有名なフレーズでここだけ独り歩きしているきらいもある言葉だ。

 

ご存知の方も多かろうからいまさらな感じはするし、

少々ペダントリも出てしまっているかもしれない。

また、ブログにものしている方もまた多いと思うので、

さっくりと。

 

これは井伏鱒二の「厄除け詩集」の中の一作の最後の一行。

 

コノサカヅキヲ受ケテクレ

ドウゾナミナミツガシテオクレ

ハナニアラシノタトヘモアルゾ

「サヨナラ」ダケガ人生ダ

 

から引かれている。

この詩にはタイトルがないが、

もともと唐の詩人于武陵の五言絶句「勧酒」を訳したもの。

 

原文は

勧君金屈卮,

満酌不須辞。

花発多風雨,

人生足別離。

 

この最後の1行がたびたび引用されたり、タイトルになったりしているが、

もしかしてそういった事情を全く知らずに使っている人もいるのかもしれない。

もちろんそれは単なる「剽窃」になる。

こちとらこうした引用にさえ細心の注意を払っているが、

もう、何でもありの人たちも多くて困る。

それは実は40代以降、ネット上・SNS上でとにかく自慢したいおじさんたちだ。

 

さて、

もうひとつこの詩集でお気に入りなのが、

無聊の正月を詠んだもので、

 

ウチヲデテミリャアテドモナイガ 

正月キブンガドコニモミエタ 

トコロガ会ヒタイヒトモナク 

アサガヤアタリデ大ザケノンダ

 

というもの。

 

同じく8世紀の唐の詩人、高適の五言絶句「田家春望」を訳したもの。

原詩はこう。

 

出門何所見 

春色満平蕪 

可歎無知己 

高陽一酒徒。

 

「厄除け詩集」は講談社文芸文庫に入っている。

ネット上ではなく、きちんとページを繰って読んでみてほしい。

 

http://bungei-bunko.kodansha.co.jp/

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784061962675