すると彼は、「暇つぶしにいらっしゃったという訳ですか、なら大正解です。この店には色々な面白い本がありますから。」と、言う。私は申し訳ないようなバツの悪い様な気分になり、また、「すいません」と謝る。彼はそんな私の言葉を聞いているのかいないのか、「この本なんかいかがでしょう。」といいながら、近くの本棚にあった分厚い本を取った。「試しに、奥の方の椅子に座って読んでみて下さい。」と言って、私にその本を押し付け、私を本ごと椅子に押し込む。
そして私が何かを言う暇も無いうちにお茶を取り出し、「どうぞ」と言って、その場に立って、こちらをじっと見つめる。私は罠に嵌められたような気持ちで「ありがとうございます」と社交辞令を言い、渋々その本の重い表紙を開き、その中の世界に身を投じる。