TENEMENT HOUSE ってなんでしょう。Glasgow にかつてあった、伝統的な集合住宅だそうです。詳細な説明は、以下の画像をみてください。
この家は、トワード女史が長年、店子として暮らした住宅が、調度もそのままに現在まで保存されている、という建物全体を含めた博物館です。
入り口でチケットを買って、2階へ進みます。扉に着いたらドアノブの隣に付いているツマミを引っ張ります。すると、呼び鈴🛎がなって、中にいる説明員の方が中から扉をあけてくれます。
トワード女史が暮らしていた頃が、そのままが保存されています。ティーカップとティポットも女史が買い揃えたものなのでしょう。女史の生活が、眼に浮かぶかのように。
トワード女史って何した人なんでしょうか。何の知識もない。それで説明員の女性に聞いてみました。曰く、トワード女史は、何した人でもない、有名人ではないそうです。小さい頃に父親を亡くし、母親の手で育てられ、母親と一緒にこの家の店子として暮らしていたそうです。母親が亡くなってからもこの家に住み続けました。54年間に渡って住んでいたそうです。彼女は結婚をしませんでした。ショートハンド タイピスト、という仕事を高齢まで続けていたそうです。
トワード女史は、幼少期から過ごした家の調度をほとんど変えずに生活していたそうです。電燈が普及して、そこを改装した以外はずっと同じままの状態を維持していたそうです。
これが、彼女の死後、20世紀初頭のグラスゴー中産階級の生活をそのまま残した貴重な資料ということで、保存され博物館になっているのです。説明員の人が言うには、Social history なのだそうです。この家は。
アメリカのアトランタで、マーガレットミッチェルが住んでいた家を見たことがあります。彼女が使ったタイプライターをはじめとして、彼女の日常生活がそのままに保存されていました。
マーガレットミッチェルといえば、風と共に去りぬで有名な文豪です。ファンはたくさんいるでしょうし、記念館になっているのも、そうだろうなと思えます。
無名の一市民の、それも20世紀の住宅がこうした博物館になっているのも不思議な気もします。しかし、そうした一市民の生活の現実を伝えるものが、今の世界になくなってきているのは確かかと。永井荷風の東京物語に出てくる東京の雰囲気は、特別に保存されたものでもなければ東京の日常で体験できるものはでは、もはやないでしょう。
サザエさんの磯野家だって、もう文化遺産といっても良いかもしれません。特段に貴重だと思われないままいつのまにか見なくなり、姿を消して行くものも多いことでしょう。そこに、後の世代まで伝えていく意味があるのかと。
無名の一市民としても、第2次世界大戦を挟んで激動の時代を生きてきたわけです。
部屋は、洗面所と浴室を含めて4部屋に、各部屋をつなぐ部屋があり、それなりに広いものです。そんな部屋を賃貸できると言うのは、トワード女史は、お金持ちだったのか、そんな質問を説明員の方にしてみたところ(中産階級じゃないんじゃ?)、トワード女史そのものは、それほどの収入はなかったけれど、彼女が3歳の頃、亡くなった父親が事業で資産を残していた、のだそうです。
トワード女史の最後の10年間は、住み慣れたこの住居を離れて病院での生活だったそうです。彼女は1975年に亡くなっています。