「鹿覗きの湯 旬月懐石 鶴屋」の夕食は、
基本は部屋食。
食事処でいただくのもいいけど、
部屋食にはプライベートな良さがある。
料理は「旬月懐石」とつくだけあって、
鄙にはまれな(失礼)、見事なものだった。
鹿覗きの湯って言うぐらいだから、
新鮮な鹿が手に入るんだな。
(鹿刺しってなかなか口にできないから)
ネットリとした口当たりは、馬刺しならでは!
雷鳥の燻製の上州風ってどんなんだか、
仲居さんにたずねてみたら、
「上州風雷鳥(じょうしゅうふうらいどり)」という
キジみたいな鳥の燻製だって。
区切り方、間違ってた。
その鳥、サッパリとしたいい味だった。
さて、通常の夕食は食前酒とともにスタート。
見た目にきれいなだけじゃなく、
味わいも繊細で、いい意味で驚かされた。
日本海から運ばれてくる魚は、
これまた思いのほかの美味さ。
以前、小布施でも感じたんだけど、
山深い所に意外とうまい魚があって、
最近は海からの距離で、
魚の良し悪しははかれないのかもしれない。
白子豆腐がまったりとした絶品!
焼いたものをほうの葉にのせたもので、
ソースは赤ワインを使用した洋風感覚。
新春ではあったけれど、
まさか春の味覚がもういただけるなんて。
おかげで、春が来たような気分になった。
これは冒険のしすぎじゃなかろうかと
いぶかりながら食べてみたら、
意外や意外、いいバランス。
酒の肴になる茶碗蒸しといった感じ。
強肴は合鴨鍋。
身の色の美しさといったら。
芹をたっぷり加えていただくと、口は極楽。
プロセスチーズを千枚漬けで巻いたもの。
これまた冒険なんだけど、やはりなじんでた。
ご飯は鯛飯。
浅い器に盛り付けてるところなんか、
かなりセンスがいい。
こちらの料理長、相当な腕と見た。
デザートはフルーツあんみつ。
実はオレ、あんみつ好きじゃないから、
これだけは、ちょっと残念。
しかし、全体的に緩急自在で、
旅館料理としては珍しい面白さを楽しんだ。
で、仲居さんが、
夜食のおにぎりを部屋に運んでおくとのこと。
これまたうれしいサービスだし、
おにぎり自体も美味かったしで、
大満足で床についた。
翌朝の食事は塗りの器で。
これは宿坊時代の名残を今に伝えるもの。
こちらの食事は、目新しさと
古きよきものが渾然一体となっていて、
心から楽しめるものだった。
群馬の奥の四万温泉で、
まさかこんなに美味い思いをするとは、
真に失礼ながら、全然期待してなかった。
正月休みが長すぎて、
勘が鈍ってしまってたのかな。