見知らぬ土地に行く場合、
晩飯を食う店だけは、
あらかじめ「食べログ」などを参考にして、
見当をつけておくことにしている。

ひとり旅だから、基本は居酒屋。
それも、チェーン展開しているのでなく、
家族経営のような小さな規模の店。

そこで一軒、非常に評価が高い店があった。

地の魚を駆使した料理は店主まかせで、
それに合わせて日本酒を出す。

ある意味コース仕立てだな。

で、予約しておかないと無理とか。

なので、日程を決めてすぐ、
居酒屋「海彦」に予約の電話を入れた。

希望通りの日時に予約は取れたのだが、
店主から「日本酒は飲めますか?」と聞かれ、
あまり強くないんですがと答えると、
「倒れるまで飲んでもらいます」。

実際のところ、最近とみに弱くなってるから、
心して行かないとヤバいかも。

睡眠不足と観光で疲れ果てた体を、
ホテルに戻って風呂に入って気合を入れ直し、
「海彦」へと向かった。

実は、泊まってたAPAホテルとは、
道を挟んで隣同士のような位置関係で、
酔っぱらっても這って帰れる距離。

まあ、なんとかなるだろ。

「海彦」のドアを開けると、
そこは6~7人座るといっぱいのカウンターと、
テーブル席は少し。

ご主人は小柄だけど目力のある
大阪弁でいうところの「ごんたくれ」な感じ。

オレの席はカウンターの一番手前に用意されていた。

すぐ隣は常連と思しきふくよかな女性。
この人がいろいろと教えてくれて、
最初から居心地がいい。

口開けの一献は梅酒。
それも果肉をミキサーにかけた感じで、
梅の味わいがたっぷりの代物。

やるな。


料理の最初は、手づくり蒲鉾。

具がたくさん入っていて、
細かいそぼろを固めたような食感は、
噛むごとに多様な味が現れてきて、
文句なしにうまい!

「うまい!」と素直にいうと、
隣の女性は「こんなのが?」と笑う。

ここで日本酒。

受け皿に置かれたグラスは、
通常のものよりずいぶん大きい。

うまいもんでクイクイ飲んじゃって、
銘柄は覚えてない。(笑)


太刀魚の南蛮漬け。

鱧のようなふっくらとした身がおいしくて、
最初、太刀魚とはわからなかった。


これで一人前!!

シマアジ、石鯛、カマトロ、イサキなど、
豪勢この上ない。

これだけでも長崎に来た甲斐があった。

ここでまた別の日本酒2杯目。
銘柄は「前(さき)」。
これだけはなぜかよく覚えてる。

このあたりで隣の女性から、その隣の男性が
食べログを見て初めてきた韓国の人だと紹介された。

日本で仕事をしているという韓流男性は、
おぼつかない日本語でよくしゃべる。

曰く、こんなうまい刺身は食ったことがない。

かなり同意。


豆腐の上にウニたっぷり!

小ぶりのウニは北部九州ならでは。
香りが高く、酒が進む。


カマトロのカマ焼き。

塩加減も焼き加減も絶妙で、
食べでがある。

というか、すでに腹は満ち加減。

ここで日本酒3杯目。


クジラ!

いやぁ~、こんなうまいクジラは初めてかも。

長崎では結構クジラが流通していて、
あるテレビ番組で、長崎では肉じゃがに
クジラの脂身を使うってのをやっていた話をしたら、
いつもは作ってるけれど、その日はないとのこと。

残念。

ご主人からいつまでいるかと聞かれて、
翌々日帰るというと、
帰る前に店に寄るように言いつけられた。

実はもうこのあたりで酔いが回ってクラクラ。

食べ残してしまったことが今も悔やまれる。

ちなみに韓国でもクジラは食べるらしい。

ここらでお会計をお願いすると、
次を作ってるからそれを食ってからって。


そして現れたのがこれ。

野菜たっぷりのアマダイの蒸し物。

だしと塩みがくっきりしていて、
アマダイはもとより具も抜群!

だけど、これまで食べ残してしまう。

写真見てたら、後悔の念がむくむく……。


お会計をお願いすると、
箸置きを持って帰っていいとのこと。
全員にそういっているとか。

これは「六音窯」の作品だそうで、
そういや器も全部よかったな、と。

で、お会計はしめて¥1万とちょっと。

決して安くはないが、
内容を考えると全然高くない。

また、長崎のディープな話を聞き、
うまさを教えてもらったたことを考えると、
ベストチョイスだったといえよう。


帰る前、ご主人の言葉通り、
ずうずうしくうかがってみたら、
クジラの肉じゃがを食べさせてくれた。

なるほど、これはうまい!!

その上、お土産もいただいて恐縮至極。

長崎に来た人を絶対満足させてやろうという
心意気がひしひしと伝わってきた。

「海彦」のご主人こそ、
最強の長崎観光大使だな。