最近、友人と雑談していたときに、「理学療法士って、ケガしたときにリハビリしてくれる人でしょ?」と言われたんですよね。まぁ、それ自体は間違ってないですし、多くの人が抱くイメージとしては自然な反応なんだろうなと思います。
でもねぇ、実際に現場の話を聞いたり、理学療法士の方々の活動を見ていると、「それだけじゃないのに!」って思うことが多いんですよ。理学療法士って、もっと日常生活に役立つことができるし、病気やケガのあとだけじゃなく“予防”や“パフォーマンス向上”にも貢献できる専門職なんです。
だから今回は、「理学療法士って実はこんなこともできるんだよ」ということを、少しでも広めたくて、この記事を書いてみることにしました。
理学療法士ってどんな人?
理学療法士(Physical Therapist:PT)は、病気やケガなどで運動機能が低下した人に対して、機能回復を目的とした運動療法や物理療法(温熱、電気刺激など)を提供する国家資格を持つ専門職です。
整形外科やリハビリ病棟などで、手術後のリハビリを担当する姿を見たことがある人も多いかもしれません。たしかに、そうした医療現場での活動が一般的に知られている一面です。
でも実は、理学療法士の専門性ってもっと広いんですよ。脳卒中の後遺症で片麻痺になった方への神経リハビリ、慢性的な腰痛への姿勢改善指導、スポーツ選手への動作分析とトレーニングメニューの立案など、「身体の動き」に関することなら、実に多様な領域で活躍できる知識と技術を持っているんです。
どうして「ケガをしたときの人」というイメージが強いのか?
これは日本の制度の影響が大きいと思います。
理学療法士が働いている多くの職場は、医療保険や介護保険の枠組みの中にあります。つまり、国の制度によって「いつ、誰に、どんなリハビリが提供されるか」がある程度決まってしまっているんですね。
たとえば、脳卒中で入院している間はリハビリが受けられるけど、退院後は急に制限がかかって受けられなくなってしまうとか。通所リハビリも週に限られた回数しか行けなかったりする。そうすると、「ケガしたときだけ」「高齢者が受けるもの」といった印象が強くなってしまうのも、無理はありません。
でも、その“制度の都合”と“理学療法士の本来の可能性”って、必ずしも一致しないんですよね。
じつは“日常の不調”にも強い味方
理学療法士が得意とするのは、「動作の分析と改善」です。普段の歩き方、座り方、立ち上がり方──そんな何気ない動作の中に、身体の不調の原因が隠れていることがよくあるんです。
たとえば「なんとなく腰が重い」とか「肩が凝って頭痛がする」とか、そういう症状に対して、単にマッサージするのではなく、「そもそもその負担がどこから来ているのか?」を見極めて、姿勢や動作を改善することで根本からアプローチできるんですね。
つまり、理学療法士って“未病ケア”の専門家でもあるんです。
最近では、「パフォーマンス向上」や「転倒予防」「姿勢改善」といったテーマで、理学療法士に指導を受ける人も増えてきました。トップアスリートだけでなく、一般の方にとっても“頼れる存在”なんですよね。
「自由に相談できるリハビリ」が求められている
そうは言っても、今の制度の中では、「病気やケガがないとリハビリが受けられない」というケースが多くあります。これって、利用者側にとっても、理学療法士側にとっても、すごくもったいない状況なんですよね。
そこで最近増えてきているのが、「保険外で提供されるリハビリサービス」です。
これは、個人や団体が、保険制度に縛られない形で理学療法士のスキルを提供する取り組みです。たとえば、「肩こりを改善したい」「正しい歩き方を知りたい」「在宅でマンツーマンの運動指導を受けたい」といったニーズに対して、利用者が直接理学療法士を指名して、自宅に来てもらうスタイルなどがあります。
こうしたサービスは、制度による制限がない分、より柔軟で、より個別性の高い支援が可能になります。何より、「本当に自分のことを見てくれる」「生活に寄り添ってくれる」リハビリができる点が魅力です。
理学療法士の働き方が変われば、社会も変わる
保険外リハビリの広がりは、理学療法士自身にとっても大きな意味を持ちます。
制度の中では、時間が限られ、報酬にも上限がある。その中で働いているセラピストたちは、「もっと丁寧に関わりたいのに」「もっと自分の技術を活かしたいのに」と、もどかしさを感じていることが少なくありません。
保険外という新しい働き方は、そうした思いを形にする手段にもなります。利用者との関係もより密になり、自分の技術で直接感謝される喜びを感じられる。さらに、収入面でも柔軟性が増すので、やりがいを感じながら仕事を続けやすくなるんですね。
そしてその結果として、もっと質の高いリハビリが社会に広がっていく。これは、すごく良い循環だなと思います。
「身体の専門家」としてもっと身近に
理学療法士って、本当に多くの知識と技術を持っているんです。
姿勢のこと、筋肉のバランスのこと、関節の動きのこと、歩行の安全性、生活動作の工夫、転倒予防、スポーツ動作の改善──こんなにも広く深く「身体のこと」をわかっている専門職って、なかなか他にいません。
だけど、それがまだまだ一般の人には知られていない。これは本当に、もったいないとしか言いようがありません。
「ちょっと最近、体が重いな」とか「運動不足が気になる」とか、そういうときに気軽に相談できる存在として、理学療法士がもっと身近になったら、生活の質ってぐっと上がると思うんですよね。
私たちの身体は、日々の使い方によって少しずつ変化しています。その変化にいち早く気づき、正しい方向へ導いてくれるのが、理学療法士なんです。
だからこそ、「ケガをしたときにだけお世話になる人」というイメージから一歩踏み出して、「健康を守るパートナー」として、もっと多くの人に知ってもらえたらいいなと思います。
「そういえば最近、歩き方がちょっと変かも」「姿勢が悪くなってきた気がする」──そんな気づきがあったら、それは理学療法士に相談するタイミングかもしれませんね。
- 前ページ
- 次ページ