昔ながらの建物を受け継ぎ、
古きよき旅館文化を提供している宿に、
やたら心惹かれるようになった。

これも年のせい、否、年のおかげかな。

その切り札的存在が、
福島県会津東山温泉の「向瀧」

テレビや雑誌でたびたび取り上げられ、
いつかはうかがってみたいと思っていた宿だ。


寒かったせいか、写真まで真っ青。

木造建築と屋根瓦が連なる一帯が「向瀧」。
時間が止まっているように見えるけど、
窓の明かりが温かくて、
早くこの中に身を置きたいと思った。


雪つり作業が始まったころだったかな。
玄関も趣に満ちている。

「向瀧」に足を踏み入れるやいなや、
なんとも言えない安らかな心持ちを覚えた。

仲居さんの案内で客室へ。


中庭に面した廊下はこの通りピカピカ。


中庭には池があり、庭は勾配のある地形。


中庭を囲むように宿泊棟が段々に連なっている。
この中のひとつがこの日の客室。
当然、客室に向かう廊下は階段が続く。


増築をくり返した結果なのだろうが、
あまり見たことのない建築に心が躍る。


古い建築らしい急階段だが、
そこかしこが磨きこまれていてピカピカ。

そういえば、廊下で出合う仲居さんや男衆さんは、
隙をみては雑巾で拭き掃除をしていた。

そして、寒い時期にもかかわらず、
来客があると玄関の戸を空け放ち、
そろって出迎えをしていた。

決して決まり事だからやっているのではなく、
それぞれ自らすすんで行っている。
心が感じられるのだ。

だからこそ、安らぎを覚えたのだろう。

古い建物を維持するだけでも大変なのに、
心まできちんと受け継いでる。

「向瀧」は想像を超えていた。

つづく