ここんとこ観てきた舞台の感想などを。

「KEAN」
(日生劇場)

宝塚歌劇団・専科の轟悠が主演し、星組若手と競演したミュージカルは、
実在した天才シェークスピア役者=エドモンド・キーンのお話。

ブロードウェイものと聞いてたけど、まもなく打ち切りになった作品らしく、
そんな曰くつきの作品なんて……、というのは杞憂に終わった。

「主演者が主演者たる存在感を見せた」っていうのこの舞台のポイント。

主演者が必死だから、星組若手も必死にならざるを得ず、
誰かが多少ぐらついたところで、芯がしっかりしてるから全然問題なし。

全体に爽快感みたいなものが感じられて、いいもの観たって気分になった。

最近、そういう風な主演者が少ないから余計にね。


宝塚歌劇団月組公演(東京宝塚劇場)
スピリチュアルシンフォニー「MAHOROBA」

ミュージカル「マジシャンの憂鬱」


初日前の午前中に行われた舞台稽古を見学。

「MAHOROBA」は和風ショーってスタイルのもので、
かなり評判もよく、期待してたんだけど、その分大ハズレ。

「マジシャンの憂鬱」のほう評判悪かったのに、
これがオレ的には大ヒット!

良かった理由を一言でいうと「阿吽の呼吸」。

舞台稽古だからか、主演クラスにとちりが多く、
台詞や歌詞が出てこない場面もあったんだけど、
その際の回りの演者の対応がスムーズだから、
みんなの呼吸が合ってるのすごいよくわかる。

それがすべてのシーンに感じられるから、気持ちいいったらありゃしない。
こんなに気持ちよく舞台が流れるのって、宝塚ではどの作品以来だろ……。

組替え異動やトップ交代で、若返りや雰囲気一新ってのもいいんだけど、
時間をかけてこそ出来上がる「呼吸」ってのが、
いかに大切なのかってのがよくわかった。

やっぱ本番観なきゃいけないかも。


「PIAF」
(ベニサン・ピット)

映画でも取り上げられてる、シャンソン歌手、エディット・ピアフのお話。
ピアフを歌い演じるのは、昭和時代の宝塚ベルばら四天王の一人、安奈淳。
(結局3本とも宝塚関係の舞台でした)

しかし、ピアフってのは、街娼から世紀にシャンソン歌手になるも、
つねに愛に飢え、シャブ中になり、死んでいくという汚れ役。

果たして還暦を迎えたオスカル様の汚れ役は、
下卑たところをあまり感じさせず、
類稀なる歌唱力でグイグイ盛り上げ、役を全う。

ピアフの代名詞のような曲に「愛の讃歌」がある。

日本では越路吹雪バージョンが有名だけど、
あれは岩谷時子が作詞(訳詞じゃない)したもので、
原曲とは似て非なるものと聞いていた。
本当は、恋人を亡くしたピアフの心情を歌った曲だとか。

その「愛の讃歌」が芝居の最後を締めくくるんだけど、
これがもう絶品と言わずしてなんと言おうって感じ。

フェイクやアドリブは一切なく、淡々と切々と歌う「愛の讃歌」は、
ピアフそのものとは遠いかもしれないけど、
知らず知らずのうちに瞼が熱くなるものだった。

一時期、膠原病で再起が危ぶまれたのに、
そんなことを微塵も感じさせないのにも吃驚。

掛け値なしで素晴しい!!

全体的に不満を覚える部分が少なくなかったものの、
ラストの「愛の讃歌」ですべて帳消し。

ほんま、ええもん聴かしてもらいましたわ。

で、ミュージカルにおける「歌の力」ってのに、
改めて感じ入った次第です。

しばらくはオレ、
「愛の讃歌」をカラオケで歌うの、やめとこ……。