すっかり冷え切った体を温めるのは、

うまいメシと酒に限る。


で、同行したカメラマンYさんが、

「高山にいい店がある」と誘ってくれた。


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店の名は「船さき」。


入り口の様子は京都の「善哉」を思い出させる。

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路地の脇には根雪が残ってて、

寒いんだけど、雪国らしい風情に心が躍る。

引き戸をあけて入って店は、

白木のカウンターに8席あるかないか。


優しげなご主人と、気立てのいい女将さん、

お二人の柔らかいお物腰に心地よさを感じる。


カウンターにはすでにお客さんが二組。

それぞれいい感じに聞こし召している。


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品書きはカウンターに置かれた和紙一枚。


値段がどこにも書かれていないのが、

ちょっと不安をあおる。

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お通しは「ねずし」。


この地方に伝わるなれ寿司で、

ほんのりとした甘さと酸味が楽しめる。


注文に悩んでいると、

ご主人がおすすめを教えてくれた。


この間がいい。


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まずは自慢のごま豆腐。


煎ったごまを使用してあるので、

色は濃く、香ばしさもたっぷり。


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続いてはしりの筍。


塩味と味噌味は、ちょっとしたえぐみがあり、

早春らしい香りを満喫。


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さらに、ふきのとう。


これまた、塩味、しょうゆ味、味噌味があり、

ひりっとくるような苦味に春の余韻。


器がまた素晴しくて、酒が進む!


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本日おすすめの魚は「げんげ」。


氷見の方で揚がる深海魚だそうだ。

高山は氷見をはじめとした日本海の港から遠くなく、

実は海の幸も豊富なところ。


で、「げんげ」という名前は方言で、

「下の下」という意味があるらしい。


もともとこの魚は下魚として扱われていて、

料理屋で出すものではなかったらしい。

それが、最近はかえって珍しがられて、

重宝されているのだとか。


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「げんげ」の天ぷら。


深海魚に共通する、やわらかい身と

かりっとした衣の取り合わせがよく、

淡白な味わいも見事なもの。


これが下魚なんて……。

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これは、何かの麹漬けを焼いたもの。


ぶりだったっけ?

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で、厚く切ったからすみ!


こちらのご主人は熊本のご出身で、

地元のからすみ名人から仕入れたもの。


魚卵がほどけていくような、

ぎりぎりレアな感じのからすみ、絶品!


ちなみに女将さんは京都のご出身。


そのふたりがなぜ高山に店を構えたのか、

聞いていないけれど、

高山という街によく合っているのは確か。

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しめのご飯は、しょうがの炊き込み。

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味噌汁も香り高くて一味違う。


高山近辺では今も、麹から丁寧に作る味噌を

量り売りしている店が残っている。

味噌の味からして違うのだ。


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漬物は、赤カブ。


こちらの赤カブ漬は、山形の甘酢漬と違い、

しっかり塩で漬け込んで、水分を切ったもの。

滋味あふれる感じだ。

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最後に抹茶アイスとあんこ。


女将さん曰く、こちらの手作りのあんには、

ハーゲンダッツが一番合うのだとか。


なるほど。



写真は自分らで注文したものだけで、

実は、残りわずかな「すじこ粕漬け」などを出してくれ、

隣のお客さんが注文されたもののお相伴に預かったりして、

「船さき」の味をすみずみまで堪能させていただいた。


で、お会計が心配だったけど、全然!

京都の同じ様子の店よりずっと安価ですんだ。



店がいい、人がいい、味がいい。


こんな店があるんだから、

高山はいいところに違いない。