ああ、気が付けばもうこんな歳になって
小生、只今六十五才。定年退職を迎え、誰に何を言われる事もなく、気ままな生活を送っている。これまで精神的には、まだまだ若い、まだまだ大丈夫と自分自身に言い聞かせて生きてきた。ところが昨今の報道と言えば些か食傷気味ではあるが、コロナ関連の話題に終始。”ワクチン接種は高齢者(六十五歳以上)高齢者に優先的にワクチンを”と連呼するではないか。六十五歳になった小生の脳裏を”年寄・老人・爺さん”の単語が何度も何度もグルグル、グルグル駆け巡る。知らず知らず年齢的に、高齢者の仲間入りをしていたのだ。若いころはひたすら一心不乱に仕事に没頭し、立ち止まって、振り返る余裕などなかった。以前、中年のおじさんと呼ばれる事にも抵抗感が有ったが、この度は些かダメージが大きい。孫がいなくてもお爺さん、年寄という立ち位置にいる。振り返るとそこには何と長い過ぎ去りし日々が連綿と続いているではないか。なんと回りくどい紆余曲折の人生であったか・・・・。はて、この先何年生きられるだろうか。おたおたしているとその内後期高齢者の領域に入ってしまう。急に焦燥感に駆られる。頭を抱えうずくまる。これからどう生きていけばいいのか。今何をなすべきか。考えても考えてもその答えは見つからない。ふと、視線を窓にやった。締め切ったカーテンの隙間から眩いばかりの光が漏れている。”今日は雨ではなかったのか。”そっとカーテンを開けると部屋一面に明かりが差し込んだ。”わ、眩しい”目をしばたたきながら窓を開け大きく深呼吸。そして少し考え込む様なしぐさの後、何か自分に言い聞かせるように”少し外に出てみるか”そう呟くと、おもむろに玄関に行き履きなれたスリッパをひっかけ外に出た。日の光がやけに眩しく感じる。行くあてもなく暫く歩いていると、近くの公園が見えてきた。 つづく