劇団ノーティーボーイズ

SIMPLY BECAUSE IMITATION~偽物だからこそ~』

 

訳あって小劇場から足が遠のいていたのだが、今作を観て改めて舞台の、小劇場の魅力を再認識する結果となった。

本来ならば鑑賞直後に口コミ宣伝の意味も含めて感想をしたためようと思っていたのだが諸々時間が取れずに間が空いてしまった事が悔やまれる。

とにかく、良い舞台だったのだ。100本観ても当たりが無いと言われる小劇場界に於いて、約一年振りとなる観劇でこの様な作品に出会えたことはこの上ない喜びだった。

 

ストーリーは二つの家庭を舞台にして、カットバック的に進行する。

主要人物である一組の男女がおり、男は女に対して結婚を申し込む決意する。

万事円満に事が進むだろうと思っていた男と男側の親族だったが、女からはまさかの断りの返事が。当然ながら男は理由を聞きたがる。しかし女は頑なに理由を言おうとしない。

勿論、女には簡単に口外する事が出来ない或る事情があった。

女は実は元男だった。男として産まれたにも関わらず性同一性障害であり、人生の殆どの時間を女になる為に費やしてきた。己の身体と心の差異に向き合い、性に合うとは思えない水商売で蓄えを作った。やがて心も身体も戸籍も女になる。しかし、どう心血を注いでも変えられないのは男としてこの世に生を受けたという事実。その事実を女はどうしても打ち明ける事が出来ていなかった。

女側の親族も何とか真相を伝えぬままに男に結婚を諦めて貰おうと奔走する(そのドタバタが客席に笑いを生み出していた)。紆余曲折の果てに一時は事実を隠したまま結婚すれば良いという事で話が纏まるが、疑いを持った男側親族が興信所に女の素性調査を依頼し、女の素性は、男女当人たちの予期せぬ所で露見する羽目となる。

自分が愛し結婚を決意した相手は元男だった。その事実を数年間隠されていた。当たり前ながら男は消沈する。しかし、消沈する理由すら、男の頭では整理がつかないでいる。

懊悩煩悶の末に男の出した答えは「それでも良い、やはり自分は彼女を愛している」というモノだった。

 

筆者の駄文で作品の魅力が伝わるとは到底思えないが、笑いあり涙あり(もうこう言うしか無い!)の温かく棘がある作品だった。

何よりも、総勢十名の演者たちが抜かりなく素晴らしかった。

溢れんばかりのエネルギーをその身に搭載しつつ、緊張と緩和を使いこなして客席を笑いの渦へと巻きこんでいた。所々堅さの目立つ部分もなくはなかったが、それすらも緊迫した登場人物の心理と重なって見えた。

 

作品のテイストはコメディというよりは新喜劇に近い。

リアリズムを度外視し、徹底的に間とエネルギーで笑いを取って行く。半端に演じては客席が冷め切って行くであろう戦略に臆することなく向き合いながら稽古を重ねたのだろうと感じた。

 

至極個人的な感想にはなるが、脚本に関してはもっと整理出来ると感じた。

登場人物のキャラクター(個性)造形をもっと深めれば、人物たちの言葉に更なる説得力が加わった筈だ。登場人物それぞれにある種の特殊能力を与え、男女が迎える数々のピンチに英知を集結させるといった展開があっても良かった。

個性豊かな登場人物たちだっただけに、そこはやや悔やまれる。

 

何はともあれ、素晴らしかった。

人間は、人生はあながち捨てたもんじゃない。

様々なトラウマや境遇を打開していける力が人間には備わっている。

そんな人間達が織り成す世界は、やはり魅力と生き続ける価値がある。

あの登場人物たちは、きっと今も世界のどこかで生きているだろう。

 

売れない脚本家は、筆舌に尽くし難い刺激を頂いた。

書こう。と思った。

自分も、誰かを救える作品を書きたい。

 

舞台関係者、紹介してくれた友人に、心から感謝したい。