中島川近辺の散策にも疲れ、
ひと休みする場所を探していて目に留まったのが、
このお店。


「南蛮茶屋」。

新旧が入り混じったような街の中で、
昔ながらの喫茶店の雰囲気を、
「頑なに」というような暑苦しさじゃなく、
「飄々と」やってのけているようなところが気に入った。

店に入ると、木造家屋をそのまま生かして、
手前にカウンター、奥にテーブル席がある。

客はオレひとり。

マスターはミッキー・カーチスのような風貌で、
ぶっきら棒といった方がいいようなさり気なさで迎えてくれる。

それでも、カウンターに陣取って、
珈琲が南蛮茶と呼ばれていた頃の味と香りを再現した
「ストロング」を注文。

BGMは古いジャズ。

店内を見渡してみると、柱時計が3つあり、
どれも正確に時を刻んでいる。

通りに面して小さなショーウィンドーがあり、
そこにはアンティークの腕時計が並んでいる。

ここ、昔は時計屋?

そんなことを思っているところに、
「ストロング」がカウンターに置かれる。


苦すぎず、コクがあって、どっしりとした味わい。

この店によく似合う味だ。

物静かな感じのマスターに、
勇気を出して話を切り出してみた。

「ここ、時計屋さんだったんですか?」

マスターは苦笑しながら、
もともと、アンティークも扱っていたとのこと。

話しはじめるとマスターの表情は非常に優しげで、
口数も決して少ないほうではない。

初めて訪れた長崎市について、
不思議に思ったことをうかがい、
つらつらと話しをしていたら、
マスターは北九州市出身だとのこと。

で、話が北部九州の大雨被害に及ぶと、
このあたりでも以前、土石流の被害があり、
300人ほど被害者が出たことを教わった。

いい喫茶店に出合い、
珈琲とともに過ごす心地よさの中で、
また新たな「悲しみ」を知り、
長崎市に対する気持ちや印象は、
深くなっていく一方だ。