人材開発のすすめ
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 人財開発を考える際「どのように人を教育・育成するか?」を考えがちだが、その前に「どのように人が育ってきたのか?」を考えてみる必要がある。現場の人間が成長する裏側には多くの場合、何らかのストレスがそこには存在している。


 人材開発や人事制度構築の仕事をしていると、多くの管理職者や経営幹部の方々とミーティングをしたり、インタビューを行ったりする機会がある。その際、私の個人的な興味もあり、また人材開発のヒントを探るべく「今まで仕事をしてきた中で、自分自身がもっとも成長できたと感じる経験とはどんなものか」について質問し、記録に残している。


 会社をリアルタイムでリードしている方々なので、多かれ少なかれさまざまな経験やエピソードを話してくれるのだが、いろいろな話を聴いていくと、その多くのストーリー中に“追い詰められた状況”や“逼迫した精神状態”というものがあり、そこからなんとか抜け出そうと必死になって行動する姿がある。そして、このような状況を何とか乗りきった時(成功、失敗に関わらず)に成長を感じている人が多いことに気付かされる。


 例えばどんな状況であるかというと「上司が急に他界し、新たな人材投入がないまま、自分がその代りを務めなくてはならなくなった」であるとか、「明らかに技術も知識も足りない状況で、自分が仕事をリードしなくてはならなくなった」というものである。一言でいってしまうと「このままでは非常にマズイ!」という状況に陥っており、客観的に観るとかなり高いストレス状態におかれていることが伺える。


 話を聴いた多くの方々(管理職層・経営層)の特徴として、このようなストレスにさらされた時に、人それぞれのやり方は違うものの、なんとかしようと“必死に行動”していることが上げられる。例えば、先輩や上司に頭を下げて教えを乞うという一般的なものから、社外の人に助けを求めて何とかした人、顧客に助けを求めて何とかした人、中にはライバル企業に助けを求め何とかした人まで、まさになり振り構わずという感じなのである。結果としてうまくいくか、いかないかは別として、何とかしようとする行動の“必死さ”は一緒なのである。


そして、この必死の行動、なり振り構っていられない状況こそが、自らのその後の行動に影響を与える経験となり、行動や思考の領域を広げているようなのである。なんと表現すればよいのかとても抽象的な表現になるのだが“人としての成長”や“懐の深さ”、“人としての余裕”みたいなものに繋がっているように感じられる。


 このような話を多く聞いていると、人の成長の根源はストレスにあり、これらのストレスにさらされた時の個々人の行動や判断が、その人物を成長させるか否かの分岐点になっているように感じる。彼らを見ていると、一般的に言われるストレス耐性(ストレスに耐える力)とは少し違い、ストレスを受けた時にどう行動するかがポイントになっている印象をうける。逆に言えば、ストレスには決して強くなく、ストレスから解放される為に必死に行動してるように見えるのである。



●受講生が自ら考え、課題を乗り越える仕組みの人材開発が必要


 話は少し違うのだが、子供達が夢中になって遊ぶ『ポケットモンスター』というゲーム(ピカチューで有名な)がある。キャラクターの数は全部で600種を超えるそうで、子供たちは必至にそのキャラクターの名前を覚えたりするのだが、この行動の裏にもストレスが大きく影響しているという。遊びがストレス?と思われる方も多いかもしれないが、子供たちにとっては、数多く存在するピカチュウのキャラクターを“自分は全部知らない”ということに強いストレスを感じ、そのストレスから解放されるために必死でキャラクターを覚えるというのである。


 話を人材開発に戻してみると、人を育成する方法として、さまざまなアプローチがあり、プログラムも存在する。しかし、その多くが「受講者の持つ課題とは何か?」「あるべき姿と現実とのGAPとは何か?」「課題やGAPを埋める為に何を教えれば良いか?」という外側から必要要素を分析し、不足部分を教育で補うというものが多いように思われる。決して間違ったアプローチではなく、そこから多くのことを学ぶ事もできると思うだが、実際にその組織をリードしている人々がどのようなプロセスを経て現在の姿に成長してきたのかの視点を忘れてはいけない気がする。


 もし“ストレス”が結果として人を成長に導く根源にあるとすれば、人材開発プログラムの中にその要素を積極的に取り入れる(例えば、受講者に高いストレス状態を疑似体験させ、学びを促進させるなど)べきであるし、受講生の学習課程においても、会社側が受講生の課題を分析して教える人材開発ではなく、受講生が自ら考え課題を乗り越えるしくみの人材開発が必要になってくるのではないかと思われる。


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