京都の女性を描いた川端康成の『古都』では、
北山杉の産地が舞台になっていた。
その地に、見事な借景が楽しめる寺がある。
いわゆる観光寺ではない、檀家寺なので、
通常ふらりと立ち寄ることはできないのだけれど、
縁あって拝見することができた。
これは何百年もの樹齢を数える北山杉。
独特の剪定方法でまっすぐつくるらしい。
これが今も現役で木材をつくっているのだから、
感心するほかない。
これがその借景。
縁側に行くと、庭はすぐ崖になっていて、
向こう側に北山杉の山が広がっている。
まさに猫の額ほどの庭には、
石の仏像が鎮座ましましていて、
美しい空間を描き出している。
お寺の名は、宗蓮寺。
さまざまな野の花や桜、紅葉があり、
季節ごとに美しい姿を見せ、
最近は写真集や京都本で紹介されることも
多くなっているらしい。
新緑が萌える季節ならではの、
あらゆる緑の組み合わせは、
観ているだけで清々しさを覚える。
桜や紅葉もいいけれど、
この季節の京都も値打ちがある。