は走り続け、2強以外不可能と言われたリーガで優勝する。
しかし走り続けたチームは試合終了目前の同点弾とベイルの勝ち越し点で、何かが切れたように力つきた。
走れないアトレティコを見たのは、今季でこれが初めてだった。

