「おとぎの宿 米屋」のいいところはいろいろあるんだけど、
オレは何よりもまず第一に夕食を挙げたい。

「おとぎ会席」と名付けられた夕食は、
毎月ひとつのおとぎ話をテーマに取り上げ、
ストーリー展開にそって献立が作られている。

そう聞くと、子供っぽい感じがするが、
すごくよく考えられていて、腕もいいから、
童心にかえって食事を楽しむことができるのだ。

ちなみに前回は「かぐや姫」。
http://ameblo.jp/takeching/entry-10998575570.html 

そして今回は12月にちなんで「かさこ地蔵」。
(「かさこ」はこちらの方言で一般的には「かさ地蔵」)


リーフレットにあらすじと献立、
使用されている食材がすべて列記されている。

「おとぎ会席・かさこ地蔵」は、
給仕の女の子のお話から始まった。 

「ある村に貧しいおじいさんとおばあさんがおりました。
雪の降る大晦日、食料を買いに町へ古着を売りに行きました」

一話 ひっそり暮らすふたり(前菜)

つましい暮らしを野菜中心の食材で表現。


皿の左上にはお地蔵さんをかたどった野菜が!

玄米クレープ、つくね芋、鰊山椒漬、ます子、
ぜんまい白和え、米粉コロッケなどなど、
目にも舌にもうれしいものばかり。



ここで、地酒の利き酒セットをいただく。
甘口から辛口まで揃っていて、
料理に合わせて飲み分けられるのがうれしい。


二話 雪の道(吸い物)

美しい冬景色の椀。


蓋を取ると、雪道を思わせる豆乳のスープ。
豚三枚肉が入っててだしは鶏がら。
椀ものの香りとは違っていたけど、
コクがあってさっぱりしてて体があったまる。


三話 賑やかな町(造り)

お造りを町並みのように盛り付けて、
商店が立ち並ぶ歳末の通りを表現。

鮪、金目鯛、牡丹海老、たらこゼリー寄せ、
ふぐ煮凝りなど、いずれ劣らぬ逸品ぞろい。


四話 すげの笠と交換(焼物)

ストーリーを聞き逃したけど、笠が肉で、
昆布の舟に入った牡蠣と野菜と交換したってこと?

テーブルに設けられた囲炉裏にたっぷりの炭が入り、
それだけで部屋はぬくぬく。
そこに溶岩プレートを置いて福島牛を焼き、
牡蠣と野菜と味噌が入った昆布の舟は直焼き。

目の前で火が通っていく様は、
徐々に色や形が変わっていき、香りがたち、
エンターテインメント性が高くて楽しい。

肉はもとより、牡蠣の土手鍋のミニミニ版も秀逸。

酒が進む。


五話 お地蔵様寒かろう……(煮物)

これがどうストーリーと結び付くのか……。


蓋を取るとおいしそうな鰆と蕪の蒸しもの。


それに蓮根チップをのせると、笠地蔵!!

おじいさんが売れ残った笠を
お地蔵さんにかぶせて差し上げるシーンだ。


六話 温かな恩返し(主菜)

大晦日の朝、おじいさんの家の前には
お地蔵さんからの恩返しの品々が!

地鶏を包んだそば粉団子と海老を包んだ米粉団子、
ボリューム感ある、田舎風の鍋が心も温かくしてくれる。


七話 幸せなお正月(酢の物)

千枚漬けや大根、人参で、
氷頭なますや小鯛を包んだ盛り付けが美しく、
おじいさんの家の賑やかなお正月を感じさせる。

使用されているのは柿酢。
はじめていただいたけど、いいお味。


八話 楽しいひと時(食事)

ズワイガニご飯のほか、タラ汁と香の物。
こんな贅沢なごはんで締めくくるんだから、
そりゃあ「楽しいひと時」でございます。


九話 めでたし、めでたし(デザート)

「かさこ地蔵」のお話も無事大団円。
はちみつの酒でつくったジュレがキラキラ輝き、
ハート形のイチゴをはじめとしたフルーツが、
ありきたりな表現だけど、宝石箱みたい。
プリンは棒茶を使ったオトナの味わい。


毎月毎月、献立を考えるのは大変だと思うけど、
その分、楽しさはなまなかじゃない。

ひとりで食っても楽しいんだから、
複数だとどんだけ~~。(失礼)

まことにおいしゅうございました。