うちの施設に通っている利用者さんから、高次脳機能障害について面白い表現をされていたので紹介します。
その方は、「(自分の)高次脳機能障害はすごろくと一緒」と言います。
何が一緒なのかというと「一度分からなくなると一番はじめの元に戻らないといけない。」とのこと。
そのエピソードとして、電車でのできごとを話されました。
ある日、いつものように電車で施設に通所している最中に、眠くなってしまい電車内で眠ってしまった。
目を覚ますと、自分がどこに向かっているのか、なんのために電車に乗っていたのかを忘れてしまっていた。
行き先を思い出すためには、まず朝起きるところから思い出し、朝食を食べ、支度をし…とその日のスタート時点に戻らないと思い出せないんだと話されました。途中からでは思い出せないのだそうです。
彼はそれをすごろくで言う「振り出しに戻る」と表現していました。
なるほど、たしかに振り出しに戻る表現がしっくりくるケースがいくつか思い当たります。
たとえば、以前利用していた方は、デイサービスに来た後隣にある銀行には寄らず、いったん帰宅してからまた銀行に出かけていました。これも、振り出しに戻るらないと、次の行動に移行できない表現がぴったりです。
もちろんすべての高次脳機能障害に当てはまるわけではなく、実際このお話を聞いた他の利用者さんは「俺はそんなことはないなー」と言っています。それでも、この「振り出しに戻る」の表現がしっくりくるケースがあることも事実です。
高次脳機能障害は理解や自覚が難しい病気ですが、こうして自分なりに解釈して、症状を理解しようとする姿勢を応援していきたいと思います。