[延樂」は宇奈月温泉でも老舗の宿。


ロビーに設けられたギャラリーには、
綺羅星のごとき名品や名前が並ぶ。


これは古九谷?


こちらは古伊万里の赤絵?

ひとつひとつあげつらうのが大変なほど、
美しいものがたくさん展示されている。

最盛期はどれほど繁盛したのか……。


だからといって、高いものばかりじゃなく、
部屋によういされていたカタクリの花のように、
この地ならではの自然のもてなしも見事なもの。

現在のご主人は以前、
「セレネ美術館」の館長をしていたそうで、
代替わりして着々と改装を進行中。

美術にたけた人ならではのセンスで、
「延樂」は確実に変わっているようだ。


たとえば温泉スペースに描かれた鏝絵。

ビル建築の壁は殺風景になりがちだから、
漆喰や鏝絵を用いて表情を出しているとのこと。

自然なマテリアルを活用して、
気持ちのいい空気感を生み出しているのだ。


部屋に用意されていたマッチ。

たどたどしいような筆致のトロッコ列車は、
誰の手によるものかわからないけれど、
ちょっとモダンでしゃれた気風に満ちていて、
持って帰らなきゃもったいないと思わされるほど。

本当になんと心地よい空間なんだか。