タイ旅行記その1 | 幸福論~全ての才能はオルタナティヴへ向かう~

幸福論~全ての才能はオルタナティヴへ向かう~

電車好き 本好き お酒好きな愉快な音楽家の楽しい反骨精神

2012年2月1日、僕はバンコクのスワンナブーム空港に降り立った。
台北で乗り継いで丸一日かけてのフライト。直行便はお金が足りなくて買えなかった。まるで大学生みたいな、青臭くて行き当たりばったりな旅が、幕を開けたのだった。

1日目 

空港から外に出る事無く電車に乗った。最初にバンコクの土を踏んだのはホテルの最寄り駅、マッカサン。ずっとクーラーの効いた所に居たもんだから全く気付かなかった、タイの空気を始めて直に感じた。
むせ返るような熱気と匂い、街路樹の根が所々敷石を持ち上げてガタガタの歩道、信号なんて飾りだよとでも言わんばかりに自動車の隙間をひょいひょいと横断するバンコクっ子。通りでは至る所で屋台を広げて酒を飲んだり飯を食べたりしている。
まずはホテルを目指そうと僕が地図を広げようとするやいなや声をかけられた。どうやら道を教えてくれようとしているらしいがホテルの名前を伝えてもピンと来ないらしい。航空券に付いてた安ホテルだからな。。。「バイヨークスカイ」という名のちょっと有名なホテルがある。それではないのかといわれても僕らが聞いているホテルの名は「バイヨークブティック」。でも名前が似てるからきっと近くに有るに違いない、と見切りをつけて歩き出した。
熱病にうかされたように歩き続けた10日間の最初の一歩だった。

幸福論~全ての才能はオルタナティヴへ向かう~
●バンコクの道路事情は過酷の一言。日本の免許や運転経験なんて微塵も役に立ちそうにない。ひたすら鳴り続けるクラクション、信号無視や急停車、逆走なんて当たり前。でもこの旅の間交通事故は一度も見なかった。

幸福論~全ての才能はオルタナティヴへ向かう~
●通りを歩く人人人。ひたすら続く露店、あちこちから流れてくるナンプラーの香り。目が合うと「コンニチハー」と人懐っこく声をかけてくる。日本人だとどこで判るんだろうか。


とにかくどんどん歩いた。排気ガスを吸い込みながら、排水溝から登ってくる汚水の匂いに咽せながら。途中売春宿の立ち並ぶ通りがあった。薄暗い店内をちらと覗くと、生足むき出した沢山の女の子がただ座って客の指名を待ちわびていた。出口にゲートがあって大柄な若者が3人程たむろしていて、ちょっと怖かったけど「Go through OK?」と聞くと笑顔で通してくれた。そのゲートをくぐるとラーチャプラロップ通りに出た。
ラーチャプラロップはどこまでも露店が建ち並び、絶えず人が行き交う、ものすごいエネルギーに満ちた通りだ。その通りから随分奥まった袋小路に、目指すホテルは有った。

チェックインを済ませて荷物を下ろすと、タイの熱気にやられて汗だくだった。でもそんなことよりおなかがすいていたので僕らは早速街へ繰り出した。フロントに居るニューハーフの男の子にもう一度キーを預けてラーチャプラロップを渡る。ここへ来る際道に迷ってうろうろしたあたりに面白そうな路が有ったんだ。
ごみごみしたバンコク市内でもひときわ散らかったその通りで適当に食べ物を買った。ガイヤーン(やきとり)と葉っぱにくるまれた魚の煮物。それと小さなビニール袋に入った米、それで30バーツ(約90円)程だった。路面のお店でビールを見つけたので、手伝いの少年に「タオライ?」と訪ねると「サーンシップ(30)」と返ってきた。ビールが1缶90円。。。俺はアル中にならずに済むだろうか。

買ってきた物を店の隣のテーブルに並べて、椅子に座る。箸なんて要らない!手で掴んで夢中で食べた。魚の煮物が辛くて参ったけど、始めて食べるタイ露店の味は空腹と賑やかな街の雰囲気とでとびきりのごちそうになった。2本目のビアチャンを開けながら回りを眺めると、向こう側におじさんが2人座っている。
もう随分酔っている様子で、大きく腕を動かしながら会話を弾ませている。あんまり大きく腕を振るもんだからテーブルのビール瓶にぶつけてひっくり返したおじさん、あわてて倒れた瓶を拾ったり起こしたりしてると僕と目が合った。おじさんはバツが悪いような照れたようななんとも言えない笑みをつくって、タイ語で何か言った。その意味は解らなかったけど、僕も笑って答えた。えへへ。

犬が僕らの回りをうろうろしていた。暑い夜だった。