「暁の帝」は飛鳥時代を描いていて、演じるほうとしても難しい作品でした。
演技に加え、歴史の考察やディスカッションも必要。殺陣もあります。
Wキャストで稽古時間は短く、稽古の序盤からみんなの不安は大きかったのではないかと。
そして当初、盆舞台は手動で回転する予定でした。
その回数は四十回近く、幕との連携、スピード、回る角度、音きっかけなのか、照明きっかけなのか、セリフきっかけなのかなど、転換の手は複雑極まりないものに…
さらに本当ならその盆は、集中稽古期間から設置される予定だったのですが、色々あったのか、設置されることはなかったです。
代わりに簡単な段ボールで手順を確認することに。もちろん本物ではないため、お世辞にも正確なシミュレーションが出来てるとは言えなかった。
(もっとつけ加えると、盆の角度は九度という急勾配。小屋に入るまで俳優陣はそれを体験できませんでした)
演出の靖朗さんの空間作りにおける芸術的才能は、非常に優れていると思います。
その空間作りをベースとしてお芝居の世界を作りあげていく。
靖朗さんの頭に中にあるのは、精微な技術を要する美しい世界。
演劇でありながらもインスタレーション的要素を含んでいると言っても過言ではない。
しかしその分、演技プラスアルファの要素が俳優陣にも求められます。
転換に、時間の多くは費やされました。
そんな中、稽古最終日に芹沢くんの事故が起きてしまいます……
そして、小屋に入ってから盆が回転するのは中止になり、稽古期間で作りあげてきた演技上の動きや転換も改めることに。
この一連のことは、普通だったら座組が崩壊してもおかしくない試練の連続だったと思います。
(ちょっとここから感情が昂ぶるので文体変えます)
……なんかネガティブな事ばかり羅列してしまったが、愚痴を吐いているわけではない。
(だって上記のことの一切は、観に来るお客様にとってはなんの関係もない話。
こちら側がどんな状況だろうとお金を頂いてる以上、きちんとしたモノをお届けせねばならないのは、僕を含めた座組全員がわかっている)
じゃあ、竹岡は何を書き記したいのか?
このブログ記事を書く前にキャスト紹介の記事を書いた——
極めて稀有なチームワークで作品を完成させたみんなを、自分の記憶が新しいうちに、何が起きていたか、誰がどう前向きに取り組んだか、ここに記しておきたかった。
みんなは、俺の、俺の、自慢なんだ…!
弱音も愚痴も吐かず、明るく朗らかで居てくれた座長。
建設的に意見を提案してくれた徹さん。
それを支えたみんな…
若手は若手としての役目を、中堅は中堅としての役目を、ベテランはベテランとしての役目を、それぞれが果たしていた。
このチームだから数々の試練に折れず、作品を完成させることが出来たのだと、楽日を終えた今、強く思う。
この出会いが生んだ宝物のような時間を、少しでも留めておきたい。
僕にとって「暁の帝」は、演劇作品を越えた経験と刺激を与えてくれた特別な時間となった。
ここで出会ったみんなとまた舞台に立てるよう、心から願っている。
最後に、ご来場くださいましたお客様。
連日のスタンディングオベーションという最高のカーテンコールにして頂き、本当にありがとうございました。
我々が舞台に立てるのはお客様あってこそです。
今後も精進していきます。
藍チームのみんなを、これからもよろしくお願いいたします。
竹岡常吉